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外国人採用の注意点とは?募集時・面接時・採用後の3ステップに分けて解説

2024.08.22

自社の人手不足を解消するために、外国人の採用を検討している採用担当の方は多いのではないでしょうか。

しかし、外国人の採用は日本人を採用する際とは異なるポイントが多いので、それらを事前に把握しておく必要があります。知らずに採用手続きを進めていると、必要な条件を満たしておらず「採用したものの働いてもらうことができない……」ということになりかねません。

今回の記事では、外国人採用の注意点を、募集時・面接時・採用後の3ステップに分けて解説します。併せて、外国人採用のメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

【ステップ1】募集時における外国人採用の注意点

外国人を採用する際は、ハローワークや専用の求人サイトを利用して募集するのが一般的です。この段階では、以下のような点に注意しましょう。

日本人と同じ労働条件で募集する

外国人に向けて求人を出す場合、日本人と同等の労働条件で募集しなければなりません。「採用対象が外国人である」という理由だけで賃金や待遇などに差をつけると、労働基準法違反に該当するおそれがあります

労働基準法第三条「均等待遇」では、以下のように規定されています

使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

引用:e-Gov法令検索「労働基準法第三条」

 

例えば、外国人を日本人より安い賃金で雇ったり、有給休暇付与日数を少なくしたりすると、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

外国人も日本人と同じく、労働基準法や最低賃金法、同一労働同一賃金などの法令が適用されるため、募集する場合は必ず押さえておきましょう。

ただし、職業上必要な能力に沿って賃金に差を付けることや、在留資格の規定に沿って日本人よりも労働時間を短くすることは、均等待遇の原則に反しないので問題ありません

求人広告で差別的な内容を掲載しない

外国人を採用する際には、求人広告の内容にも配慮する必要があります。

例えば、国籍や人種を限定するような表記は差別に繋がってしまうため、掲載を避けましょう。求人広告の作成者にそのような意図がなかったとしても、差別的な内容を含んでいた時点でトラブルに繋がる可能性が生じてしまいます

また、使用するだけで差別と認識される可能性のある単語もあるので、あらかじめ注意しましょう。NG表記・OK表記の例を下表にまとめましたので、こちらもご確認ください。

NG表記

国籍不問

すべての広告は国籍を問わないことが基本であるため、あえて表記する必要がない

外国人歓迎

国籍による優遇は認められない

○○国籍の方限定

国籍による制限は認められない

外人・原住民・後進国

単語自体が差別的な内容である
(外国人・現地人・発展途上国などはOK)

OK表記

留学生歓迎

属性に関する表記である(不可や限定の表記はNG)

○○国籍の方が
数多く働いています

自社の現状を示すだけの表記である

日本語で日常会話レベルの意思疎通ができる方

能力に関する表記である

△△免許を持っている方

資格の有無に関する表記である。

兵役を確認する

国によっては兵役が義務付けられているため、あらかじめ兵役の有無や状況について確認することも大切です。

例えば、韓国籍の男性には2年程度の兵役義務があり、多くの方は大学在籍中に兵役を終えます。その一方で、兵役義務が課せられている年齢ギリギリまで兵役に行かない方もいるため、事前の確認が必要です。

採用した方が兵役を終えていない場合、入社後に長期間休職しなければならないので、トラブルに発展する可能性もあります。

在留資格で就労可否を確認する

在留資格とは、外国人が日本で行える活動や在留期間などを定めたもので、上陸審査を通過した外国人に付与される資格です。その証明書となる「在留カード」には、以下のような情報が掲載されています。

  • ・氏名
  • ・生年月日
  • ・性別
  • ・国籍
  • ・住所
  • ・在留期間
  • ・就労制限の有無 など
  •  

在留資格(在留カード)を取得していない方、在留資格で定められた就労可能な業務範囲と実際に任せたい業務内容が一致しない方を働かせた場合は、不法就労となってしまいます。

不法就労が発覚した場合、実際に働いた外国人はもちろん、採用した企業にもペナルティが科されます

例えば、外国人に不法就労をさせた人や不法就労をあっせんした人などは、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または両方が科されることになります。

参考:e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法第七十三条の二」

 

在留カードの写しなどでは内容を改ざんされる可能性があるため、採用する前には、必ず実際の在留カードを確認するようにしましょう

 

在留資格や不法就労助長罪に関しては、以下の記事も参考にしてください。

就労ビザとは?種類や申請方法と雇用する側が覚えておくべき注意点

不法就労助長罪とは?罰則や該当するケース、企業が知っておきたいポイントを解説

自社に合った人材紹介会社を選ぶ

外国人を募集するにあたり、人材紹介会社から紹介してもらう方法があります。企業側の希望条件にマッチする人材を探してくれるため、採用活動の効率化に繋がるでしょう。

しかし、人材紹介会社によって得意分野やサービス内容が異なるため、自社との相性が重要になります。また、労働関連法令を守っていない業者もいるため、ホームページに掲載されている紹介実績や、レビューサイト等での評価も参考にしながら、人材紹介会社自体の信頼性を確かめることも大切です。

