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【技能実習生受入れ制度が廃止】新制度「育成就労制度」の目的や企業の対策も解説

2023.08.24

技能実習生を受け入れる制度が廃止され、新たに「育成就労制度」が創設される見通しとなっています。企業にとって外国人材が貴重な人的資源となっているなかで、新制度の目的や企業が今後取るべき対策について知りたい方も多いのではないでしょうか。

 

今回は、技能実習生の概要や制度廃止をめぐる意見・経緯を紹介したうえで、新制度「育成就労制度」の目的・特徴を詳しく解説します。さらに、技能実習生受入れ制度の廃止による影響や、企業が今後取るべき対策なども紹介。

 

技能実習生を受け入れている企業、および外国人材の雇用を検討している企業の採用担当の方は、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも技能実習生とは?

技能実習生とは、「技能実習制度」で受け入れた外国人を指します。1993年に創設された技能実習制度は、開発途上国などの外国人を日本へ受け入れて、技能・技術などを移転させ、母国での経済発展を担う人材を育成することが目的です。

技能実習制度における在留資格のステップは、1年目が「技能実習1号」、2・3年目が「技能実習2号」、4・5年目が「技能実習3号」と大きく3つの区分に分かれています。技能実習生はそれぞれの区切りで試験を受け、それに合格することで在留資格が変更され、最長5年の技能実習が可能となるのです。

 

なお、技能実習3号を取得するには、所定の技能試験に合格することに加え、受入れ企業などが優良であると認められる必要があります。

 

法務省・厚生労働省の「外国人技能実習制度について」(令和6年4月15日改訂版)によると、2023年末の技能実習生数は40万4,556人で、前年より8万人ほど増えています。

 

国籍の内訳を見ると、最も多いのはベトナム人の20万3,184人で、全体の50.2%を占めています。次いで、インドネシア人が7万4,387人で18.4%を占め、フィリピン人が3万5,932人で8.9%を占めているという結果です。

参考:法務省・厚生労働省「外国人技能実習制度について」(令和6年4月15日改訂版)

なぜ?技能実習生受入れ制度の廃止をめぐる意見・経緯

2023年4月28日、外国人労働者のあり方を議論する政府の有識者会議で、技能実習生受入れ制度の廃止に向けた中間報告書をまとめました。今後は人材の確保と育成を目的とした、新たな制度を創設するとしています。

以下の項目では、有識者会議の意見や、廃止の方向性に至った経緯を紹介します。

技能実習制度のあり方に対する意見

技能実習制度のあり方に対する有識者会議の意見では、おもに以下がポイントとなります。

・農業、水産加工、建設業、縫製業など、国内の深刻な人手不足の解消に向けて、
 特定技能制度に
取り込む方法も含め、受け入れ方策を考える

・技能実習制度の見直しにともない、特定技能制度やほかの制度に対する見直しも考える

・外国人材の定住化をはじめ、子育てや介護、年金など、今後の暮らしも踏まえて検討する

・現状は各都道府県の最低賃金に合わせた賃金を、全国で統一するための仕組みを検討すべき

参考:技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議「中間報告書」(令和5年5月11日)

 

技能実習制度に代わる新制度では、上記の意見なども反映され、外国人労働者と日本国内の産業の双方にとって、より有益なものへ変わることが期待されます。

技能実習制度廃止の方向性に至った経緯

技能実習制度が廃止の方向性に舵を切った経緯は、本来の制度の目的と実態がかけ離れていることが、さまざまな問題にも繋がっているためです。

先述のとおり技能実習制度の目的は、外国人に技能移転のための実習を施し、母国で活躍できる人材を育成することです。しかし、国際貢献の目的があるにもかかわらず、国内で不足する人材を確保し、企業が労働力を補うことが目的になっているのが実態といえます。

また、本来であれば技能移転を目的に来日した技能実習生が、労働力として違法な労働環境に置かれている実情もあります。実習実施者である受入れ企業のおもな違反内容は、以下のとおりです。

・違法な時間外労働など労働時間関係
・安全措置が講じられていない機械を使用させていたなど安全基準関係
・賃金不払残業など割増賃金の支払関係

参考:厚生労働省「外国人技能実習生の実習実施機関に対する監督指導、送検の状況(平成26年)」

 

アメリカの人権白書では、技能実習制度が外国人の人権を侵害しているという内容が、2010年から毎年のように公表されています。また、OECD(経済協力開発機構)では、人権に関する議論が活発化していることもあり、外国人の人権を守る動きが大きく進んでいます。

アジア、世界では、「特定技能」のように一人ひとりの人権が守られ、適切な労働環境で働ける身分の取得や、そのための教育支援がグローバルスタンダードとなっているのです。

