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いまや国内の多くの産業で、外国人材は貴重な戦力となっています。しかし、一部の外国人が不法就労していることにより、企業が不法就労助長罪に問われるケースもあるので注意が必要です。
今回は、不法就労助長罪の概要や罰則内容、企業が知っておきたいポイントなどを解説します。外国人材の雇用を検討している、あるいはすでに雇用している企業の採用担当の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
不法就労助長罪とは「外国人の雇用主が問われる罪」のこと
不法就労助長罪は、不法滞在している外国人などを雇用した企業や、不法滞在の外国人に不法就労をあっせんした者が処罰対象となるおそれのある罪です。
警察庁の資料によると、2022年の不法就労助長罪の検挙件数は246件であり、「犯罪インフラ(※1)」に該当する事犯の検挙件数のなかでも大きな割合を占めています。
※1:犯罪を助長もしくは容易にする基盤のことを指し、不法就労助のほかに偽装結婚や地下銀行による不正送金などの事犯が含まれる
以下では、不法就労と不法就労助長罪の概要、罪に問われた場合の罰則内容を紹介します。
参考:警察庁組織犯罪対策部|令和4年における組織犯罪の情勢【確定値版】
そもそも不法就労とは
不法就労とは、不法滞在者や働く資格のない外国人が就労している状態などを指します。大きく分けて、以下の3つのケースが該当します。
不法就労に該当するケース |
具体例 |
不法滞在者が働いているケース |
密入国者やオーバーステイ(不法残留)の外国人が働いている など |
出入国在留管理庁から許可を得ずに働いているケース |
短期滞在の在留資格を取得した外国人が働いている など |
取得した在留資格の範囲を超えて働いているケース |
料理人としての在留資格を得た外国人が、機械工場で料理に関係のない仕事を行う など |
例えば、外国人が取得した在留資格の範囲を超えて働いている場合には、以下の罰則等が科されるおそれがあります。
3年以下の懲役あるいは禁錮あるいは300万円以下の罰金、またはその懲役・禁錮のいずれかと罰金の併科 参考:e-Gov法令検索|出入国管理及び難民認定法 |
また、不法滞在者などは退去強制の事由に該当するため、国外へ強制的に退去させられることも考えられます。
不法就労と知らなくても企業が不法就労助長罪に問われることも
罰せられるのは、不法就労を行った外国人本人だけはありません。外国人を不法就労させた雇用主も、出入国管理及び難民認定法(以降、入管法)の73条の2によって、不法就労助長罪に該当するとして罰せられるおそれがあるので注意が必要です。
この罪に問われる場合、大きく次の2つのパターンに分かれます。
- 1.不法就労であることを知っていながら雇用した
不法就労にあたると知りながら外国人を雇用した者や仕事で使用した者、不法就労にあたる外国人を派遣した仲介業者などが罪に問われるパターン
- 2.不法就労であることを知らずに雇用した
外国人が不法就労を行っていることを知らずに雇用した者が罪に問われるパターン
上記のように、不法就労者だと知らずに雇用した場合でも、雇用主が罪に問われます。したがって、外国人を雇用する際は、不法就労に当てはまらないかをしっかりと確認しておくことが重要だと考えられます。
不法就労助長罪の企業への罰則内容
不法就労者の雇用主や不法就労をあっせんした者は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方を科されます。
また、2024年2月末には、政府が不法就労助長罪を厳罰化する方針を定めたことが明らかになりました。具体的には、罰則を5年以下の懲役(2025年6月からは拘禁刑)または500万円以下の罰金へと引き上げる見通しとなっています。
現行よりもさらに厳しい罰則になることが予定されているため、外国人を雇用する際は今以上にチェックを強化する必要があるでしょう。
不法就労助長罪に問われる3つのケース
次に、企業が不法就労助長罪に問われかねないケースを3つ紹介します。
1.不法滞在者を就労させたケース
偽造ビザ等で不法入国した密入国者や、在留期間を超過している外国人を就労させると、不法就労助長罪に問われるおそれがあります。
