特定技能の基本情報
特定技能の対象分野の一つに、「航空」があります。航空業界では人材が不足しているため、特定技能「航空」の在留資格で外国人材を受け入れたいと考える企業は多いのではないでしょうか。
今回は、特定技能「航空」について、対象業務や在留資格の取得方法、企業側の受け入れ要件などを解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
特定技能「航空」とは?
特定技能「航空」は、航空業界の仕事に従事することを前提とし、外国人に与えられる在留資格です。
ここでは、「特定技能」についてあらためて確認するとともに、航空業界の現状をお伝えします。
そもそも特定技能とは
特定技能は、人材確保に悩んでいる産業分野において、一定の専門性やスキルを有する外国人材を確保するための在留資格です。この特定技能の在留資格などを定めた「特定技能制度」が、2019(平成31)年4月に導入されました。
特定技能の対象となる分野は、以下の12種類です。
- 1.介護
- 2.外食
- 3.宿泊
- 4.飲食料品製造
- 5.自動車整備
- 6.航空
- 7.農業
- 8.ビルクリーニング
- 9.工業製品製造業(※令和6年3月に名称変更、新業種・業務区分追加を閣議決定)
- 10.建設
- 11.造船・舶用工業
- 12.漁業
特定技能の在留資格は、1号と2号に分かれています。「航空」分野は、特定技能1号のみの取り扱いから始まりましたが、2023(令和5)年6月の閣議決定にて、特定技能2号での受け入れも可能になることが決まりました。
なお、特定技能についてさらに詳しく知りたい方は、以下の各記事をご覧ください。
在留資格「特定技能」とは?種類や対象分野、技能実習との違いなどをわかりやすく解説
2023年最新|特定技能の12分野・業種の職種一覧と現状を解説!
参考:国土交通省|航空分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)
航空業界の現状
特定技能の分野に「航空」があることからわかるとおり、航空業界も人手不足が進んでいます。その背景の一つに、訪日外国人旅行者数の増加が挙げられるでしょう。
日本政府観光局が2024(令和6)年1月17日に発表したデータによると、2023(令和5)年の訪日外国人旅行者数は、約2,507万人でした。
政府は「2030年までに6,000万人」という旅行者数目標を掲げていることから、外国人材の受け入れが進まないと、人手不足の状態が深刻化すると予想されます。
人手不足が進んでいるそのほかの要因については、以下の記事で解説しているので、併せて参考にしてください。
日本で労働者不足が進行している背景とは?企業への影響や解消方法も詳しく解説
参考:JNTO(日本政府観光局)|訪日外客数(2023年12月および年間推計値)
特定技能「航空」で外国人を受け入れるメリット
ここでは、航空業界の企業が外国人材を受け入れるおもなメリットを紹介します。
なお、以下の記事でも、外国人材を受け入れるメリット・デメリットをまとめて解説しています。
外国人労働者受け入れのメリット・デメリットは?問題点や受け入れ方法などもまとめて解説
即戦力かつ長期的な人材を確保できる
特定技能「航空」の在留資格を持った外国人材は、航空分野に関する専門知識やスキルを持っています。そのため、新たに人材を採用してから育成するまでの時間とコストを削減でき、航空業界で即戦力としての活躍が期待されるでしょう。
また、先述のとおり、航空分野では特定技能1号・2号ともに取得可能です。特定技能1号の在留期間の上限は「通算で5年」ですが、特定技能2号には在留期間の更新に上限がないため、長期的な人材確保に繋がります。
参考:外務省|制度の概要
他国の言語や文化へ対応しやすくなる
外国人材を受け入れれば、それぞれの母国の言語や文化での対応が可能になります。
航空業界の業務では、外国人と接する機会もあるため、日本語以外でのコミュニケーションがスムーズにとれると、業務効率化に繋がるでしょう。
なお、特定技能外国人の受け入れをサポートするONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、特定技能「航空」においても人材紹介を行っています。以下のページでは、航空分野での受入れ企業の事例を紹介しているので、ぜひご覧ください。
特定技能「航空」の対象となる業務
特定技能「航空」の対象となる業務は、「空港グランドハンドリング業務」と、「航空機整備業務」の2種類に分けられます。ここでは、それぞれの業務内容を見てみましょう。
空港グランドハンドリング業務
空港グランドハンドリングとは、空港に航空機が到着してから出発するまでの間に行われる、地上支援作業のことです。特定技能「航空」で従事できる具体的な業務は、以下のとおりです。
- ・航空機地上走行支援業務:航空機の駐機場への誘導など
- ・手荷物・貨物取扱業務:手荷物や貨物の仕分けなど
- ・手荷物・貨物の搭降載取扱業務:手荷物や貨物の航空機への移送など
- ・航空機内外の清掃整備業務:客室内の清掃や遺失物の検索、機体の洗浄など
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航空機整備業務
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航空機整備に関連する業務のうち、特定技能「航空」で従事できるものは、以下のとおりです。
- ・運行整備業務:空港に到着した航空機が出発するまでの整備業務
- ・機体整備業務:1年~1年半ごとに実施する大規模な整備業務
- ・装備品・原動機整備業務:航空機の脚部や動翼、エンジンなどの整備業務