技能実習制度を国際貢献のみを制度の根幹として位置付けるのは、現実に則していない部分が大きく、外国人材の確保と育成を実現できる制度として作り直す必要があることから、今回の制度廃止の方向性、および実態に即した発展的な制度創設の方向性が示されたといえます。

技能実習生廃止でどうなる?新制度「育成就労制度」の目的・特徴とは

2024年6月14日、育成就労制度の創設を柱とする改正出入国管理法などが、参議院本会議にて可決・成立しています。以下では、厚生労働省の資料をもとに、育成就労制度の目的や特徴について確認していきましょう。

 

なお、育成就労制度の最新動向については、以下の記事もご覧ください。

 

【最新動向】育成就労制度とは?基本的な考え方や重要なポイントを解説

 

参考:厚生労働省「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」

育成就労制度の目的

育成就労制度では、特定技能1号水準の技能を持つ外国人材の育成、および当該分野における人材の確保を目的としています。特定技能1号とは、人材確保が困難な12の特定産業分野において、相当程度の知識や経験を持つ外国人向けの在留資格です。

 

特定技能1号は在留期間の上限が5年ですが、熟練した技術を持つ外国人向けの特定技能2号は在留期間の制限がありません。企業としては、育成就労制度から移行した特定技能外国人を継続的に雇用することで、中長期的に優秀な人材を確保できる利点があります。

 

なお、企業は特定技能1号の外国人材を、試験ルート、もしくは技能実習生からの移行によって受け入れることも可能です。在留資格「特定技能」の種類や対象分野について、以下の記事で詳しく解説しています。

 

在留資格「特定技能」とは?種類や対象分野、技能実習との違いなどをわかりやすく解説

育成就労制度の特徴

前述のとおり、育成就労制度は特定技能1号水準の技能を持つ外国人の育成を図ることが目的で、育成就労の期間は原則3年以内とされています。

 

また、育成就労制度から特定技能1号へ移行するうえで、受け入れ対象分野は特定産業分野と原則的に一致している必要があります。12の特定産業分野は、以下のとおりです。

 

・介護

・外食業

・宿泊

・飲食料品製造業

・自動車整備

・航空

・農業

・ビルクリーニング

・素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業

・建設

・造船・舶用工業

・漁業

 

参考:出入国在留管理庁「分野別情報」

 

なお、2024年3月29日、特定技能制度における受け入れ分野の追加が閣議決定しています。これにより、「自動車運送業」、「鉄道」、「林業」、「木材産業」が新たに追加される見通しです。

 

また、育成就労制度では、一定の要件を満たす場合は外国人材の転職が可能となる予定です。そのため、企業においては外国人材の定着率をアップさせるための施策が重要となるでしょう。

 

参考:出入国在留管理庁「特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)」

育成就労制度の関係機関の在り方

育成就労制度における関係機関の在り方についても確認しておきましょう。育成就労制度では、技能実習制度の監理団体に代わる「監理支援機関」の許可要件として、外部監査人の設置が必要になる見通しです。

 

また、技能実習制度で技能実習生の保護や制度推進の役割を持つ「外国人技能実習機構」に代わって、「外国人育成就労機構」が設立される予定となっています。

技能実習生受入れ制度の廃止・新制度はいつから?

技能実習制度の廃止や、新制度である育成就労制度の創設にかかわる改正出入国管理法などの採決について、2024年6月14日に参議院本会議にて可決・成立していることは前述のとおりです。

 

厚生労働省の資料によると、「公布の日から原則3年以内に施行」とあるため、法律が公布されて3年以内に、新制度が運用される見通しといえるでしょう。

 

参考:厚生労働省「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」

技能実習生受入れ制度の廃止による影響

ここからは、技能実習生受入れ制度廃止された場合に与える影響について、4つの視点で解説します。

在留外国人に対する影響

技能実習制度が廃止され、新たな制度へ代わることに対して外国人からは期待の声も上がっています。現状は、技能実習生の労働に見合わない低報酬が支払われたり、仕事に慣れたタイミングで在留期間が終わったりすることがあるためです。

母国の賃金より日本の賃金のほうが高いことから、高収入を目的に技能実習生受入れ制度で来日しているケースもあります。しかし、企業側の労働基準法違反などにより適切な待遇が受けられず、技能実習生が失踪している事例もあるため、新制度に代わることで労働環境の改善が見込まれます。

企業に対する影響

企業は、新制度への移行によって外国人の長期雇用を実現できたり、日本語能力を備えた人材を確保しやすくなったりするなどのメリットがあります。

長期雇用という点で見ると、現行の技能実習制度で受け入れられる期間は最大5年で、それ以上在留させるには特定技能1号への移行などが必要です。ただし、移行するには技能実習の職種・作業内容や、特定技能1号の業務との高い関連性が必要など、厳しい要件が設定されています。

