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インドネシア人の採用・雇用を検討しているのであれば、まずはインドネシアの文化や宗教、生活習慣について理解を深めておくことが大切です。インドネシア人は明るくおおらかで親日的な傾向にあるため、良好な信頼関係を構築できればさまざまな現場で活躍が期待できます。
この記事では、インドネシアの文化や習慣について、宗教や価値観、行動様式、日本との違いなどをわかりやすく解説します。インドネシア人の採用・雇用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次
インドネシア文化を理解するための前提構造
インドネシア文化を理解するためには、まずは前提構造を正しく理解しておくことが大切です。ここでは、インドネシアの国家構造や社会的背景について解説します。
多民族・多言語・多宗教国家という前提
インドネシアは1,300以上の民族と500以上の言語、複数の宗教が共存する多民族・多言語・多宗教国家です。
総人口の約40%を占める最大民族であるジャワ人や、総人口の約15%を占めるスンダ人、マドゥラ人、バタック人など、国内にはさまざまな民族が暮らしており、島ごとに独自の文化や習慣が根付いています。
国内にはジャワ語やスンダ語など500以上の地方言語が存在しますが、インドネシアの公用語は「インドネシア語」で、学校教育やメディア、行政で使用される共通語として全国に浸透しています。
インドネシアは、人口の約87%をイスラム教徒が占める、世界最大規模のイスラム教徒人口を有する国です。行政上、イスラム教、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー教、仏教、儒教が主要な宗教として扱われています。また、宗教とは別に伝統的な信条をもつ人々もいます。行政上は宗教・信条が身分証明書等に記載されますが、憲法は宗教および信条の自由を保障しています。
島嶼国家であることが文化形成に与える影響
インドネシアは17,000以上の島々が存在し、海洋やジャングルによって隔てられてきたことで、数多くの民族がそれぞれの言語や習慣を形成・維持してきました。そんな多民族国家をひとつにまとめるために、インドネシアでは「多様性の中の統一」という国家理念が生まれた背景があります。
数多くの島々から生まれた豊かな多様性とそれを包括する寛容な国民性が、インドネシア文化の最大の特徴といえるでしょう。
「国民性」で一括りにできない理由
インドネシアは圧倒的な多民族・多言語・多宗教国家であり、地域ごとのアイデンティティや文化が極めて強い国です。同じインドネシア人でも出身民族によって気質は大きく異なり、さらに個人差も大きいため、「インドネシア人だから」と一括りにして判断してしまうと、相手を不快にさせたり、トラブルに発展したりする恐れがあります。
インドネシア人と良好な信頼関係を築くためには、どの島・どの文化圏の出身であるかを把握して理解を深め、個々のバックグラウンドを尊重することが重要です。
雇用・職場理解における文化理解の基本姿勢
インドネシア人を雇用する際には、まず宗教と生活習慣を理解することが大切です。インドネシアでは宗教が生活の基盤となっているため、礼拝への配慮や食事のタブーへの理解、断食期間中の配慮などが求められます。
また、コミュニケーションの基本として、インドネシア人は相手の気分を害さないことや目上の人への敬意を重んじる点、人前での叱責を非常に嫌う点についても理解しておきましょう。
宗教が生活規範として根付いている社会構造

インドネシアでは、宗教は信仰にとどまらず、日常行動や価値判断の基準として機能しています。ここでは、インドネシアの宗教構成や日常生活への影響について解説します。
多宗教国家としてのインドネシアの宗教構成
インドネシアは、国民の約87%がイスラム教徒で、世界最大のイスラム国家です。イスラム教、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー教、仏教、儒教の6つの公認宗教があり、国民はいずれか1つを信仰し、身分証明書に記載することが義務付けられています。
