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特定技能外国人を支援する「生活オリエンテーション」とは?時間や内容について解説

2025.07.09

特定技能外国人を雇用する場合、企業は労働者の生活・労働をサポートするために「生活オリエンテーション」を行う必要があります。生活オリエンテーションをいつどのように実施すべきか、詳しく知りたい方も多いのではないでしょうか。

この記事では、生活オリエンテーションの概要や目安時間を踏まえつつ、具体的な内容について解説します。生活オリエンテーションへの理解を深め、外国人労働者のスムーズな雇用を実現するためにも、ぜひご一読ください。

特定技能外国人を支援する「生活オリエンテーション」とは?

生活オリエンテーションとは、在留資格「特定技能1号」を持つ外国人労働者を雇用する際、受入れ企業が実施すべき情報提供主体の支援業務のことです。1号特定技能外国人の日本入国後、あるいは在留資格の変更後、速やかに行う必要があります

1号特定外国人を受け入れる場合、企業はあらかじめ策定した支援計画に基づいて「義務的支援」を実施しなければなりません義務的支援には全部で10項目あり、その一つに生活オリエンテーションが含まれています

【10の義務的支援業務】

  1. 1.事前ガイダンス
  2. 2.出入国する際の送迎
  3. 3.住居確保・生活に必要な契約支援
  4. 4.生活オリエンテーション
  5. 5.公的手続等への同行
  6. 6.日本語学習の機会の提供
  7. 7.相談・苦情への対応
  8. 8.日本人との交流促進
  9. 9.転職支援(人員整理等の場合)
  10. 10.  定期的な面談・行政機関への通報

参考:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援・登録支援機関について

 

なお、特定技能2号の外国人労働者に関しては、生活オリエンテーションを含む義務的支援は不要です。

在留資格「特定技能」とは?種類や対象分野、技能実習との違いなどをわかりやすく解説

特定技能1号・2号の違いは?それぞれの取得方法もわかりやすく解説

生活オリエンテーションの目的

生活オリエンテーションのおもな目的は、1号特定技能外国人が日本で安全かつ安定した生活・労働を実現できるよう、必要な情報を提供することです。金融機関や医療機関の利用方法に加え、交通ルールや日常生活のマナー、相談や苦情に関する連絡先など、伝えるべき情報は多岐にわたります。

1号特定技能外国人には、日本に一度も来たことがない方や、日本での生活に慣れていない方が多く予期せぬトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。

日本で安心して働いてもらうためには、日常生活や労働でのトラブル予防に必要な情報を生活オリエンテーションで提供し、生活の安定化や日本社会への順応を促すことが大切です。日本のルールや文化に適応することは、1号特定技能外国人本人の生活・労働の充実にも繋がります。

生活オリエンテーションと事前ガイダンスの違い

生活オリエンテーションとよく似た支援業務として「事前ガイダンス」があります。

どちらも情報提供を主体とする義務的支援ですが、事前ガイダンスは入国手続きや雇用契約、在留資格で定められた業務範囲などについて説明することが目的です。また、事前ガイダンスは1号特定技能外国人が日本に入国する前に実施します。

一方、生活オリエンテーションは日本での生活・労働のために必要な情報を提供することが目的です。実施タイミングも入国後・在留資格申請後なので、事前ガイダンスとは明確に異なります。

生活オリエンテーションの実施形式

生活オリエンテーションは対面形式だけではなく、テレビ電話や通話アプリを使ったオンライン形式、DVDなどを使った動画視聴形式での実施も認められています。ただし、実施形式を問わず1号特定技能外国人から質問や問い合わせがあった際、適切に対応できるような体制を整えていることが必須条件です。

参考:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援に関する運用要領

 

