特定技能関連
「特定技能外国人の受け入れ人数はどのくらい?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、基本的に受け入れ人数に制限はありません。ただし、建設業と介護分野では人数制限が設けられているため、注意が必要です。
今回は、特定技能外国人の受け入れ人数の上限や推移、外国人雇用が進みにくい理由などについて解説します。特定技能外国人の雇用をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも「特定技能」とは?
まずは、特定技能がどういうものかを解説します。
特定技能=日本の人手不足解消を目的として創設された在留資格
特定技能とは、2019年4月に創設された在留資格を指します。これにより、日本国内で人手不足が深刻化する特定産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れられるようになりました。
特定技能の大きなメリットは、単純労働を含む幅広い業務に外国人が従事できる点です。学歴や関連業務の従事経験を問わないため、特定技能外国人は今後も増加することが予想されます。
特定技能に該当する分野と従事可能な業務一覧
特定技能に該当する12分野と、それぞれの従事可能な業務は以下のとおりです。
特定技能に該当する分野 |
従事可能な業務 |
介護 |
・身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等) ※訪問系サービスは対象外 【1業務区分】 |
外食業 |
・外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理) 【1業務区分】 |
宿泊 |
・宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客およびレストランサービス等の宿泊サービスの提供 【1業務区分】 |
飲食料品製造業 |
・飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生) 【1業務区分】 |
自動車整備 |
・自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随 【1業務区分】 |
航空 |
【2業務区分】 |
農業 |
【2業務区分】 |
ビルクリーニング |
・建築物内部の清掃 【1業務区分】 |
工業製品製造業(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業) |
【10業務区分】 |
建設 |
【3業務区分】 |
造船・舶用工業 |
|
漁業 |
【2業務区分】 |
参考:出入国在留管理庁「特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)」
出入国在留管理庁の資料によると、2024年3月29日の閣議決定により、工業製品製造業と造船・船用工業の分野に関しては、業務区分が変更されています。
また、上表のとおり、介護分野における特定技能外国人の訪問系サービスは、現状は対象外です。ただし、厚生労働省は、2024年6月19日の審議会において、介護職員初任者の研修修了などの条件を満たす特定技能外国人等に対しては、訪問系の介護サービス従事を認める方針を示しています。
この方針が実現すれば、訪問系の介護サービス事業を展開する事業者においても、即戦力となる特定技能外国人材を雇用できる可能性があります。
参考:厚生労働省「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会 中間まとめ(案)」
特定技能で訪問介護サービスが追加される方針が示されたことの詳細などについては、ぜひ以下の記事をご参照ください。
特定技能の訪問介護が解禁へ!現状や今後の動向、考えられる課題を解説
新たに4分野が追加
特定技能の受け入れ対象分野は12分野で運用されていましたが、2024年3月29日の閣議により、新たに4分野を追加することが決定しました。2024年9月30日時点で、受け入れ可能な分野は16分野となっています。
新たに追加された4分野の業務内容は、以下のようになります。
追加された特定技能分野 |
従事可能な業務 |
自動車運送業 |
バス運転者、タクシー運転者、トラック運転者 【3業務区分】 |
鉄道 |
運輸係員(運転士、車掌、駅係員)、軌道整備、電気設備整備、車両製造、車両整備 【5業務区分】 |
林業 |
育林、素材生産、林業種苗育成等 【1業務区分】 |
木材産業 |
製材業、合板製造業などに係る木材の加工工程及びその附帯作業等 【1業務区分】 |
参考:出入国在留管理庁「特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)」
上表のとおり、人材確保が困難な自動車運送業や林業など、新たに4つの分野で特定技能外国人が受け入れられるようになりました。
特定技能1号と2号の違い
特定技能は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、求められる技能水準や在留期間などが異なります。
特定技能1号は、一定レベルの業務を遂行できるほどの技能が求められるものです。1年、6ヵ月または4ヵ月ごとの更新が必要で、通算5年まで在留できますが、家族を日本へ連れてくることは基本的にできません。
もう一方の特定技能2号は、1号よりさらに熟練した技能を求められます。3年、1年または6ヵ月ごとの更新が必要で、更新回数に上限がなく、永続的に日本への在留が可能です。要件を満たしていれば、配偶者や子どもを日本へ連れてくることもできます。
特定技能1号・2号の違いについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
特定技能1号・2号の違いは?それぞれの取得方法もわかりやすく解説
なお、前述のとおり、2024年3月の閣議決定により、特定技能の受け入れ対象分野が新たに4つ追加されていますが、これらの分野では特定技能1号のみを受け入れできます。そのため、特定技能2号では、介護分野と新たに追加された4分野を除いた11分野で受け入れが可能です。
参考:出入国在留管理庁「特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)」
ただし、工業製品製造業分野に関しては、特定技能2号で受け入れが可能な業務区分は、「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3つとなっています(2024年9月30日時点)。
また、造船・舶用工業分野に関しては、「造船」「舶用機械」「舶用電気電子機器」の業務区分で、特定技能2号の受け入れが可能です(2024年4月1日時点)。
企業での特定技能外国人の受け入れ人数に上限はある?
