その他
最低賃金制度に関する正しい知識を持たずに労働者を雇用してしまうと、法律違反に繋がるだけでなく、企業の評判や採用力にも悪影響をおよぼしかねません。ただ、外国人労働者の雇用を検討する企業の採用担当者のなかには「最低賃金のルールは外国人にも適用されるのか?」などの疑問をお持ちの方もいるでしょう。
そこで本記事では、日本の最低賃金制度の基本や外国人労働者への適用、賃金に関するトラブル防止策について詳しく解説します。
目次
最低賃金制度の基本と外国人への適用
まずは最低賃金制度の基本を押さえつつ、外国人労働者への適用について確認していきましょう。
日本の最低賃金制度とは?
最低賃金制度は、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。仮に最低賃金額より低い賃金を労働者と使用者の双方の合意の上で定めたとしても、それは法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
・地域別最低賃金
最低賃金額は生活需要を満たす金額を基準としていますが、生活に必要な金額はその地域の物価などによっても異なります。そのため、地域別最低賃金は全国一律ではなく、都道府県ごとに47の最低賃金額が定められています。
日本ではすべての労働者(アルバイト・パートを含む)が対象となり、原則として、地域別最低賃金を下回る給与で働かせることはできません。
・特定(産業別)最低賃金
一部の産業では、労働条件や業界の特性、地域経済などを考慮し、「特定(産業別)最低賃金」が設定されている場合があります。
特定(産業別)最低賃金は、一定以上の知識や技術が求められる産業に対して設定されるものです。具体的には、以下のような産業が挙げられます(2025年1月31日現在)。
- ・鉄鋼(北海道、青森県、宮城県、茨城県、群馬県 ほか)
- ・一般機械(山形県、栃木県、群馬県、滋賀県、島根県 ほか)
- ・電気機械(北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県 ほか)
- ・自動車小売(岩手県、宮城県、秋田県、福島県、埼玉県 ほか)
なお、地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の両方が適用対象となる場合は、高い方の最低賃金額が適用されます。
外国人も最低賃金制度の適用対象
最低賃金制度は日本で働くすべての労働者が対象で、国籍に関係なく適用されます。そのため、外国人労働者を最低賃金より低い給与で働かせることはできません。
また、派遣労働者や期間工など就労形態を問わず適用されるため、厚生労働省はこれらの外国人労働者にも最低賃金法を適用するよう企業などに呼びかけています。
参考:厚生労働省「外国人を派遣労働者・期間工などで雇用する事業主の皆様へ」
仮に、最低賃金を下回る給与で雇用した場合は法律違反となり、雇用主は罰金のペナルティを受ける対象となります。それだけでなく、適正な給与を支払わない企業として社会的な信用を失い、今後は優秀な人材が集まりにくくなることも考えられるでしょう。
技能実習生も最低賃金制度の適用対象
最低賃金法は、技能実習制度における技能実習生にも適用されます。技能実習生の給与相場や給与設定の注意点は、以下の記事でも詳しく解説しています。
技能実習生の給与相場は?賃金を支払う際の注意点についても解説
なお、技能実習制度は2024年の関連法改正を受け、新たな制度「育成就労制度」に移行する見込みです。育成就労制度については以下の関連記事でも紹介しているので併せてご確認ください。
【最新動向】育成就労制度とは?基本的な考え方や重要なポイントを解説
外国人労働者の賃金の実態
実際に、外国人労働者にはどの程度の賃金が支払われているのでしょうか。現在の地域別最低賃金とともに、外国人労働者の賃金の実態を紹介します。
地域別最低賃金額
まずは都道府県別の最低賃金を確認しましょう。以下に、厚生労働省が発表している地域別最低賃金全国一覧から引用します。
都道府県 |
最低賃金時間額 |
発効年月日 |
北海道 |
||
北海道 |
1,010円 |
令和6.10.01 |
東北 |
||
青森県 |
953円 |
令和6.10.05 |
岩手県 |
952円 |
令和6.10.27 |
宮城県 |
973円 |
令和6.10.01 |
秋田県 |
951円 |