【ステップ2】面接時における外国人採用の注意点

採用面接まで進んだ場合、外国人と直接コミュニケーションをとることになります。その際は、以下のような点に注意しましょう。

日本語能力を対面で確認する

外国人の日本語能力は「日本語能力試験(JLPT)」や「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の認定レベルで測ることができます。

例えば、日本語能力試験の認定レベルは以下の5段階に分けられ、数字が小さいほど難度が高くなります

 

  • ・N1:自然なスピードでのニュースや会話、新聞の評論などやや複雑な内容を理解できる
  • ・N2:自然に近いスピードでのニュースや会話、簡単な評論などの内容を理解できる
  • ・N3:やや自然に近いスピードでの会話を聞いたり、日常的な内容に関する文章を読んだりして内容をほぼ理解できる
  • ・N4:ややゆっくりとしたスピードの会話を聞いたり、基本的な語彙・漢字が使われた文章を読んだりして内容をほぼ理解できる
  • ・N5:日常生活によくある場面でゆっくりとしたスピードの短い会話や、基本的な漢字で書かれた典型的な文章であれば理解できる

 

ただし、認定レベルはあくまで目安です。同じ認定レベルでも、日本語をネイティブレベルで話せる方もいれば、会話が難しい方もいるでしょう。

このように、実際にコミュニケーションがとれるかどうかは、対面で話さないとわからないため、面接でのやり取りを通じて日本語能力を確認することが大切です。

 

日本語能力試験については、以下の記事もご覧ください。

語学力の検定「日本語能力試験(JLPT)」を受験する目的とは?レベルや注意点も紹介

国民性の違いを理解する

日本人は真面目な国民性で知られており、大半の方は面接が決まったらきちんと面接を受けに来るでしょう。一方で外国人は、国民性の違いから面接を一方的にキャンセルする方が少なくありません

そのため、キャンセルされる可能性が高いことを想定して、面接候補者を多めに用意したり、効率化のために集団面接でまとめて選考したりするなど、事前に対策を練っておきましょう。

また、面接前に応募者へリマインドを行うなど、企業側から面接を受けるように促すことも大切です。

応募書類の内容を口頭でも確認する

国によって、大学の在籍年数や経歴の書き方が異なるケースがあります大学卒業後のインターンシップ期間や試用期間未満の退職など、履歴書や職務経歴書に書かれていないキャリアがある可能性も考えられるため、記載内容を口頭でも一つずつ確認しましょう。

特に実務経験は採用後の教育スケジュールや配属先にもかかわるため、内容に虚偽がないかはもちろん、応募者自身の認識のズレも確かめる必要があります。

事実とは異なる内容が書かれている場合、在留資格の取得にも影響しかねません

外国人向けの質問を用意する

外国人の文化や価値観は日本人と大きく異なるため、それを踏まえた質問を用意しておくことも大切です。

以下に、外国人向けのおもな質問テーマと質問例をまとめているので、ぜひ参考にしてください。

質問テーマ

質問例

来日した理由

  • どのような目的で来日しましたか?
  • 何故、日本に留学したのですか?
  • 来日のきっかけを教えてください。

日本に対する印象

  • 日本にどのようなイメージを抱いていますか?
  • 日本の良い点、悪い点を教えてください。
  • 来日して困ったことは何ですか?

日本語の習得レベル

  • 普段の生活でどのくらい日本語を話しますか?
  • 日本語を学ぶ際に苦労したことを教えてください。

日本で働きたい理由

  • 何故、日本企業を選んだのですか?
  • 当社で成し遂げたいことはありますか?

キャリアプラン

  • 今後も日本を拠点にして活動したいと考えていますか?
  • ○年後のキャリアプランを教えてください。

一方、以下のように差別的な内容を含む質問や、個人のパーソナリティにかかわる質問は避けるべきです。

  • ・あなたは○○人なので、△△しますか?
  • ・どのような宗教を信仰していますか?
  • ・あなたは神を信じていますか?
  •  

面接の際、このような質問はしないように注意しましょう。

【ステップ3】採用後における外国人採用の注意点

採用後は以下のような注意点を踏まえつつ、実際に迎え入れる外国人が働きやすい職場をつくりましょう。

在留資格の手続きをサポートする

海外在住の外国人を採用した場合、まずは日本へ入国するために在留資格の交付申請が必要です。国内在住の外国人を採用する場合でも、在留資格によっては変更許可申請を求められます

在留資格の交付申請をする場合、採用した外国人だけでなく、企業側も書類を用意しなければならないケースが多いため、外国人のサポートをしながら手続きを進めるとよいでしょう。書類に何らかの不備があると、再申請を行わなければならないので、入社が遅れてしまうかもしれません。

