その他
近年、日本国内で働く外国人労働者の数が増えています。外国人労働者を受け入れるなかで課題となっているのが、外国の多様な文化や価値観への対応です。
無意識のうちに行った言動がパワーハラスメントやセクシャルハラスメントに該当するケースもあるため、企業では社内教育などの適切なハラスメント対策が不可欠です。
今回は外国人労働者への無意識なハラスメントが起こる理由やハラスメントの事例を解説し、社内で取り組むべきハラスメント対策を紹介します。記事を参考に、日本人労働者と外国人労働者がともに心地良く働ける職場づくりを目指してみてください。
目次
日本で活躍する外国人労働者は年々増加中
厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」によると、日本国内で働く外国人労働者の数は2023年10月末時点で2,048,675人となっています。この数値は、外国人雇用の届出が義務付けられた2007年以降、過去最高値を更新しています。
国籍別に見ると、ベトナム人が518,364人で最も多く、全体の25.3%を占めています。次いで中国(香港・マカオを含む)、フィリピン、ネパールからの労働者数が多くなっており、アジアの各国から多くの方が来ていることがわかります。
〈国籍別外国人労働者の人数と外国人労働者全体に占める割合〉
国籍 |
人数 |
割合 |
ベトナム |
518,364人 |
25.3% |
中国(香港・マカオを含む) |
397,918人 |
19.4% |
フィリピン |
226,846人 |
11.1% |
ネパール |
145,587人 |
7.1% |
ブラジル |
137,132人 |
6.7% |
インドネシア |
121,507人 |
5.9% |
韓国 |
71,454人 |
3.5% |
ミャンマー |
71,188人 |
3.5% |
タイ |
36,543人 |
1.8% |
ペルー |
31,584人 |
1.5% |
G7等 |
83,882人 |
4.1% |
その他 |
206,670人 |
10.1% |
また、外国人労働者を雇用する事業所数は、同時点で318,775所です。こちらも届出が義務化されてから過去最高値を更新しています。
参考:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年10月末時点)
外国人雇用の現状とは?増加している背景や今後の動向、注意点を解説
外国人労働者への無意識なハラスメントが起こる理由とは?
外国人労働者が増加しているなか、外国人労働者に対するハラスメントが問題となっています。特に、当事者本人が気付かないうちにハラスメント行為をしているケースが多く、ハラスメントを防ぐにはハラスメントが発生する原因を知っておくことが大切です。
無意識のハラスメントが起こる理由には、以下の3つが挙げられます。それぞれ内容を見ていきましょう。
・価値観や文化が異なるため
・ハラスメントの定義に厳しいため
・先入観や偏見を持っているため
価値観や文化が異なるため
外国人労働者は人種や国籍によって、育ってきた環境や学んできた内容が異なります。価値観や文化もそれぞれ大きく異なるため、日本人の「あたりまえ」が通用しないケースが多い点には注意が必要です。
例えば、日本では会食でお酌する文化があり、グラスが空になるまえにお酒を追加するのが習慣となっていますが、外国人からはお酒の強要ととらえられる可能性があります。
また、イスラム教を信仰する女性に男性が触れることは宗教上一切禁止されているため、仕事においても男女で接触する機会を極力回避しなければなりません。
ほかにも、以下のようなケースでハラスメントと訴えられる可能性があります。
- ・職務外の仕事を求める
- ・締め切りを守るよう強く指導する
- ・過度な量の仕事をするように言う
あたりまえと思っていたことがハラスメントになってしまう可能性を意識し、日頃から言動に問題がないか注意することが大切です。
ハラスメントの定義に厳しいため
国や地域にもよりますが、海外では「労働者を守る」という意識が日本に比べて進んでいる傾向があります。そのため、職場でのハラスメントの定義やその温度差においても、日本人の感覚とはやや差が見られるかもしれません。
同じ事柄が起こったとき、多くの日本人の感覚では些細な問題や不満でも、外国人労働者にとっては上司や公的機関に助けを求める重大な問題と感じる場合も考えられます。
外国人労働者を雇う際には、互いの価値観の違いをふまえて、慎重にコミュニケーションをとる必要があります。
先入観や偏見を持っているため
日本人労働者のなかには、外国人労働者に対して先入観や偏見を持っている方もいます。ニュース番組やWebサイトの情報を見聞きして先入観を持つようになるケースが多く、実際に以下のようなトラブルも発生しています。
- ・賃貸物件の契約を断る
- ・外国人であることを理由に就職を断られる
- ・同じ仕事をしているのに賃金が日本人よりも低い
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外国人労働者を雇用する場合はレイシャルハラスメントに要注意!