イスラム教は、ジャワ島やスマトラ島をはじめ、全国的に多数派となっている宗教です。次いでキリスト教が国民の約10%(プロテスタントが約7%、カトリックが約3%)となっており、特にパプア州や北スラウェシ州、東ヌサ・テンガラ州で人口の大部分を占めています。
また、ヒンドゥー教はバリ島で圧倒的な信仰を集めており、仏教や儒教は主に中華系の人々によって信仰されています。
宗教と生活ルールが結びついている背景
インドネシアでは国民に宗教信仰が義務付けられており、特にイスラム教徒が多数を占めるため、食事や礼拝、祝祭日などの日常生活にイスラム教の影響が見られます※1。例えば、イスラム教では豚肉やアルコールは禁忌とされており、家庭での食生活やレストラン選び、食品流通においてもハラール対応が重視されており、商品分野によってはハラール認証が制度上求められています。
『頭は神聖なものとして扱われる』『左手の使用を避ける』といった考え方なども、他者への敬意を示すマナーとして社会生活のルールに結びついています。
※1:ただし、宗教や地域、個人によって実践のあり方は異なります。
食事・服装・礼拝・行事への影響
インドネシアの食文化は、イスラム教の教えで許されたものである「ハラール」が基本です。豚肉やアルコール、それらのエキスや油が含まれる調味料の摂取が禁じられており、豚肉やアルコールを調理した器具を介している場合も口にできません。
服装については、肌の露出を最小限に抑えることが基本マナーです。ノースリーブやショートパンツなどの過度な露出は避け、襟付きのシャツや長袖の着用が好まれます。イスラム教徒の女性の中にはヒジャブを着用する人も多くいますが、着用の有無は地域や個人によって異なります。なお、アチェ州のように、イスラム教徒を対象とした服装規定が設けられている地域もあります。
イスラム教徒は一般に1日5回の礼拝を行います。企業や学校、商業施設などには「ムショラ」と呼ばれる礼拝室が完備されている場合が多いです。
イスラム教の暦に基づく宗教行事には、代表的なものとして「ラマダン(断食月)」があります。夜明け前から日没まで飲食を控える期間です。日中の業務パフォーマンスが落ちることを考慮して、本人の希望や業務内容に応じて、休憩の取り方や業務負荷について相談することが望まれます。
宗教配慮が「特別対応」ではない理由
インドネシアにおいて宗教配慮が特別対応ではないのは、宗教が個人のアイデンティティや日常生活と深く結びついた「社会の前提」であるからです。国家の理念や法制度、生活ルールのベースなどにも宗教の教えが組み込まれているため、宗教配慮は日本人にとっての「特別対応」とは異なり、社会を円滑に回すための当たり前の日常となっています。
時間感覚と行動ペースに表れる文化的特徴

インドネシア人の時間感覚の特徴や、時間に対する考え方が行動や仕事の進め方に与える影響、日本人との違いについて、それぞれ解説します。
ジャム・カレット(ゴムの時間)の考え方
インドネシアには、「ジャム・カレット」という時間感覚を表す言葉があり、直訳すると「ゴム時間」という意味をもちます。時間やスケジュールはゴムのように伸び縮みして柔軟に変わるという意味で、おおらかな時間の流れを大切にする、インドネシアならではの時間感覚を表しています。
インドネシアでは深刻な渋滞や交通機関の遅延が常態化しているため、不可抗力の事情に対して「仕方がない」と受け流す考え方が一般的です。遅刻に対する寛容さもあり、遅れた側も過度に気にせず、迎える側も怒らずにおおらかに受入れる風潮があります。仕事においても、「時間や期限の認識に差が生じる場合があるため、職場ではルールを明確に共有することが重要です。
状況や人間関係を優先する行動原理
インドネシアでは、対立を避ける「和」の精神を大切にする文化があります。例えば、時間を厳密に守ることよりも人間関係を重視し、目の前の人との対話やコミュニケーションを優先する傾向にあります。約束の時間に遅れるのは意図的な怠慢ではなく、人との会話や目の前のできごとなど、その場の状況に対して柔軟に優先した結果である場合が多いです。
日本の時間管理文化との認識差
