その他
特定技能外国人を受け入れるにあたって、十分な補償を用意しておきたい企業も多いでしょう。社会保険では補いきれない場合に備えて、特定技能外国人には民間保険へ加入してもらっておくのも有効策といえます。
この記事では、特定技能外国人向けに整備されている民間保険について解説します。特定技能外国人の受け入れ前に十分な補償を備えておきたい企業の採用担当の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
特定技能外国人は加入が義務づけられている公的保険だけで大丈夫?
日本人を雇用するときと同様に、特定技能外国人を雇用する使用者は、外国人を社会保険に加入させる義務があります。社会保険に加入することで、就業時間中に発生した事故やけがなどのトラブルに対する補償を受けられます。
しかし、就業時間外に同様のトラブルが起こった場合は、公的保険の補償を受けられません。そのため、通院や入院を要するとなれば、医療費は高額になる可能性があります。
また、万が一の状況になった場合、母国から家族を呼び寄せなければならないケースもあります。しかし、渡航費用などは公的保険で補償されないため、かかった費用は実費で支払わなければなりません。
公的保険のみでは、特定技能外国人が安心して日本で生活できるとはいえません。日本での生活を安心して送るためには、就業時間以外のトラブルにも対応できる任意保険に加入してもらうのが賢明といえるでしょう。
任意で加入する「特定技能外国人総合保険」とは?
2019年4月、深刻な人手不足を解消する目的により、在留資格「特定技能」による外国人材の受け入れが始まりました。特定技能外国人の使用者(受入れ企業など)は、雇用した外国人を社会保険に加入させることが義務づけられているため、入国後すぐに社会保険が適用されます。
しかし、これらの公的保険ですべて補えるわけではありません。日常生活のなかで発生する病気やけがの治療、後遺障害、第三者への賠償責任などを補償するのが、任意で加入する「特定技能外国人総合保険」です。
特定技能1号を雇用する企業に対しては、政府より民間保険への加入を推奨しています。特定の補償のみで契約する保険もありますが、おもな補償がセットになっている「総合保険」という名前の保険商品が一般的なものといえるでしょう。また、民間保険の補償内容は、商品によって異なります。
ここでは、特定技能外国人向けの一般的な民間保険である「総合保険」について解説します。
保険契約者と被保険者の範囲
特定技能外国人総合保険に加入する場合、被保険者はもちろん特定技能1号外国人です。保険契約者や保険加入者は、引受保険会社の違いなどで異なります。
※引受保険会社:保険商品の運用や引受を行う保険会社のこと
保険契約者や保険加入者の違いは、以下の表を参考にしてください。
民間企業 |
JITCO保険 |
|
保険契約者 |
登録支援機関や特定技能所属機関 |
公益財団法人 国際人材協力機構 |
保険加入者 |
|
登録支援機関や特定技能所属機関 |
被保険者 |
1号特定技能外国人 |
1号特定技能外国人 |
※JITCO保険:公益財団法人 国際人材協力機構による総合保険
支払われる保険金の種類
特定技能外国人総合保険に加入している場合、日常生活で発生したトラブルには以下のような保険金が支払われます。
- 疾病治療費用保険金、傷害治療費用保険金
- 傷害死亡保険金、疾病死亡保険金
- 後遺障害保険金
- 賠償責任保険金
- 救援者費用等保険金
【疾病治療費用保険金、傷害治療費用保険金】
日常生活のなかで発生した、病気やけがの治療費への補償です。
【傷害死亡保険金、疾病死亡保険金】
日常生活で死亡した際の補償であり、一時金として支払われます。
【後遺障害保険金】
日常生活で生じたけがが原因の後遺障害に対する補償となる保険金です。
【賠償責任保険金】
他人にけがを負わせた、他人の物を壊してしまったなど、法律上の損害賠償責任を負った際に補償されます。
【救援者費用等保険金】
危篤状態または死亡した際に、親族の渡航費用やホテル客室費用、遺体搬送費用などが補償されます。