後者の場合は、正規に取得した在留資格を保有する外国人であっても、在留期間更新の許可申請を怠っていると不法滞在の状態となるため注意が必要です。オーバーステイの状態とならないよう、雇用側にはしっかりとした管理が求められます。
また、退去強制を受ける「被退去強制者」を就労させているケースも、不法就労助長罪に該当するので留意しておきましょう。
2.就労が認められていない外国人を働かせたケース
在留資格には、2024年3月時点で29種類があり、定められた活動範囲での就労が可能なものは、そのうち19種類に限られます。就労が許可されていない在留資格を持つ外国人を働かせた場合も、罪に問われるので注意しましょう。
原則的に就労ができない在留資格の一例として、「短期滞在」「留学」「文化活動」「家族滞在」などが挙げられます。ただし、留学や家族滞在などの在留資格は、資格外活動の許可を受ければ就労が可能になるのがポイントです。
資格外活動許可とは、すでに取得している在留資格の活動範囲を超えて就労したり、収入をともなう事業運営を行ったりする際に必要な許可です。
在留資格の種類や取得方法について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
在留資格とは?全29種類の特徴・取得方法や外国人雇用で気を付けたいポイントを解説
3.在留資格の活動範囲を超えて働かせたケース
就労が認められる19種類の在留資格では、それぞれに活動範囲が定められています。許可されている活動範囲を超えた業務に従事させると、罪に問われるので注意しましょう。
例えば、調理師として働くことを前提に在留資格「技能」を取得している外国人を、コンビニのアルバイトとしてレジを担当させた場合は、不法就労助長に該当します。
なお、「永住者」や「定住者」などの在留資格を持つ外国人は、就労が制限されていません。
気を付けたい!不法就労助長の事例
ここからは、実際に起きた不法就労助長の事例を、警察庁の資料をもとに紹介します。
いずれも意図的に不法就労助長をしたとされる事例を取り上げていますが、意図せず加担してしまうことのないように、ぜひ参考にしてください。
事例1.日本人・ベトナム人による不法就労助長の事例
2021年6月から10月にかけて、人材派遣会社に勤める日本人の男性とベトナム人の女性が、留学等の在留資格を持つベトナム人の男性たちを、食品加工工場で就労させた事例が発生しました。
この事例では、日本人男性1人が不法就労助長で逮捕されたほか、その男性の知人であるベトナム人女性1人と、不法就労していたベトナム人男性2人が不法残留で逮捕されています。
前述のとおり、在留資格「留学」では原則的には就労が許可されていないため、就労する場合は資格外活動許可を受けたり、在留資格の変更許可申請をしたりする必要があります。
参考:警察庁組織犯罪対策部|令和4年における組織犯罪の情勢【確定値版】
事例2.フィリピン人による不法就労あっせん等の事例
2020年8月から2021年6月にかけて、倉庫作業員のフィリピン人女性が短期滞在等の在留資格を取得したフィリピン人男性たちを、知人の建設資材管理会社に紹介して就労させていた事例がありました。
結果として、フィリピン人女性1人が「不法残留幇助」と「不法就労あっせん」の罪に問われたほか、建設資材管理会社の作業員として不法就労していたフィリピン人の男性8人が不法残留で逮捕されています。
在留資格「短期滞在」の在留期間は「90日もしくは30日、または15日以内の日を単位とする期間」と規定されているため、許可された期間を超えて滞在する外国人は不法残留の扱いとなります。
参考:警察庁組織犯罪対策部|令和3年における組織犯罪の情勢【確定値版】
事例3.人材派遣会社社員らによる不法就労助長の事例
2019年7月から2020年10月にかけて、人材派遣会社に勤める日本人男性たちが、技能実習等の在留資格を持つ複数のベトナム人の男女を、水産加工会社へ派遣して就労させていた事例がありました。
この事例では、日本人の男性5人が複数のベトナム人の男女を雇っていたとして、不法就労助長で逮捕されました。また、この日本人男性たちに人材をあっせんしたベトナム人の男性と、作業員として働いたベトナム人の男女5人も逮捕されています。
なお、技能実習とは、日本の技術や知識などを外国人に移転し、開発途上国等の経済発展に貢献することを目的とした在留資格です。
しかし、現行の技能実習制度は廃止され、人材育成および人材確保を目的とする「育成就労制度」が創設される見通しです。2024年3月15日には、育成就労制度の創設に向けた入管法などの改正案が閣議決定されています。
