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制度・雇用契約

技能実習生の給与相場は?賃金を支払う際の注意点についても解説

2023.09.29

外国人技能実習制度は、外国人に日本の技術を教え、それを母国の経済発展に役立てることを目的とした「国際貢献」のための制度です。技能実習生の受け入れを検討している企業の方のなかには、「どのくらい給与を支払うべきなのか」「相場を知りたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、技能実習生へ支払う給与の相場や、給与を支払う際のポイント、最低賃金に設定した場合の注意点などを紹介します。

技能実習生に支払う給与の相場とは?

まずは、技能実習生に支払う給与の相場について見ていきましょう。厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、外国人労働者における在留資格区分別の平均給与は以下のとおりです。

参照:厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査

 

上記の表から、技能実習生の平均給与は17万7,800円となっており、ほかの在留資格区分と比べると低めであることがわかります。同資料において、技能実習生と同年代の25~29歳の日本人の平均給与は25万1,200円となっているため、日本人と比較しても大きく差が開いているといえるでしょう。

技能実習生へ給与を支払うときの3つのポイント

ここでは、技能実習生へ給与を支払うときのポイントを3つ解説します。

最低賃金が適用される

技能実習生に対しても、受入れ企業との間で雇用関係が認定されるため、日本人労働者の給与と同様に原則として「最低賃金以上の金額」を支払わなければなりません。

最低賃金は「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類に分かれます。

地域別最低賃金は、都道府県ごとに設定されている最低賃金を指します。対して特定(産業別)最低賃金は、特定の産業別かつ「基幹労働者」を対象に設定されている最低賃金のことです。基幹労働者とは、その産業特有の業務、もしくは主要な業務に従事する労働者を指します。

技能実習生の賃金を設定する際は、上記の最低賃金がどちらも適用される場合、より高く設定されているほうを基準にする必要があります。最低賃金を下回ってしまうと、技能実習生の受け入れ停止となるおそれもあるため注意しましょう。

同一労働同一賃金を守る

「同一労働同一賃金」とは、同じ企業のなかで同じ仕事に従事する労働者に対し、正規雇用・非正規雇用など雇用形態による賃金格差をなくすために設けられたルールです。

技能実習生は、有期雇用労働者の区分で従事するため、非正規労働者に該当します。ただ、「実習生だから」「非正規だから」などを理由に賃金を低く設定することは避けるべきでしょう。同じ職場で同じ業務に取り組む日本人労働者・正規雇用労働者がいる場合は、前述のルールに則り、必ず同等以上の賃金にすることが重要です。

同一労働同一賃金のルールには違反による罰則はありませんが、雇用形態による賃金格差に対して明確な理由が説明できない場合、損害賠償を請求されるおそれがあります。

割増賃金を支払う

時間外勤務や休日勤務を行った技能実習生に対しては、「割増賃金」の支払いが必要です。

割増賃金は、時間外労働や休日勤務、深夜労働などをした労働者に対して、基礎時給に加えて一定の割合で増額して支払う賃金を指します。割増賃金の割合は、どのような労働を行ったかによって変動します。

以下は、労働状況ごとの割増賃金の割合です。

 

・時間外労働をした場合:25%以上

・深夜労働をした場合(午後10時~午前5時の労働):25%以上

・休日労働をした場合:35%以上

例えば、時間外労働で発生する賃金を低く設定し、技能実習生と合意のうえで労働契約を結んでいても、賃金が上記の割合に基づく算出額を下回る場合は、労働基準法違反となります。

技能実習生の給与を最低賃金に設定する際の注意点

技能実習生の給与を最低賃金に設定すること自体は法的に問題ありませんが、最低賃金に設定することでデメリットが生じるおそれがあります。

ここでは、主な注意点を解説します。

技能実習生の失踪に繋がる可能性がある

最低賃金以上の給与を支払っていれば、法律に抵触することはありません。ただし、仕事の内容や環境次第では、最低賃金では見合わず、不満を覚えるケースはあるでしょう。

不満を覚えたからといってすぐに失踪に繋がるわけではありませんが、トラブルなどさまざまな要因が重なれば失踪に繋がる可能性もあります。

なお、失踪者を出した企業は実習生の新規受け入れや申請手続きが停止となることもあります。最低賃金を設定する場合は、仕事内容や相場などを考慮したうえで慎重に設定しましょう。

将来的に他社へ転職するおそれがある

技能実習生の職種や作業内容によっては、制度の定める3年もしくは5年の技能実習を修めたあと、ほかの在留資格である「特定技能」への移行が可能になります。もし最低賃金で雇用を続けていた場合、有能な人材として育て上げた技能実習生が特定技能に移行後、より高い給与を設定している企業に転職してしまう可能性もゼロではありません。

特定技能の在留資格は、1号の場合は在留期間が最大で5年、2号の場合は在留期間の上限がありません。特定技能に移行し長期的な就労が見込める人材は、技能実習によって業務に関する技能・知識も十分に備えた人材です。このような人材が自社から離れてしまうのは、大きな痛手となり得るでしょう。

技能実習生の給与を適切に設定するには?