また、雇用対象の1号特定技能外国人がきちんと理解できるよう、生活オリエンテーションは母国語など、本人が十分理解可能な言語での実施が望ましいとされています。

「特定技能1号」を取得するためには、日本語基礎テスト(JFT-Basic)のA2レベル相当以上、もしくは日本語能力試験(JLPT)のN4レベル以上が求められます。しかし、N4は「基本的な日本語を読んで理解できる」「ややゆっくりとした会話なら内容を理解できる」程度の水準のため、細かい制度やルールは母国語で説明しないと理解が困難かもしれません。

受け入れる1号特定技能外国人の母国語で資料やサイトを作成したり、あらかじめ通訳を用意したりするなど、母国語への対応に向けた体制も整えておきましょう。

参考:日本語能力試験(JLPT)|N1~N5:認定の目安

特定技能の「生活オリエンテーション」の実施時間

出入国在留管理庁が公表している「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」によれば、生活オリエンテーションは少なくとも8時間以上実施することが求められています。これは1号特定技能外国人が情報を受け取ったうえで、その内容を理解するために必要と考えられている時間です。

なお、在留資格を「技能実習2号」や「留学生」から「特定技能1号」に変更し、引き続き同じ企業で雇用するなどの状況で、かつ生活環境が変わらない方であっても、4時間以上は実施しなければなりません

また、1号特定技能外国人が他社に転職した場合、新たに受け入れ先となった企業でも再度生活オリエンテーションを行う必要があります

1号特定技能外国人を雇用するなら、例外なく生活オリエンテーションは必須と覚えておきましょう。

参考:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援に関する運用要領

特定技能の「生活オリエンテーション」で伝えるべき情報や具体的な内容

生活オリエンテーションで伝えるべき情報は、以下のようなカテゴリに分類されます。

  • 日本での生活一般に関する情報
  • ・公的機関での手続きに関する情報
  • ・医療や医療機関に関する情報
  • ・支援に関する情報
  • ・防災・防犯・緊急事態に関する情報
  • ・法令違反・法的保護に関する情報
  •  

それぞれ具体的な内容を解説します。

日本での生活一般に関する情報

日本で日常生活を送るために知っておくべきルールやマナー、各種機関の利用方法のレクチャーを行います。安全かつ安定した生活・労働を実現するにあたり、必要な情報が詰め込まれているため、じっくり丁寧に説明したいところです。

情報

具体例

金融機関の利用方法

  • ・入出金や振り込みの方法
  • ・ATMの使い方・利用時間・手数料など
  • ・口座の開設方法
  • ・帰国時に口座を解約しなければならないこと
  • ・再入国時のために口座を残したい場合、出国前に相談が必要なこと

交通ルールなど

  • ・信号の色の意味(国によって意味が異なる)
  • ・歩行者は右側通行であること
  • ・自動車やバイクは左側通行かつ歩行者優先であること
  • ・自動車やバイクを運転する際は運転免許が必須であること
  • ・自転車を運転する際は自転車損害賠償責任保険に加入しなければならないこと

交通機関の利用方法など

  • ・生活・労働する地域の公共交通機関(電車やバス)と利用方法
  • ・勤務先までの経路や所要時間
  • ・路線図の見方
  • ・切符や定期券の買い方・使い方
  • ・交通系ICカードの買い方・使い方
  • ・公共交通機関を利用する際のルール・マナー
  • ・タクシーの乗り方

生活ルール・マナー

  • ・生活・労働する地域でのゴミの分別ルールや捨て方
  • ・近隣住民の迷惑になる行為(騒音など)への注意
  • ・空き地や畑への無断侵入に関する注意
  • ・喫煙に関するルール・マナー
  • ・禁止標識の意味

生活必需品などの購入方法

  • ・生活・労働する地域のスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどの所在地
  • ・トイレットペーパーや洗剤の買い方

日本で違法となる行為の例

  • ・違法薬物の所持・売買
  • ・銃砲刀剣類の所持
  • ・在留カードの不携帯
  • ・口座の売買禁止
  • ・他人名義の口座から勝手に現金を引き出すこと
  • ・他人になりすまして配達伝票に署名したり、配達物を受け取ったりすること
  • ・他人の放置自転車を勝手に使用すること