日本人は「時間は絶対的に守るもの」「信用に関わる問題」と考えるのに対し、インドネシアでは「時間は柔軟に変化するもの」と捉えるという文化の違いがあります。
日本では遅刻はマナー違反であり、納期の遅れは信頼を失う行為であるという認識で、数分の遅れでも謝罪が必要と考えるのが一般的です。事前に綿密な計画を立ててスケジュール通りに進行することで、時間に遅れることのないように管理する場合が多いでしょう。
一方で、インドネシアでは、事前に綿密な計画を立てるよりもやりながら判断し、状況変化やイレギュラーな事態にはその場で臨機応変に対応していくのが一般的です。5分〜30分程度の遅れは日常茶飯事で、あまり深刻に捉えない傾向にあります。
職場で誤解が生じやすいポイント
日本では「時間通り」というと開始5分前には準備を終えて着席していることが暗黙の了解となっている場合が多いのに対し、インドネシアでは開始時間ちょうど、あるいは少し遅れて到着しても問題ないと考える傾向があります。
また、日本では納期やスケジュールは絶対に守るべきものとの認識が一般的であるのに対し、インドネシアでは納期を柔軟に変更・遅延させることを許容する文化が根付いています。
食文化と日常習慣に見る宗教・地域性の影響
インドネシアの食文化について、宗教的・地域的背景や注意点について解説します。
ハラルを中心とした食事規範
インドネシアの食事規範は、イスラム教の教えをもとにした「ハラール」が中心です。豚肉やアルコールが禁止されており、肉を食べる際には正しい方法で処理されたものである必要があり、調理器具や工場ラインの衛生管理も厳しく問われます。
また、食事の際の宗教的・文化的な礼儀作法も重要な要素です。例えば、右手を使って食べるのが基本で、左手は「不浄の手」とされ、食事や物の受け渡しでは、右手を用いることが礼儀とされる場合が多いため、相手への配慮として意識しておくとよいでしょう。
アルコールや食材に関する考え方
イスラム教では飲酒が厳しく禁じられており、ビジネスの場やローカルな集まりでは基本的にアルコールを提供しないのがマナーです。ただし、地域によって食文化やアルコールに対する受容度は異なります。
また、食材に関しては豚肉をはじめ、ラードやゼラチンなど豚由来の成分、犬や猫などの牙をもつ肉食獣などが禁忌とされており、わずかでも含まれている場合は口にできません。牛肉や鶏肉、羊肉などは、イスラム教の教えに則って処理されたもののみがハラールとして認められます。
食事マナーや日常習慣の特徴
左手は不浄の手とされているため、食事や物の受け渡し、お金の支払などの際は必ず右手を使うのがマナーです。
職場や交流の場で起こりやすい注意点
ハラールに配慮し、職場のランチや歓送迎会など、食事を共にする機会がある場合は、ハラール認証マークがあるレストランや、シーフード・ベジタリアン専門店を選ぶと安心です。お酒の席への参加を嫌がったり、ノンアルコールでも同席すること自体を好ましく思わなかったりする場合もあるため、居酒屋などは避けるとよいでしょう。
断食期間中は日の出から日没まで飲食ができないため、ランチミーティングなどでインドネシア人スタッフの前で飲食をする機会がある場合も配慮が必要です。また、食事会のスケジュールを組む際は、礼拝の時間を考慮することも大切です。
タブーに表れる尊厳と敬意の考え方

インドネシア人に対してタブーとされる行動や、その背景にある価値観や宗教観について解説します。
左手の使用が避けられる理由
インドネシアでは、トイレで用を足した後に左手を使って身体を洗う文化があり、左手が「不浄の手」とみなされています。握手や名刺交換、贈り物やお金の受け渡し、食事などでは必ず右手を使用するのがマナーで、左手でこれらの動作を行うことは相手に失礼な印象を与えるため避けられます。
やむを得ず左手で物を渡さざるを得ない場合は、「すみません」と一言添えて左手を使うか、左手を添える程度に留めるのがマナーです。
頭を触る行為が持つ意味
地域や文化的背景によっては、頭に触れる行為を失礼と受け取る人もいます。職場では、親しみの表現であっても身体に触れる行為は避けるのが無難です。日本では親しみを込めて子供の頭をなでることがありますが、インドネシアでは最大級のタブー(無礼な行為)となります。