企業での特定技能外国人の受け入れ人数は、基本的に制限されていませんが、一部の分野のみ制限が設けられています。
建設業・介護分野のみ人数制限が設けられている
特定技能外国人を受け入れる分野のうち、建設業と介護の分野のみ、人数制限が設けられています。
建設業では、特定技能1号と特定活動の在留資格で就労している外国人の合計が、受入れ企業の常勤職員の人数を超えないようにしなければなりません。この場合の「常勤職員」とは、社会保険へ加入している正社員を指します。特定技能1号や技能実習生などは含まれないため、注意しましょう。
介護分野では、日本人等の常勤介護職員の総数が上限とされています。この上限は企業単位ではなく、事業所単位であるため注意してください。企業全体の常勤介護職員数が多くても、その事業所の常勤介護職員数が少なければ、受け入れられる特定技能外国人の数も少なくなります。
また、介護分野の「日本人等の常勤介護職員」には以下の外国人も含まれています。
- ・介護福祉士国家試験に合格しているEPA介護福祉士
- ・在留資格「介護」を有する人
- ・身分・地位に基づいた在留資格によって在留する人
一方で、留学生や技能実習生、EPA介護福祉士候補者は含まれません。
参考|在留資格「技能実習」は常勤職員数で受け入れ人数が決まる
少し話は逸れますが、特定技能とともによく挙げられる在留資格「技能実習」では、常勤職員数に応じて以下のように受け入れ人数が決まっています。
技能実習1号(基本人数枠) |
技能実習2号 |
|
常勤職員数 |
受け入れ可能人数 |
受け入れ可能人数 |
301人以上 |
常勤職員数の20分の1 |
基本人数枠の2倍 |
201人~300人 |
15人 |
|
101人~200人 |
10人 |
|
51人~100人 |
6人 |
|
41人~50人 |
5人 |
|
31人~40人 |
4人 |
|
30人以下 |
3人 |
受入れ企業がいくつかの基準を満たして優良な実習実施者として認められると、より多くの技能実習生を受け入れられるようになります。
とはいえ、建設業・介護分野を除いた10の分野については、特定技能のほうが企業で受け入れられる人数は多くなっています。
なお、技能実習制度は、新制度の育成就労制度に移行することが決定しています。技能実習廃止や育成就労制度については、以下の記事で詳しく紹介しています。
【最新動向】育成就労制度とは?基本的な考え方や重要なポイントを解説
日本全体の特定技能外国人の受け入れ人数には上限がある!
企業ごとでは、特定技能外国人の受け入れ人数に上限がない(特定の分野を除く)ものの、日本全体では2024年4月からの5年間で82万人の特定技能外国人の受け入れ見込数が設定されています。これは国内労働市場への影響を見込んでいるためといえるでしょう。
分野別の特定技能外国人の受け入れ見込数(上限数)と、その受け入れ状況は以下のとおりです(2024年6月末時点)
特定産業分野 | 受入れ状況 | 受入れ見込み数(上限数) |
介護 |
3万6,719人 |
13万5,000人 |
外食業 |
2万308人 |
5万3,000人 |
宿泊 |
492人 |
2万3,000人 |
飲食料品製造業 |
7万202人 |
13万9,000人 |
自動車整備 |
2,858人 |
1万人 |
航空 |
959人 |
4,400人 |
農業 |
2万7,786人 |
7万8,000人 |
ビルクリーニング |
4,635人 |
3万7,000人 |
工業製品製造業(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業) |
4万4,044人 |
17万3,300人 |
建設 |
3万1,853人 |
8万人 |
造船・舶用工業 |
8,703人 |
3万6,000人 |
漁業 |
3,035人 |
1万7,000人 |
自動車運送業 |
– |
2万4,500人 |
鉄道 |
– |
3,800人 |
林業 |
– |
1,000人 |
木材産業 |
– |
5,000人 |
参考:出入国在留管理庁「特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)」
現状で特定技能外国人の受け入れ人数が最も多い分野は7万202人を受け入れている「飲食料品製造業」、最も少ない分野は492人を受け入れている「宿泊」です。特定産業分野によって充足率に違いはあるものの、依然として働き手が不足している状況であることがわかります。
また、受け入れ見込数を見ると、最も多いのは17万3,300人の「工業製品製造業」、次いで13万9,000人の「飲食料品製造業」、13万5,000人の「介護」となっています。
【2024年最新】特定技能外国人の受け入れ人数状況まとめ
特定技能外国人の推移状況や国籍別・都道府県別の受け入れ人数の最新情報を紹介します。
特定技能外国人数の推移
日本に在留する特定技能外国人数の推移は、以下のとおりです。
出典:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末)」
年月 |
特定技能外国人数 |
2021年6月 |
2万9,144人 |
2021年9月 |
3万8,337人 |
2021年12月 |
4万9,666人 |
2022年3月 |
6万4,730人 |
2022年6月 |
8万7,472人 |
2022年9月 |
10万8,702人 |