出産・子育て関連の制度

  • ・母子健康手帳の交付
  • ・産前産後、育児にともなう休業

参考:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援に関する運用要領

公的機関での手続きに関する情報

1号特定技能外国人が実施すべき、あるいは実施したほうが良い公的機関での手続きのレクチャーを行います。日本人でも理解しにくい手続きが多いため、手順や注意点をわかりやすく説明することが大切です。

情報

具体例

所属機関(受入れ企業)に関する届出

  • ・特定技能所属機関の名称や所在地が変更または消滅した際の手続き
  • ・特定技能所属機関との契約が終了または新たな契約を締結した際の手続き

→14日以内に出入国在留管理局への届出が必要 

住居地に関する届出

  • ・入国後の住居地届出
  • ・在留資格変更などにともなう住居地届出
  • ・住居地の変更届出

社会保障・税に関する手続き

  • ・健康保険・厚生年金保険の制度
  • ・国民健康保険・国民年金の制度
  • ・未納がある場合、在留諸申請が不許可になるかもしれないこと
  • ・所得税・住民税の制度
  • ・源泉徴収・特別徴収の制度
  • ・保険料や税金が給与から天引きされること

その他の行政手続き

  • ・自転車防犯登録の方法(自転車を他人から譲り受けた場合、オンラインで購入した場合の登録方法)
  • ・マイナンバー制度の仕組み
  • ・母子健康手帳の交付方法

届出・手続きへの同行

  • ・1号特定技能外国人が自ら届出や手続きを行う場合、該当窓口までの同行や書類作成などのサポートを特定技能所属機関等が行わなければならない

参考:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援に関する運用要領

医療や医療機関に関する情報

1号特定技能外国人が日本で適切な医療サービスを受けられるよう、医療機関の探し方や利用方法、民間医療保険のレクチャーを行います。医療機関と一口にいっても、診療科目や役割はそれぞれ異なるため、その辺りも考慮して伝えたいところです。

情報

具体例

医療機関の探し方

  • ・医療機関を探す際に役立つ媒体(インターネットや地域広報誌など)
  • ・診療科目の種類と診療内容の違い
  • ・外国人の受け入れ体制が整っている医療機関の紹介(通作サービスありなど)
  • ・生活・労働する地域にある医療機関の紹介

医療機関の利用方法など

  • ・医療機関を受診する際の流れ
  • ・健康保険証の提示によって自己負担額が減ること
  • ・緊急時の119番通報について
  • ・お薬手帳の仕組み
  • ・アレルギーや宗教上の理由による治療制限の伝え方

民間医療保険の案内

  • ・医療通訳雇い入れ費用などをカバーする民間医療保険の紹介
  • ・民間医療保険の契約方法

参考:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援に関する運用要領

支援に関する情報

1号特定技能外国人が何らかの問題を抱えている際、必要な支援を受けるための方法をレクチャーします。生活オリエンテーションの担当者や公的機関へのアクセスを確立することで、本人も安心して働けるでしょう。

情報

具体例

登録支援機関に支援を委託した際の連絡先

  • 登録支援機関の担当者の氏名
  • 担当者の電話番号・メールアドレスなど

公的機関に相談や苦情を申し出る際の連絡先

以下のような公的機関の連絡先を共有

  • ・地方出入国在留管理局
  • ・労働基準監督署
  • ・ハローワーク
  • ・法務局・地方法務局
  • ・警察署
  • ・最寄りの市区町村
  • ・弁護士会・日本司法支援センター(法テラス)
  • ・大使館・領事館

参考:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援に関する運用要領

防災・防犯・緊急事態に関する情報

自然災害の被害を抑えるための災害対策、犯罪被害に遭わないための防犯対策、緊急事態が起こった際の連絡先などをレクチャーします。外国人労働者本人とその家族・友人の生命にかかわるため、万が一の事態に備えてしっかり伝達しましょう。

