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永住権とは?在留資格「永住者」の許可条件や特例、取り消しについて解説

2024.06.06

「永住権(在留資格「永住者」)」は、外国人が在留期間や就労内容の制限なく、日本に滞在できる権利(在留資格)です。

企業としても「すぐに母国に帰ってしまう」「一部の業務にしか従事させられない」というような悩みを減らせるため、永住権を持つ外国人を雇用したいと考える方は多いでしょう。

今回は、永住権の概要や取得条件、永住権を持つ外国人を採用・雇用する際の注意点などを解説するので、ぜひ参考にしてください。

永住権とは?在留資格「永住者」について

永住権は、在留期間の制限なく、外国人が特定の国に永住できる権利です。日本で「永住権がある」といった場合は、在留資格「永住者」を取得していることを意味します。

日本の在留資格には、就労が認められていないものや、就労内容に制限があるものも存在します。しかし、在留資格「永住者」では、日本の法律の範囲内で制限なく就労が可能です。

参考:出入国在留管理庁|永住許可(入管法第22条)

在留資格について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

在留資格とは?全29種類の特徴・取得方法や外国人雇用で気を付けたいポイントを解説

永住権の取得と「帰化」の違い

永住権(在留資格「永住者」)の取得と混同されやすいのが、「帰化」です。

帰化とは、日本国籍を取得して「日本国民になること」を意味するため、外国人が取得する在留資格制度の対象外となります。

一方、永住権の取得は、あくまでも外国籍・外国人のままで日本に永住することを指します。

以下の記事では、企業の採用担当者向けに外国人の帰化に関する基礎知識を解説しているので、併せて参考にしてください。

帰化とは?外国人が日本に帰化するメリットや条件、許可申請手続きを紹介

永住権を取得するための3つの条件

外国人が永住権(在留資格「永住者」)を取得するためには、出入国管理及び難民認定法第22条第2項に基づき、さまざまな条件を満たさなければなりません。

ここでは、大きく分けて3つの条件の内容を解説します。

参考:e-Gov法令検索|出入国管理及び難民認定法第22条第2項

条件1.素行が善良であること

1つ目の条件は、素行が善良で、法律・法令違反などがないことです。永住権を取得しようとする外国人には、日本の法律・法令を遵守し、日本で暮らす者として社会的に非難されない日常生活を送ることが求められます。

例えば、道路交通法違反や窃盗などの前歴がある場合は、永住許可の審査に影響すると考えられるでしょう。

条件2.独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること

2つ目の条件は、外国人の収入やスキルが、日本で安定して暮らしていけるだけのレベルであることです。

収入レベルは課税証明書や納税証明書で判断され、生活保護を受けている方などは、条件を満たしていないとみなされる可能性があります。また、外国人に扶養する家族がいる場合は、その人数に応じてより多くの収入が必要です。

ただし、収入に関しては世帯単位で考えてもらえるため、配偶者などの収入が十分であれば、本人の収入が少なくても問題ないとされています。

条件3.対象者の永住が日本の利益になると認められること

3つ目の条件は、以下の「ア」から「エ」までの4つのポイントから構成されています。

ア)原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。

 

イ)罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。

 

ウ)現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。

 

エ)公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。

引用:出入国在留管理庁|永住許可に関するガイドライン(令和5年12月1日改訂)

それぞれの内容を噛み砕いて見ていきましょう。

<アについて>

永住権の許可申請は、「日本に永住したい」と思い立ってすぐにできるものではありません。原則として、「永住者」以外の在留資格で、日本に10年以上滞在している必要があります。

さらに、そのうち5年間は「技能実習」と「特定技能1号」を除く就労資格、または居住資格(日本人や永住者の配偶者等、定住者)での滞在でなければなりません。

在留資格「技能実習」と「特定技能」については、以下の記事を参考にしてください。

技能実習と特定技能の7つの違いとは?どちらの制度にすべきか迷ったときの考え方も

特定技能1号・2号の違いは?それぞれの取得方法もわかりやすく解説

 

<イについて>

罰金刑や懲役刑などの前歴、税金の申告漏れ・未納・滞納、社会保険料の未納・滞納、各種届出の遅延などがないことが求められます。

 

<ウについて>

同じ在留資格でも、5年・3年・1年などと在留期間は人によって異なりますが、その在留資格のなかで、最も長い在留期間を与えられている必要があります。

参考:出入国在留管理庁|在留資格一覧表

 

<エについて>

外国人本人が感染症にかかっていない、薬物中毒者でないなど、公衆衛生上の問題がないことが求められます。

永住権の取得条件には特例もある

場合によっては、前章「永住権を取得するための3つの条件」で紹介した条件の一部が免除されることがあります。

ここでは、免除される条件ごとに特例の内容を解説します。

素行と生計に関する条件が不要となる特例

以下のいずれかに該当する外国人は、「独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること」「素行が善良であること」の条件を満たさなくても、永住許可を申請可能です。

  • ◆日本人の配偶者や子ども
  • ◆永住者の配偶者や子ども
  • ◆特別永住者の配偶者や子ども

「永住者」と「特別永住者」には、次のような違いがあります。

永住者と特別永住者の違い

特別永住者とは「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」に定められた、在留資格を持っている外国人のことです。

第2次世界大戦後、台湾や朝鮮半島などが日本の領土ではなくなったことから、日本に移り住んでいた在日台湾人・韓国人・朝鮮人は日本国籍ではなくなりました。しかし、すでに日本で生活基盤を築いていた状況が考慮され、本人とその子孫は、特別永住者として永住が認められた経緯があります。

一般の永住者には在留カードが交付されるものの、特別永住者には交付されません。その代わりに、法的な地位等を証明するものとして「特別永住者証明書」が交付されます。

参考:出入国在留管理庁|特別永住者証明書とは?