2022年12月 |
13万923人 |
2023年3月 |
15万4,875人 |
2023年6月 |
17万3,101人 |
2023年9月 |
18万8,811人 |
2023年12月 |
20万8,462人 |
2024年3月 |
23万2,056人 |
2024年4月 |
23万9,051人 |
2024年5月 |
24万5,882人 |
2024年6月 |
25万1,747人 |
参考:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末)」
2021年6月時点では約3万人だった特定技能外国人数が、2024年6月時点では25万人を突破しています。このように年々増えていることから、特定技能制度も徐々に浸透してきていることがわかります。
【国籍別】特定技能外国人の受け入れ人数
国籍別の特定技能外国人の受け入れ人数は、以下のとおりです(2024年6月末時点)。
出典:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末)」
国籍 |
特定技能外国人数 |
ベトナム |
12万6,832人 |
インドネシア |
4万4,305人 |
フィリピン |
2万5,311人 |
ミャンマー |
1万9,059人 |
中国 |
1万5,696人 |
カンボジア |
5,461人 |
ネパール |
5,386人 |
タイ |
5,178人 |
その他 |
4,519人 |
参考:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末)」
特定技能外国人の受け入れ人数を国籍別に見ると最も多いのはベトナム人の12万6,832人(50.4%)で、全体の過半数を占めています。次いで多いのは、インドネシア人の4万4,305人(17.6%)、フィリピン人の2万5,311人(10.1%)です。いずれにしても、東南アジアからの外国人が多くなっています。
【都道府県別】特定技能外国人の受け入れ人数
都道府県別の特定技能外国人の受け入れ人数は、以下のとおりです(2024年6月末時点)。
出典:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末)」
都道府県 |
特定技能外国人数 |
愛知県 |
2万757人 |
大阪府 |
1万6,543人 |
埼玉県 |
1万5,530人 |
千葉県 |
1万5,185人 |
東京都 |
1万4,920人 |
神奈川県 |
1万3,645人 |
茨城県 |
1万2,872人 |
北海道 |
1万869人 |
福岡県 |
8,962人 |
兵庫県 |
8,941人 |
その他 |
11万3,523人 |
参考:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末)」
都道府県別の特定技能外国人の受け入れ人数で、最も多いのは愛知県の2万757人(8.2%)です。そして大阪府、埼玉県、千葉県と続いていることから、特定技能外国人数は都市部周辺のほうが多い傾向にあるといえるでしょう。
なお、愛知県や大阪府では、半年で約3,000人前後の特定技能外国人を新たに受け入れています。
特定技能外国人の受け入れがなかなか進まない理由
特定技能外国人数は増加傾向にあるにもかかわらず、実際の受け入れ人数と受け入れ見込数には大きな差が生まれています。
受け入れが円滑に進まず、この差が埋まらない理由として考えられるものは以下の4つです。
- ・特定技能制度について十分に理解できていない
- ・申請書類が複雑である
- ・受入れ企業側の支援体制が整っていない
- ・外国人が特定技能を取得するには2種類の試験に合格する必要がある
受入れ企業は、日頃の業務があるなかで複雑な申請書類を作成したり、生活オリエンテーションや事前ガイダンスといった支援を行ったりする必要があります。このように負担がかかるため「特定技能外国人を受け入れたいがなかなか進まない……」という状況になっている企業もあるのではないでしょうか。
その場合は、登録支援機関へ委託することで悩みを解決できるでしょう。
ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、特定技能登録支援サービスや外国人材紹介を行っています。人材教育からビザの準備、入国後の支援まで幅広くサポートしているため、気になる方はお気軽にご相談ください。
登録支援機関について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてお読みください。
特定技能における登録支援機関とは?支援委託をおすすめする理由と選び方
まとめ
建設業と介護分野の場合、常勤職員数が特定技能外国人の上限になりますが、その他の分野に関しては受け入れ人数の制限はありません。
そして、国内の特定技能外国人数は年々増加しているものの、受け入れ見込数の達成にはほど遠い状況です。その理由の一つに、受入れ企業側の負担が大きいことが挙げられます。
ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、特定技能外国人の受け入れに必要な10項目の支援のほか、生活支援や入国後学習支援などの独自サービスも提供しています。
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