令和6.10.01 |
山形県 |
955円 |
令和6.10.19 |
福島県 |
955円 |
令和6.10.05 |
関東 |
||
東京都 |
1,163円 |
令和6.10.01 |
茨城県 |
1,005円 |
令和6.10.01 |
栃木県 |
1,004円 |
令和6.10.01 |
群馬県 |
985円 |
令和6.10.04 |
埼玉県 |
1,078円 |
令和6.10.01 |
千葉県 |
1,076円 |
令和6.10.01 |
神奈川県 |
1,162円 |
令和6.10.01 |
中部 |
||
新潟県 |
985円 |
令和6.10.01 |
富山県 |
998円 |
令和6.10.01 |
石川県 |
984円 |
令和6.10.05 |
福井県 |
984円 |
令和6.10.05 |
山梨県 |
988円 |
令和6.10.01 |
長野県 |
998円 |
令和6.10.01 |
岐阜県 |
1,001円 |
令和6.10.01 |
静岡県 |
1,034円 |
令和6.10.01 |
愛知県 |
1,077円 |
令和6.10.01 |
近畿 |
||
京都府 |
1,058円 |
令和6.10.01 |
大阪府 |
1,114円 |
令和6.10.01 |
三重県 |
1,023円 |
令和6.10.01 |
滋賀県 |
1,017円 |
令和6.10.01 |
兵庫県 |
1,052円 |
令和6.10.01 |
奈良県 |
986円 |
令和6.10.01 |
和歌山県 |
980円 |
令和6.10.01 |
中国 |
||
鳥取県 |
957円 |
令和6.10.05 |
島根県 |
962円 |
令和6.10.12 |
岡山県 |
982円 |
令和6.10.02 |
広島県 |
1,020円 |
令和6.10.01 |
山口県 |
979円 |
令和6.10.01 |
四国 |
||
徳島県 |
980円 |
令和6.11.01 |
香川県 |
970円 |
令和6.10.02 |
愛媛県 |
956円 |
令和6.10.13 |
高知県 |
952円 |
令和6.10.09 |
九州・沖縄 |
||
福岡県 |
992円 |
令和6.10.05 |
佐賀県 |
956円 |
令和6.10.17 |
長崎県 |
953円 |
令和6.10.12 |
大分県 |
954円 |
令和6.10.05 |
熊本県 |
952円 |
令和6.10.05 |
宮崎県 |
952円 |
令和6.10.05 |
鹿児島県 |
953円 |
令和6.10.05 |
沖縄県 |
952円 |
令和6.10.09 |
※2025年1月31日現在
地域別最低賃金は一般的に、毎年10月頃に改定されます。雇用する側は常に最新の情報を確認し、適正な給与を支払うことが重要です。
在留資格ごとの賃金(月給)
厚生労働省の資料を一部引用し、外国人労働者の実際の賃金をおもな在留資格ごとに紹介します。
在留資格区分 |
賃金 |
年齢 |
勤続年数 |
外国人労働者計 |
23万2,600円 |
33.0歳 |
3.2年 |
専門的・技術的分野(特定技能を除く) |
29万6,700円 |
31.8歳 |
3.0年 |
特定技能 |
19万8,000円 |
28.9歳 |
2.4年 |
身分に基づくもの |
26万4,800円 |
44.7歳 |
5.7年 |
技能実習 |
18万1,700円 |
26.2歳 |
1.7年 |
その他(特定活動及び留学以外の資格外活動) |
23万1,300円 |
30.8歳 |
2.5年 |
参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
なお、在留資格とその種類については以下の記事で詳しく解説しています。
在留資格とは?全29種類の特徴・取得方法や外国人雇用で気を付けたいポイントを解説
最低賃金は時給で定められているため、月給で支払っている場合は月の労働時間で割った金額が最低賃金を下回っていないか確認しましょう。月給が一般的な水準以上でも、実際の労働時間が長いと最低賃金を下回る場合があります。
短時間労働者の賃金(時給)
次に、厚生労働省の資料を一部引用し、外国人短時間労働者の実際の賃金を、おもな在留資格ごとに一覧で紹介します。
在留資格区分 |
1時間当たり賃金 |
年齢 |
勤続年数 |
実労働日数 |
1日当たり所定内実労働時間数 |