技能実習生の給与を適切に設定するためには、企業と技能実習生の双方が納得することが大切です。しかし双方が納得を得られる方法は、現在の給与額がすべてではありません。

技能実習生の実習期間は3~5年と限られているものの、そのなかでも効果的に昇給機会を設けることで、実習や作業に対するモチベーションの維持、向上に繋げることが可能です。また、賞与の支給も効果的な手段です。技能実習生に対する賞与支給は法律上の決まりはないものの、活用することでモチベーション維持などが期待できます。

給与以外にも!技能実習生の受け入れで知っておきたいこと

給与以外で、技能実習生を受け入れる際に知っておくべき重要な3つのポイントについて解説します。

各種保険の加入義務がある

技能実習生を受け入れる際は、日本人労働者と同様に社会保険や労働保険の加入義務が発生する点に留意すべきです。

具体例として、健康保険における技能実習生への対応を見ていきましょう。

技能実習生が入国したあとは、原則2ヵ月の講習を実施します。講習期間中はまだ企業とは雇用関係にないため、技能実習生に国民健康保険に加入してもらい、保険料も本人の負担となります。ただし、講習を終えてからは企業の健康保険へ切り替えとなり、保険料も労使折半となります。

なお、技能実習生を対象とする、各種公的保険の補完を目的とした「救援者費用」や「外国人技能実習生総合保険」などもあるため、状況に応じて活用するとよいでしょう。

36協定が適用される

技能実習生に対しても、法定労働時間を超えて従事させる場合などは、労働基準法の第36条で定められている労使協定(36協定)が適用されます。36協定における時間外労働の上限は、原則として月45時間、年360時間と規定されている点に留意しましょう。

また、労働基準法の改正後、36協定で規定されている時間外労働において罰則付きの上限が設けられています。そのため、上限を超えて労働をさせないようこまめな勤怠管理を実施するとともに、法令違反がないかセルフチェックを行うことが大切です。

また、これまでは5年間の猶予期間が設けられていた建設業など一部の業種についても、2024年4月以降は時間外労働の上限規制が適用されるため注意しましょう。

助成金制度がある

技能実習生を受け入れる際、一定の条件を満たしていれば助成金制度を活用できるケースもあります。

例えば、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」は、技能実習生をはじめとした外国人雇用を行っている企業が活用できる制度です。この制度では、労働条件や解雇などのトラブルを防ぐとともに、外国人労働者が働きやすい労働環境を整えるための経費の一部を補うため、助成金が支払われます。

そのほか、企業側の給与支払いの負担軽減などに活用できる「雇用調整助成金」においても、技能実習生が支給対象に含まれます。

技能実習生の現行制度は廃止される見込み

今後、現行の外国人技能実習制度は廃止される見込みとなっています。

2023(令和5)年4月28日には、政府の有識者会議で外国人技能実習制度の廃止について盛り込んだ中間報告書がまとめられています。この中間報告書では、人材の育成による国際貢献を目的に掲げている現行の制度を廃止したうえで、人材の確保・育成を目的とした代替制度の創設を検討するとしています。

代替制度では、別の在留資格である「特定技能制度」と対象職種や分野の数を一致させるなど、特定技能への円滑な移行が可能となる仕組みとして設計される見込みです。

最終報告のとりまとめは、令和5年秋予定となっています。もし現在技能実習生の受け入れを検討している場合は、制度の動向を注視しておくことが大切です。

参考:出入国在留管理庁「中間報告書(概要)」

まとめ

技能実習生の給与の相場は、ほかの在留資格を持つ外国人労働者と比べると低い傾向にあります。そのため、最低賃金で給与を設定する企業も多くあります。

ただし、最低賃金を基準とする場合は、業務内容や環境なども考慮のうえ、慎重に設定するようにしましょう。また、昇給や賞与の機会を設ける方法も有効です。

なお、現行の外国人技能実習制度は廃止見込となっている点にも留意してください。現在、技能実習生の受け入れによる人材確保を検討している方は、特定技能を持つ外国人材の受け入れも検討してみてはいかがでしょうか。

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外国人材の雇用を検討している採用担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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