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外国人が特定技能1号「航空」を取得する方法
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続いては、外国人が特定技能1号「航空」の在留資格を取得する方法を紹介します。
前提として、対象となるのは18歳以上の外国人です。そのうえで、「特定技能試験・日本語試験に合格する」または「技能実習2号を良好に終了する」ことにより、在留資格を取得できます。
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取得方法1.特定技能試験に合格する
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外国人が特定技能試験を受験する方法は、大きく分けて以下の2パターンがあります。
- ・留学などほかの在留資格で日本に滞在している場合:日本で受験する
- ・海外にいる場合:海外で受験する
海外では、フィリピンやモンゴルなどでの試験実施実績があります。試験内容の詳細は、次章をご覧ください。
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取得方法2.技能実習2号を良好に修了する
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すでに技能実習2号の在留資格を取得している外国人なら、良好に修了することで特定技能1号へ移行可能です。
具体的には、技能実習の「空港グランドハンドリング職種(航空機地上支援作業)」から、特定技能の「空港グランドハンドリング」へ移行できます。この場合、特定技能試験の受験は不要です。
ただし、技能実習には、特定技能の「航空機整備」に移行できる職種はありません。また、技能実習制度は、2024(令和6)年の通常国会を目処に廃止されることが決まっており、代わりに新たな制度の創設が進められています。
参考:法務省|技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応について(本文) -
特定技能1号「航空」の試験内容
- 航空分野の特定技能試験には、「特定技能評価試験(航空分野)」と「日本語試験」があります。ここでは、それぞれの試験の概要を解説します。
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特定技能評価試験(航空分野)
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特定技能評価試験(航空分野)の実施主体は、公益社団法人日本航空技術協会(JAEA)です。「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」に分けて、試験が実施されます。
外国人材に求められる技能水準は、以下のとおりです。
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空港グランドハンドリング
社内資格を有する指導者やチームリーダーの指導・監督の下、空港における航空機の誘導・けん引の補佐、貨物・手荷物の仕分けや荷崩れを起こさない貨物の積みつけ等ができるレベルであることを確認する。
航空機整備
整備の基本技術を有し、国家資格整備士等の指導・監督の下、機体や装備品等の整備業務のうち基礎的な作業(簡単な点検や交換作業等)ができるレベルであることを確認する。
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引用:国土交通省|航空分野における新たな外国人材の受入れについて
また、2023(令和5)年度は、以下の場所で特定技能評価試験(航空分野)が開催されました。
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空港グランドハンドリング
- ・国内:東京・大阪・福岡
- ・海外:フィリピン・ネパール・インドネシア・スリランカ
航空機整備
- モンゴル
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最新の試験情報は、以下の日本航空技術協会のホームページから確認できます。
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日本語試験
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日本語試験では、「日本語能力試験(JLPT)」と「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」のいずれかを受験します。
日本語能力試験(JLPT)は、N1からN5までの5段階のレベルがあり、基本的な日本語が理解することができることを示す「N4」以上に合格しなければなりません。原則として、試験は7月と12月の年2回実施されますが、海外ではどちらか1回のみの場合もあります。
一方の国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)は、日本語能力試験(JLPT)のようなレベル分けはないのが特徴で、原則として、試験は毎月実施されます。ただし、海外では毎月開催されないこともあります。
各試験の最新情報は、以下のホームページから確認してください。
日本語能力試験 JLPT
JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト
日本語能力試験(JLPT)について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