外国人労働者計 |
1,066円 |
29.1歳 |
1.7年 |
13.8日 |
6.3時間 |
専門的・技術的分野(特定技能を除く) |
1,882円 |
31.9歳 |
2.5年 |
17.6日 |
5.5時間 |
特定技能 |
– |
– |
– |
– |
– |
身分に基づくもの |
1,121円 |
44.3歳 |
3.5年 |
15.2日 |
6.0時間 |
技能実習 |
977円 |
25.5歳 |
1.3年 |
19.4日 |
7.3時間 |
留学(資格外活動) |
1,024円 |
24.3歳 |
1.2年 |
12.8日 |
6.3時間 |
その他(特定活動及び留学以外の資格外活動) |
1,033円 |
29.5歳 |
1.0年 |
15.2日 |
6.4時間 |
参考:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
なお、上記の賃金は令和元年の調査結果を引用したものです。その後の経済状況変化に応じて、賃金相場も変動している可能性がある点にご注意ください。
外国人労働者の雇用時は最低賃金以外にも注意
外国人労働者の雇用時は、最低賃金を守るだけでなく、以下のポイントにも注意が必要です。
まず、特定技能外国人を雇用する場合は、日本人と同等以上の給与水準が要求されることに注意しましょう。最低賃金をクリアしていても、給与額が低すぎると特定技能外国人の在留資格が取り消しになる可能性があります。
参考:e-Gov法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」
また、「同一労働同一賃金」は外国人労働者にも適用されます。単なる立場の差や国籍で待遇差を設けてはならず、職務内容が違うことが明確である場合のみ、差を設けるのが妥当となることに注意しましょう。
外国人労働者の賃金に関する不満防止のポイント
たとえ最低賃金を満たしていても、外国人労働者との間で賃金に関するトラブルになることはありえます。ここでは、外国人労働者が不満に感じがちな点に注目し、トラブル防止のためのポイントを紹介します。
天引きシステムに関する説明を行う
外国人労働者に給与を支払う場合も、所得税の源泉徴収と住民税の特別徴収が必要です。また、常時雇用の場合は社会保険の加入が必須で、パートなどでも加入対象となることがあります。
外国人労働者は、日本の給与システムに不慣れだったり、控除の仕組みがない国の出身だったりすることもあり、給与から何が引かれるか理解していないケースがあります。この場合、手取り額が想定より低いと感じ、不満やトラブルのもとになることが考えられるでしょう。そのため、給与から何が引かれているのか、外国人労働者に対してあらかじめ丁寧に説明することが重要です。
福利厚生を活用する
天引きに関する説明を十分にしたとしても、実質的に使えるお金が少ないと、外国人労働者の不満を解消しきれないケースも考えられます。この場合、福利厚生を活用するなどして、外国人労働者の可処分所得を増やすのも一つの手です。
例えば、住宅手当は給与所得として扱われるため課税対象となりますが、代わりに社宅を提供して一部を家賃として徴収したほうが、外国人労働者の可処分所得が増えるかもしれません。このような施策は、給与に関する不満を解消して外国人労働者の定着率を高めるとともに、優秀な人材から就業先として選ばれることにも繋がるでしょう。
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特定技能における登録支援機関とは?支援委託をおすすめする理由と選び方
まとめ
最低賃金は立場や国籍に関係なく適用される制度で、外国人労働者も対象です。雇用する側は、制度について理解しておくのはもちろん、納得して働いてもらうための説明など、外国人労働者への配慮も併せて検討するとよいでしょう。
ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)は、OUR BLOOMING ACADEMY(自社アカデミー)で育成した特定技能外国人をご紹介しています。外国人労働者の雇用に不慣れな施設・企業様でも安心のサポートを行っているので、特定技能外国人の雇用を検討する際はぜひお問い合わせください。
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