また、相手の頭にゴミなどがついていても、直接手で払ってはいけません。言葉で「ゴミがついていますよ」と教えて自分で取るように促すのがマナーです。
人前で怒ることが敬遠される背景
インドネシアでは、他者との調和や関係性を非常に大切にする風潮があるため、人前での叱責は「侮辱された」「大勢の前で恥をかかされた」と感じ、プライドを著しく傷つけてしまう恐れがあります。
また、イスラム教の教えでは、怒りの感情をむき出しにすることは好ましくないとされており、感情をコントロールできることが大人の振る舞いであるとされています。感情的に怒る人は「品位がない」「自制心がない」とみなされ、敬遠される場合が多いです。
無意識の行動がトラブルにつながる構造
握手や物の受け渡しなどで左手を使う、親しみを込めて頭をなでるなどの行為は、無意識であってもインドネシア人にとっては失礼にあたるため、気をつけなければトラブルにつながる恐れがあります。特に異性間の身体接触については、宗教上または個人的な理由から避けたい人もいるため、職場では不用意なボディタッチを控えましょう。
日本文化との違いを踏まえた向き合い方
インドネシアと日本の文化を比較し、文化摩擦が生じる構造や適切な向き合い方について解説します。
規律・効率重視の日本文化との違い
規律や効率を重んじる日本文化とは対照的に、インドネシアでは宗教的な価値観や人間関係の調和、「今この瞬間」を大切にする柔軟性が文化の基盤にあります。例えば、時間厳守を美徳とする日本に対し、インドネシアはある程度の遅刻は許容し、効率よりも人とのつながりや現在の状況を優先する風潮があります。
また、日本ではマニュアルやルールを遵守し、効率的に目標を達成することを重視するのに対し、インドネシアではルールに縛られすぎずに臨機応変に対応する柔軟性をもち、チームワークでカバーし合うのが特徴的です。
行動ではなく「前提の違い」による摩擦
日本では公私を区別するのが一般的な前提であるのに対し、インドネシアでは宗教の教えや家族が最優先であるという前提があるため、礼拝や断食月、宗教上の大祭への配慮を怠ると、相手を軽んじていると受け取られる恐れがあり、深刻な不信感につながる場合があります。
また、インドネシアでは年長者や上司への敬意を重視する傾向が見られる場合があります。日本の仕事上の上下関係においても、 上司がフラットに接しようとしても相手が恐縮してしまうこともあります。
文化を矯正しないという考え方
「多様性の中の統一」を国是として掲げるインドネシアでは、他者の文化や宗教、価値観を無理に矯正させないという寛容の精神が根づいています。異なる言語や宗教、習慣をもつ人々が互いのルーツを尊重し合うのが当たり前という社会規範があるため、他者との違いを認めることを重視する風潮があります。
インドネシア人と良好な信頼関係を築くためには、相手の文化を理解し、お互いの違いを受入れながら柔軟に対応していく姿勢が大切です。
長期的な関係構築につなげる視点
インドネシア人と長期的な関係を築くためには、宗教的な背景や家族を尊重し、一方的な指示ではなく共感的な対話を心がけることが大切です。日本文化に関心をもつ人もいますが、価値観やコミュニケーションの取り方は個人によって異なります。相手がどんな人柄なのかを見極め、その人に応じたコミュニケーションを心がけることで、信頼関係が生まれていくでしょう。
まとめ
インドネシアでは、宗教が日常生活に大きく影響を与えており、多民族・多言語・多宗教国家であることが文化形成にも大きく寄与しています。インドネシアの文化や宗教、生活習慣について正しく理解することは、インドネシア人を尊重することにもつながります。
ただし、同じインドネシア人だからといって一括りにはせず、個人差があることに留意したうえで、バックグラウンドに寄り添った対応をすることが重要です。
採用後に活躍してもらうためには、本人の適性や経験を見極め、働きやすい環境を整えることが重要です。日本の労働力不足を補うだけでなく、職場に良い影響をもたらす人材として活躍してくれるでしょう。
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