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レイシャルハラスメント(レイハラ)とは、人種(レイシャル)にまつわる差別や嫌がらせのことです。「人種」には国籍・出自・肌の色・宗教的信条など、さまざまな民族的要素が含まれており、以下の3つの定義に当てはまるものがレイハラと呼ばれます。
〈レイシャルハラスメントの定義〉
- ・特定の人種や民族、国籍(外国人やハーフ)を理由に、暴言や侮辱、嫌がらせを行うこと
- ・合理性なく日本人と外国人を分けて業務を進めたり、評価したりすること
- ・上司から部下といった立場から起こるだけでなく、部下から上司、同僚同士などさまざまな関係性のなかで起こる可能性があること
レイハラは価値観の違いや先入観から無意識に起こりやすいため、特に注意が必要です。
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ここでは、レイハラの事例をいくつか紹介します。
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出身国や文化に対する侮辱
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相手の出身国や文化を侮辱することは、国民性や祖国への誇りを否定することと同じです。
外国人のイメージや物珍しさから、何も考えずに思ったことをつい口にしてしまうと、言ったほうに悪意はなくとも相手にとっては侮辱されたと感じることも少なくありません。思い込みや偏見で相手を決めつけず、個人の能力や気質に注目して対応しましょう。
具体的には、以下のようなことが該当します。
- ・世間話のつもりで「○○人は□□ばかり食べているね」と話しかける
- ・単純な感想として「○○人は□□のことばかりを言うんだね」などと発言をする
- ・○○人は気性が荒いと決めつける
- ・○○人はすぐに仕事をさぼると決めつける
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外見や文化的な特徴に対する揶揄
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同じ国籍でも人種や地域によって外見が異なるケースがあります。そもそも他人の外見を揶揄する行為はハラスメントにあたり、国籍に対する印象との違いを口にしてしまう行為もハラスメントに該当します。
具体的には、以下のようなことが該当します。
- ・○○人なのに肌が白いと言う
- ・ハーフに対して、ことあるごとに「純粋の日本人じゃないから」と言う
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外国人に対する不当な待遇
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外国人だけ不当な待遇で雇用することは、労働基準法第3条に違反します。
参考:e-Gov法令検索|労働基準法 第一章 総則 (均等待遇) 第三条
外国人に対する不当な待遇には以下のようなものがあります。
- ・〇〇人という理由だけで時給を下げる
- ・外国人だからと簡単な仕事しか与えない
- ・職場で母国語を話すことを禁止する
- ・日本語能力が不十分という理由で帰国を強いる
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英語の強要
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英語が母国語ではない外国人労働者に英語で話すことを強要することも、レイハラにあたります。外国人なら英語ができるだろう、という考えを改め、英語を強要しないようにしましょう。
外国人への英語の強要には以下のようなものがあります。
- ・外国人という理由だけで英語を使う場面に駆り出す
- ・○○人なのに英語を話せないの?と言う
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社内で取り組むべき外国人労働者へのハラスメント対策
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外国人労働者へのハラスメント対策には、以下の4つの施策が効果的です。ハラスメントによるトラブルを防ぐためにも、積極的に採り入れていきましょう。
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- ・社内教育を実施する
- ・相談窓口を配置する
- ・社内アンケートを実施する
- ・就業規則を整備・周知する
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社内教育を実施する
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価値観や文化の違い、レイハラの事例を周知するためには、従業員への社内教育が必須です。従業員一人ひとりの知識を高めることで、ハラスメントを予防できます。
集合研修やe-ラーニングなど、社内教育の方法は状況に合わせて選択しましょう。研修の際は、ハラスメント研修に詳しい外部機関と連携するとよいでしょう。
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相談窓口を設置する
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外国人労働者およびその方と携わる日本人労働者向けに、社内外に相談窓口を設置します。レイハラだけではなく、パワハラやセクハラなどにも対応できる体制を整えれば、万一トラブルが発生しても冷静に対応できるでしょう。
相談窓口の設置と併せて、ハラスメントが発生した場合の対処について社内で協議しておくと、ハラスメントが発生した場合に迅速に対応できます。
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社内アンケートを実施する
- 日本人労働者・外国人労働者の両方に対し、定期的な社内アンケートを実施します。勤務やコミュニケーションの実態がわかるので、問題の洗い出しや対策立案がしやすくなるでしょう。
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就業規則を整備・周知する
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労働基準法に加えて、自社の就業規則でハラスメントの禁止を明文化することも大切です
明確なルールを設ければ、外国人労働者はもちろん、日本人も働きやすさが向上します。整備した就業規則は誰もがわかるように周知し、内容を適宜見直しましょう。
以下の記事では外国人労働者と共生していくために企業ができることや、コミュニケーションするうえで注意したい点をまとめています。併せてご覧ください。
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オノデラユーザーランをはじめ、登録支援機関のが行う相談や定期面談は、ハラスメント対策にも効果的です。外国人労働者にとって利用しやすい相談先なので、早期に課題を発見でき対応を検討できるでしょう。
特定技能外国人や登録支援機関について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
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まとめ
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外国人労働者を受け入れるなら、外国の多様な文化や価値観と共生していけるよう、社内教育や社内体制の整備が不可欠です。無意識の差別や偏見によりハラスメントが発生しないよう、ハラスメントの事例を知り、適切に対応しましょう。
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