また、新制度では、技能実習の87職種と特定技能の12分野の数字を一致させる方針が示されているため、在留資格を円滑に移行できる見込みです。

新制度への期待が寄せられる一方で、不安の声を上げる企業もあります。例えば、現行制度では原則認められていない「転職」が、新制度では制限緩和される見通しです。そのため、自社で受け入れた外国人が別の会社へ流出する可能性もあります。

企業によっては、外国人の渡航費用や日本語講習費用などを負担しており、ある程度の期間在籍してもらわなければ、受け入れに要したコストを回収できないおそれがあるでしょう。

なお、厚生労働省の資料によると、育成就労制度の創設等の改正法に関連して、外国人に不法就労活動をさせた場合に罪に問われる「不法就労助長罪」が厳罰化される予定です。

 

現行では「拘禁刑3年以下または罰金300万円以下」となっていますが、厳罰化されると「拘禁刑5年以下または罰金500万円以下」になる見通しです。不法就労助長罪は、併科となるケースもあります。

 

不法就労助長罪の詳細について、以下の記事でも解説しています。

 

不法就労助長罪とは?罰則や該当するケース、企業が知っておきたいポイントを解説

 

参考:厚生労働省「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」

支援団体に対する影響

技能実習生の保護や支援にあたる団体からは、新制度への移行によって受入れ企業からの人権侵害やパワハラなどの問題を緩和する可能性に、期待の声が上がっています。支援団体とは、違法な労働環境に置かれている技能実習生から相談を受けるほか、帰国が難しい外国人の住居の確保や保護、労使交渉などを行う非営利の団体のことです。

先述のとおり、転職制限が緩和されることによって、人材流出の懸念を持っている企業もいます。しかし、外国人が悪質な労働環境から移れるようになるメリットもあるため、支援団体としては制度変更に対してポジティブにとらえているのです。

監理団体に対する影響

技能実習生の受け入れ時、多くのケースで「団体監理型」と呼ばれる方式が採用されています。これは、非営利である監理団体を仲介して、技能実習生を受け入れる方式です。監理団体には、技能実習生を受け入れた企業に対する監査・指導の役割もあります。

しかし、適切な監査・指導を怠り、受入れ企業に対するサポートが不十分な例も報告されているのが現状です。新制度の創設で、人権侵害などの防止・是正を実施していない不適切な監理団体は、適正化もしくは排除される可能性があります。

技能実習制度が廃止!企業が今後取るべき対策とは

ここからは、技能実習制度が廃止されることを踏まえて、労働力の確保が課題となっていく企業が今後取るべき対策について紹介します。

別の制度で外国人材を受け入れる

技能実習生制度以外に、別の制度を活用して外国人材を受け入れる方法があります。例えば、外国人インターンシップ制度を利用すれば、優秀な外国人留学生などを受け入れられます。

 

しかしながら、インターンシップ制度での即戦力人材の確保は難しいでしょう。この制度は、将来的に正社員採用したい人材を探したり、自社とのミスマッチを防止したりするための制度といえます。

 

一定レベル以上のスキル・知識を備えた外国人材を確保したいなら、特定技能制度による外国人の受け入れを検討してみるのがおすすめです。

 

自社の事業が「介護」「外食」「宿泊」などの特定産業分野に該当すれば、優秀な外国人労働者を雇用できる可能性があります。ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)なら人材紹介会社、登録支援機関として、特定技能外国人のスムーズな受け入れに向けたサポートをさせていただけます。

 

オノデラユーザーランの取り組みについて気になる方は、ぜひ以下の記事もチェックしてみてください。

 

ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)はどんな会社?

人材派遣サービスを活用する

派遣会社の人材派遣サービスを活用して、人材を確保するのも手です。ただし、近年は人材派遣会社自体の人手が不足している傾向にあり、自社の事業によっては求める人材を確保できない可能性もあります。

また、派遣社員によっては、派遣期間が決まっていることで帰属意識が薄いケースや、多くの育成費用がかかるケースがあることに留意が必要です。人材派遣サービスを利用する前に、企業の人的資産を増やす手段として、派遣の雇用形態で問題がないかをしっかりと検討しておきましょう。

まとめ

技能実習制度が廃止される代わりに、特定技能外国人1号水準の人材を育成・確保するための「育成就労制度」が新設される見通しとなっています。今後の労働力の確保が課題となる企業においては、自社の事業が特定産業分野に該当することを確認したうえで、特定技能外国人の受け入れを検討するのもよいでしょう。

 

ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、事業に適した特定技能外国人の紹介はもちろん、登録支援機関として特定技能外国人を受け入れる際のさまざまなサポートが可能です。入国後も生活支援や定期的な面談を実施し、若く、優秀な外国人材が定着しやすいように、ワンストップでのサービスを提供いたします。

優秀な外国人材を獲得したいという企業の採用担当の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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