参考:警察庁組織犯罪対策部|令和2年における組織犯罪の情勢【確定値版】
不法就労助長罪に問われないために!企業が知っておきたいポイント
ここからは、企業が不法就労助長罪に問われるような事態を避けるためのポイントを紹介します。
在留カードをチェックする
在留カードには、外国人が取得している在留資格や就労制限の有無などの情報が一通り載っています。そのため、在留カードで外国人の身分をチェックすることが重要です。
以下では、在留カードの原本を使って確認すべきポイントを3つ解説します。
・在留カードの有効性
名前や国籍といった基本情報を確認するほか、在留カードに記載されている顔写真と本人の照合などを行いましょう。近年は在留カードが偽造されているケースもあるため、カードが本物であるかの確認も必要です。
確認する方法としては「在留カード等読取アプリケーション」の利用や、「在留カード等番号失効情報照会」の利用などが挙げられます。
・在留資格の内容
外国人が取得している在留資格の内容と、雇用後に従事させる業務内容との関連性が認められるかをチェックする必要があります。前述のとおり、在留資格の活動範囲から外れている場合は、企業側も罪に問われる可能性があるためです。
特に、「留学」「家族滞在」など原則的に就労できない在留資格の場合は、在留カードの裏面を確認して、資格外活動許可欄に「許可」と記載があるかをチェックしましょう。
・在留期間
在留カードで、許可された在留期間を過ぎていないかを確認しましょう。在留期間を過ぎた外国人の雇用は、不法就労助長にあたります。
就労が認められている在留資格の多くは、3ヵ月・1年・3年・5年などの在留期間が設けられています。雇用している外国人の在留期間を更新するには、必要書類を出入国在留管理庁に提出する必要があるので、余裕を持って早めに準備することが大切です。
外国人材紹介サービスを活用する
優良な外国人を安全に採用したいのであれば、外国人材紹介サービスを活用するのも手段の一つです。不法就労しているような外国人を採用するリスクを抑えられ、自社の条件に適した外国人を紹介してもらえるメリットもあります。
また、外国人材紹介サービスを利用すれば、各種申請に関するサポートも受けられるため、外国人を採用するうえでの手間を減らし、スムーズな雇用を実現できるのも魅力といえます。
特に初めて外国人材を雇用する場合は、積極的に活用するとよいでしょう。
外国人材の雇用に関するご相談はオノデラユーザーランへ
外国人材の雇用を検討しているのであれば、ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)へぜひご相談ください。オノデラユーザーランでは、企業様のニーズに適した特定技能外国人のご紹介が可能です。
特定技能外国人とは、「介護」「外食」「宿泊」などの特定産業分野で即戦力としての活躍が見込まれる外国人のことで、在留資格「特定技能」を取得しています。特定技能には1号と2号があり、1号は最大5年、2号は就労制限なしで働けるため、企業様の貴重な戦力として中長期的に活躍してくれる可能性があります。
オノデラユーザーランでは、特定技能外国人の紹介や、受け入れに際しての申請サポート、内定後教育などをワンストップでご対応可能です。その他、生活・学習支援サービスなども提供しており、外国人材の定着率アップに向けてきめ細かくサポートします。
特定技能の種類や対象分野、雇用するメリットを知りたい方は、ぜひ以下の記事をご覧ください。
在留資格「特定技能」とは?種類や対象分野、技能実習との違いなどをわかりやすく解説
まとめ
たとえ外国人が不法就労であることを知らない場合でも、企業は不法就労助長罪に問われることがあるので注意が必要です。外国人を雇用する際は、在留カードをチェックしたり、外国人材紹介サービスを活用したりすることをおすすめします。
ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、海外自社アカデミーにて育成した特定技能外国人の紹介から受け入れ、内定後教育までを一気通貫でサポート可能です。また、企業様がスムーズに外国人材を受け入れられるよう、きめ細かなサービスを提供しています。
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