語学力の検定「日本語能力試験(JLPT)」を受験する目的とは?レベルや注意点も紹介 -
特定技能「航空」の受け入れ要件
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特定技能外国人の受け入れにあたっては、外国人材が所定のプロセスを経るだけでなく、受入れ企業も一定の要件を満たさなければなりません。
ここでは、特定技能「航空」の在留資格を持つ外国人材の、受け入れ要件を紹介します。
参考:国土交通省|航空分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」) -
法令に基づく事業所であること
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空港グランドハンドリングで特定技能外国人を受け入れられるのは、空港管理規則に基づき、その空港での営業の承認等を受けた事業者のみです。そのため、構内営業の承認書などで証明する必要があります。
一方、航空機整備で特定技能外国人を受け入れられるのは、航空法に基づく航空機整備等にかかわる認定事業場を有する事業者等のみです。この場合も、航空機整備等にかかわる能力を証明できるものを用意します。
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航空分野特定技能協議会へ加入すること
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国土交通省は、特定技能外国人の適正な受け入れ・保護を目的として、「航空分野特定技能協議会」を設置しています。
特定技能「航空」の在留資格を持つ外国人材を受け入れる際には、この航空分野特定技能協議会の構成員になる必要があります。また、受入れ企業(協議会加入企業)は、協議会で取り決めたルールなどを遵守しなければなりません。 -
国土交通省の調査や指導に協力すること
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特定技能「航空」を所管する国土交通省は、状況に応じて、受入れ企業を調査・指導することがあります。
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協力しない場合は、受入れ企業として不適切と判断されるため、注意が必要です。
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その他全分野共通の要件を満たすこと
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そのほかにも、航空分野に限らず、特定技能外国人を受け入れる際には満たさなければならない要件があります。具体例は、以下のとおりです。
- ・労働、社会保険、租税に関する法令を遵守している
- ・特定技能外国人の労働時間や報酬額が、日本人労働者と同等である
- ・特定技能外国人を支援する計画や体制が整っている など
ただし、特定技能2号の場合は、支援計画の策定・実施は必須ではありません。
特定技能1号では、特定技能外国人の支援が必須であり、登録支援機関に支援計画作成の補助など一部の業務を依頼したり、支援業務をすべて委託したりすることも可能です。
なお、外国人労働者の受け入れ実績があるなどの諸条件をクリアできなければ、そもそも自社で支援業務を対応することはできません。その場合、すべての支援業務について登録支援機関に委託する必要があります。
登録支援機関については、以下の記事をご覧ください。
特定技能における登録支援機関とは?支援委託をおすすめする理由と選び方 -
特定技能「航空」で外国人を受け入れる際の注意点
- 最後に、特定技能「航空」の外国人材を受け入れる際の注意点を、2つ紹介します。
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認められているのは直接雇用のみ
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特定技能「航空」で外国人を採用する場合、派遣形態などでは雇用できません。直接雇用のみが認められている点に注意しましょう。
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関連業務のための受け入れはできない
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空港グランドハンドリング業務や航空機整備業務には、事務作業や除雪作業などの関連業務が付随するケースもあります。
特定技能外国人が関連業務をすること自体は問題ありませんが、関連業務のみを行う目的での受け入れは認められていません。
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まとめ
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特定技能「航空」は、大きく分けて「空港グランドハンドリング業務」と、「航空機整備業務」に従事できる在留資格です。人手不足が深刻化するなか、即戦力かつ長期的な人材を確保できる点や、他国の言語や文化へ対応しやすくなる点から、航空分野での外国人材の受け入れはメリットがあるでしょう。
ただし、受け入れにあたっては、外国人材側と受入れ企業側がそれぞれ要件を満たさなければなりません。特に、自社で外国人材の支援体制を整えることは難しいため、登録支援機関のサポートを受けてはいかがでしょうか。
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