なお、上記のような補償を受けられるのは、保険金を支払う条件に当てはまっている場合に限られます。そのため、被保険者である特定技能外国人にも補償内容や条件などをあらかじめ説明しておくことが大切です。
補償対象期間
保険の補償対象期間は、保険責任期間とも呼ばれています。補償が開始されるのは、特定技能1号の目的で母国からの出国手続きを行ったタイミングです。
補償が終了するのは、母国への帰国手続きを行ったとき、またはほかの在留資格に変更するときです。
なお、特定技能1号が終了しないまま被保険者が出国したり、保険金を目的として故意的に事故を起こしたりした場合は注意が必要です。補償対象期間であっても保険責任期間の終了、または契約解除になるケースがあります。
保険責任期間の終了や契約解除になる条件は、商品によって異なります。通常どおりの生活を送っていれば問題はないかもしれませんが、念のため確認しておくとよいでしょう。
特定技能外国人の民間保険加入に関する注意点3つ
民間保険に加入することで、特定技能1号の目的で来日した外国人は安心して生活できるようになります。ただし、被保険者となるにあたっての注意点もあるため、事前に話し合っておくことが大切です。
ここで、民間保険の加入に関する注意点を押さえておきましょう。
保険未加入の場合に想定されるリスクを理解してもらう
賠償トラブルのような大きな問題に直面した場合、保険に加入していなければ対応できない可能性が考えられます。また、病気や事故で危篤状態になった際にも、保険に加入していなかったことで家族を呼ぶための費用を雇用主が負担しなければならないケースもあるでしょう。
民間保険には加入義務がないため、本人の意思次第では加入しなくても問題ありません。しかし、保険に加入することで、被保険者となる外国人の負担が軽減されるだけでなく、雇用主の負担も軽減されます。
民間保険は、雇用される外国人にとっても、雇用主にとってもメリットのある保険です。加入意思が見られない外国人にも理解を得られるよう話し合い、前向きに検討することが大切でしょう。
保険金が支払われないケースがあることも理解してもらう
たとえ民間保険に加入していても、保険金が支払われないケースがあることを、被保険者となる外国人にも理解してもらう必要があります。保険金が支払われない具体例としては、以下が挙げられます。
- 既往症の治療
- 妊娠
- 出産
- 歯科疾病
- 犯罪行為にかかわるもの
- 自殺行為 など
※けがを原因とした歯科治療では保険金が支払われます
※いずれの場合も危篤、死亡による救援者費用などの保険金は支払われます
来日して生活習慣が変化すると、体調を崩したり虫歯ができたりする可能性があります。社会保険で補える範囲には限りがあるため、歯磨きの徹底や食生活の改善など、外国人自身で防止策を講じることが大切です。
特に歯科疾病においては、丁寧に手入れすることや早めの治療、定期検診によって予防や費用を抑えることが可能です。
給料から天引きする場合は労使協定を結ぶ必要がある
社会保険の保険料は給料から天引きできますが、民間保険の保険料は天引きを強制することが認められていません。しかし、保険料の払い忘れを防ぐためにも、給料から天引きする方法が安心でしょう。
給料から天引きする場合は、特定技能外国人の代表と雇用主とで労使協定を結ぶことになります。初任給から一括で控除する方法もありますが、数年間にわたって控除するなど、保険料を控除する方法も検討する必要があります。
実際に支払う保険料は商品によって異なりますが、1年で1万円前後が相場といえるでしょう。
まとめ
特定技能外国人が日本で安心して生活するためには、社会保険では対応できないトラブルへの補償を強化する必要があるでしょう。そのためには民間保険にも加入し、就業時間以外にも補償を受けられるようにしておくことが大切です。
ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、特定技能外国人の紹介や、受け入れの手続きなどのサポートを行っています。外国人材と企業様双方に安心していただけるサービスの提供が可能です。外国人材の受け入れを検討している採用担当の方は、ぜひご相談ください。
お問い合わせはこちら
- ARCHIVE