情報

具体例

災害や事件への備え

  • ・地震・台風・津波などの被害を抑える方法(家具を固定するなど
  • ・自然災害に備えた準備(食料の備蓄や防災リュックの用意など
  • ・火災の予防(タバコの不始末やコンロ・ストーブの取り扱いなど)
  • ・防犯性を高める方法(ドア・窓の施錠や郵便ポストのチェックなど
  • ・事件に巻き込まれないための注意点(空き地へ勝手に入らない、交通ルールを守るなど)

緊急時の連絡先

以下のような公的機関の連絡先を共有

  • ・警察
  • ・消防
  • ・海上保安庁
  • ・救急医療機関
  • ・大使館・領事館

気象情報や災害情報の入手方法

  • ・気象情報や災害情報を知らせる媒体(テレビやスマートフォンなど)
  • ・避難指示・避難勧告を把握する方法
  • ・ハザードマップや防災ポータルへのアクセス方法
  • ・災害時における最寄りの避難場所の紹介

参考:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援に関する運用要領

法令違反・法的保護に関する情報

受入れ企業にて法令違反や契約違反があった場合、外国人労働者はどう対処すべきかレクチャーします。外国人労働者も日本人労働者と同じく、働く際に法的保護を受けるため、これらのレクチャーは人権や差別の観点からも重要です。

情報

具体例

入管法令や労働関係法令の知識

  • ・在留手続き・みなし再入国制度・在留資格の取り消しなどに関する知識
  • ・労働契約・労働保険制度・休業補償制度・労働安全衛生などに関する知識

法令違反があった際の連絡先・連絡方法

  • ・入管法令に違反があった場合(地方出入国在留管理局など)
  • ・労働に関する法令違反があった場合(労働基準監督署など)
  • ・特定技能雇用契約に違反する行為があった場合(地方出入国在留管理局や労働基準監督署など)
  • ・人権侵害があった場合(法務局など)

参考:出入国在留管理庁|1号特定技能外国人支援に関する運用要領

特定技能の「生活オリエンテーション」は委託できる!

直近2年間で外国人労働者を受け入れた実績がない、あるいは生活相談に従事した役員や職員がいない企業は、そもそも生活オリエンテーションを含む義務的支援を自社で実施できません。仮に自社で実施できるとしても、支援業務の担当者を確保したうえで、さまざまな準備や手続きを行わなければならないので、かなりの時間と労力がかかります。

このような場合は、特定技能の「登録支援機関」に委託することで支援がスムーズに実施可能になります。登録支援機関に委託すれば生活オリエンテーションを含む支援業務を代行してもらえるため、自社の負担を最小限に抑え、余った時間と労力を別の業務に割り当て可能です。委託費用はかかりますが、自社で実施しても人件費などが発生します。

 

なお、支援業務全体ではなく、生活オリエンテーションだけ部分的に委託することもできます

参考:e-Gov法令検索|特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令

 

登録支援機関について詳しくは、以下の記事で紹介しています。

特定技能における登録支援機関とは?支援委託をおすすめする理由と選び方

まとめ

1号特定技能外国人を雇用する場合、受入れ企業は生活オリエンテーションを適切に実施しなければなりません。さまざまな情報を提供する必要があるため、実施形式や母国語への対応も考慮しつつ、可能な限りわかりやすく伝えることを意識しましょう。

ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、自社無償教育拠点「OUR BLOOMING ACADEMY」で教育したハイレベルな特定技能外国人を紹介しています。「登録支援機関」の認可を受けているため、生活オリエンテーションを含む義務的支援の委託も可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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特定技能とは?

2019年4月に創設された、人材の確保が困難な16の産業分野等における人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を労働者として受け入れる在留資格のこと。
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