手続きをスムーズに進めるために、人材紹介会社や登録支援機関、行政書士にサポートを依頼するのも一案です。

労働条件を正確に伝える

採用が決まったら、外国人に労働条件を漏れなく正確に伝えたうえで、きちんと承諾を得ましょう給与・福利厚生・勤務時間など、書面で明示しなければならない労働条件もあります

採用した外国人の日本語能力によっては理解が難しい可能性もあるので、質疑応答も交えながら丁寧に説明しましょう。その際は、相手の母国語で作成した「労働条件通知書」を提供すれば、理解が進みやすくなります。

特に給与面は誤解があるとトラブルを招きかねないため、手当や残業代の仕組みなどを明確に伝えましょう

文化や価値観の違いを理解・共有する

国によって文化や価値観は異なるため、仕事でもすれ違いやトラブルが起こる可能性はあります。採用した外国人は日本人中心のコミュニティに属することになるため、悩みやストレスを抱えやすい点にも注意しなければなりません。

業務を滞りなく進めるためには、相手の文化や価値観をきちんと理解・共有したうえで、お互いに歩み寄る姿勢を見せる必要があります異文化コミュニケーション研修を実施したり、職場のルールを整備・周知したりすることも大切です。

 

外国人の文化や価値観については、以下の記事でも解説しています。

組織文化の形成・理解は人材定着のカギ!外国人材も働きやすい組織づくり

外国人材との異文化コミュニケーションで大切なことは?重要な理由や交流のコツも解説

教育環境を整備する

日本語能力が高い外国人であっても、言葉の細かいニュアンスは理解できないことがあります単に業務マニュアルを渡すだけだと、業務をスムーズに遂行できない可能性があるため、専属の教育担当者を置いたり日本語教育を定期的に行ったりすることが大切です。

日本語教育については、外部のスクールやNPO法人などが運営するボランティアを活用して、サポートすることも重要になります。

注意点はあるものの外国人採用はメリットも大きい

厚生労働省が公表した『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)』によると、日本国内で活躍する外国人労働者数は2023年10月時点で200万人を突破し、過去最高の数値となっています

また、対前年増加率も前年の5.5%から12.4%へと、前年から約7%上昇しており外国人労働者の需要は増加傾向にあります人材確保やインバウンド対策に繋がることもあり、外国人労働者の活躍が期待されているため、需要が高まっているのでしょう。

参考:厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)』

 

このような現状を踏まえつつ、外国人採用で企業が得られるメリットをいくつか紹介します。

労働者不足を解消できる

近年、日本は少子高齢化や人口減少を原因として、さまざまな業界で労働力不足が進行しています。特に少子高齢化は深刻であり、2022年10月時点で高齢化率(総人口に占める65歳以上の人口の割合)が29%となっている状況です。

参考:内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」

 

今後も若手の人材確保は難航していくと予測されるなか、外国人の採用は労働者不足の解消に繋がる手段として有効だといえるでしょう。特に「特定技能」の在留資格を持つ外国人は一定のスキルを保有しているので、即戦力としての活躍が期待できます

 

労働力不足や特定技能については、以下の記事もご覧ください。

日本で労働者不足が進行している背景とは?企業への影響や解消方法も詳しく解説

在留資格「特定技能」とは?種類や対象分野、技能実習との違いなどをわかりやすく解説

助成金や補助金を活用できる

日本人・外国人を問わず、採用活動にはコストがかかるものです。しかし、外国人を採用する際に一定の条件を満たせば、国もしくは自治体から助成金や補助金が支給されるため、雇用や受け入れ整備にともなう経費の一部をカバーできます

 

助成金や補助金の詳細は、以下の記事で解説しています。

外国人雇用には助成金を活用!受給要件や金額を徹底解説

社内の活性化に繋がる

母国から日本へ就労に来ている外国人は、働くことへの意欲が高い人材といえます仕事への姿勢はともに働く他の従業員にも影響するため、モチベーションアップに繋がる可能性がある点がメリットです

また、日本とは異なる言語・文化・価値観に触れることで、今までにない斬新なアイデアやビジネスモデルが生まれる可能性もあります外国人にとっても日本企業の技術やサービス精神を学べるため、双方にとってメリットが大きいといえるでしょう。

まとめ

生まれ育った環境や国民性が異なる性質上、外国人を採用する際は日本人との違いをきちんと理解したうえで、募集や面接を行う必要があります。また、採用後も外国人に向けたサポートや環境整備が求められるため、各ステップの注意点を事前に把握しておきましょう。

ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、特定技能外国人の教育から人材紹介、登録支援、定着サポートまで一気通貫で対応しています。アジア4ヵ国に設置した自社アカデミーで学生を教育しつつ、企業様のニーズを踏まえた最適な人材を紹介しているため、労働力不足や採用難に悩んでいる採用担当者の方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

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