10年以上の在留が不要となる特例

外国人が永住権を取得するためには、通常、何らかの在留資格で10年以上日本に滞在している必要があります。

ただし、条件によっては、日本に滞在している期間が短くても永住許可の申請が可能です。おもな具体例は、以下のとおりです。

    • ◆日本人・永住者・特別永住者の配偶者であり、実体をともなう婚姻生活が3年以上継続しており、かつ1年以上継続して日本に滞在している場合
    • ◆日本人・永住者・特別永住者の子どもであり、1年以上継続して日本に滞在している場合
    • ◆在留資格「定住者」を取得しており、5年以上継続して日本に滞在している場合
    • ◆外交・社会・経済・文化などの分野で日本に貢献していると認められており、5年以上継続して日本に滞在している場合

参考:出入国在留管理庁|永住許可に関するガイドライン(令和5年12月1日改訂)

永住権の許可申請のポイント

ここでは、永住許可申請手続き上のポイントとなる4つの項目を紹介します。

参考:出入国在留管理庁|永住許可申請

申請期限

現在の在留資格から「永住者」への変更を希望する外国人は、現在の在留期間の満了日までに永住許可申請の手続きをする必要があります。

また、出生などにより「永住者」の資格取得を希望する外国人は、当該事由が発生してから30日以内が許可申請期限です。

申請者

永住許可は、永住権の取得を希望する外国人本人または法定代理人のほか、以下に該当する方も申請できます。

(1)地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けている次の者で、申請人から依頼を受けたもの

 ・申請人が経営している機関又は雇用されている機関の職員

 ・申請人が研修又は教育を受けている機関の職員

 ・外国人が行う技能、技術又は知識を修得する活動の監理を行う団体

 ・外国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員

(2)地方出入国在留管理局長に届け出た弁護士又は行政書士で、申請人から依頼を受けたもの

(3)申請人本人が16歳未満の場合又は疾病その他の事由により自ら出頭することができない場合には、その親族又は同居者若しくはこれに準ずる者で地方出入国在留管理局長が適当と認めるもの

引用:出入国在留管理庁|永住許可申請

なお、外国人を雇用している企業は、(1)の「申請人が雇用されている機関の職員」に該当するため、本人に代わって申請手続きが可能です。

申請先

申請先は、外国人の居住地を管轄する、地方出入国在留管理官署です。「勤務地の最寄り」など、申請先を自由に選べるわけではないので注意しましょう。

審査期間

出入国在留管理庁のホームページでは、永住許可申請の標準処理期間(審査期間)を4ヵ月と公表しています。

ただし、永住許可申請は、一般的な在留資格の手続きよりも慎重に審査されるのが一般的です。よって、4ヵ月を目安としつつも、審査期間はそれより長くなる可能性があると考えておいたほうがよいでしょう。

永住権を持った外国人を採用・雇用する際の注意点

最後に、企業が永住権(在留資格「永住者」)を持つ外国人を採用・雇用する場合に、注意すべき点を解説します。

在留カードの更新は必要

先述のとおり、永住権を取得すると在留期間に制限がなくなります。そのため、在留期間の満了にともなう在留資格(期間)の更新手続きもありません。

しかし、在留カードの更新は永住者であっても必要です。在留カードの有効期限が切れていると身分証明書として使えなくなるほか、「有効期限内の在留カードを常に携帯する」という義務に違反してしまいます。

在留カードの更新手続きについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。

在留カードはいつ更新するべき?更新手続きの流れや注意点を解説

永住権は取り消しとなる可能性もある

永住許可申請時は取得条件をクリアしていても、そのあとに犯罪に手を染めるなどした場合には、永住権が取り消されるかもしれません。

特に最近では、以下のようなケースで永住権を取り消す方針を国が決定し、話題となっています。

  •  
  • ◆故意に税金や社会保険料の未納・滞納を繰り返した場合
  • ◆通常は資格取り消しまでには至らない、窃盗などの1年以下の懲役・禁錮にあたる罪を繰り返した場合

 

永住権を取り消されるような行為をするのは基本的に外国人本人の責任ですが、企業としても採用する外国人に注意喚起を促すことが大切です。

まとめ

永住権(在留資格「永住者」)を持つ外国人は、在留期間の制限なく日本で暮らせるうえに、日本の法律の範囲内で制限なく就労できます。

外国人が永住権を取得するためには、大きく分けて「素行・生計・日本への利益」に関する条件を満たさなければなりません。ただし、日本人の配偶者や親がいる場合など、状況によっては条件の一部が免除されることもあります。

企業が永住権を持つ外国人を採用する際は、在留カードの更新や永住権の取り消しリスクについても念頭に置いておきましょう。

人材不足にお悩みの方は、特定技能外国人の採用も検討してみてはいかがでしょうか。

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