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多文化共生とは?地域の取り組み事例や外国人労働者の受入れ企業ができること

2024.10.15

日本で暮らす外国人や、日本を訪れる外国人が増加するなか、「多文化共生」の概念が注目されています。多文化共生に向けた取り組みは、国や自治体のみならず、外国人材の受入れ企業にも求められるものです。

今回は、多文化共生の概要や重要視される理由、多文化共生に向けた具体的な取り組み事例などを解説します。併せて、外国人材の受入れ企業ができる取り組みについても紹介しますので、企業の採用担当者の方はぜひ最後までご覧ください。

多文化共生とは?

総務省の「多文化共生の推進に関する研究会報告書」では、多文化共生を以下のように定義しています。

「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」

引用:総務省「多文化共生の推進に関する研究会報告書」

 

つまり、日本における多文化共生とは、日本人と外国人が互いの文化の違いを理解・尊重し、同じ地域社会の一員として協力し合って生きていこうという考え方のことです。

“ダイバーシティ”や“インクルージョン”と“多文化共生”の違い

多文化共生と混同されやすい言葉に、「ダイバーシティ(Diversity)」や「インクルージョン(Inclusion)」が挙げられます。

ダイバーシティとは、直訳すると「多様性」を意味し、人種・年齢・性別・能力・ライフスタイルなどのさまざまな違いを持つ人々が、組織や集団で共存している状態のことです。

また、インクルージョンは直訳で「包括」「受容」を意味し、多種多様な人々が互いの違いを理解・尊重することで、それぞれが能力を存分に発揮できている状態を指します。

上記の内容を踏まえると、ダイバーシティとインクルージョンは、多文化共生を実現するために欠かせない環境・考え方といえるでしょう。

多文化共生が重要視される理由

近年、多文化共生が注目されている理由は、大きく分けて2つあります。

少子高齢化による人手不足の深刻化

少子高齢化が進行している日本では、すでに業界・職種によっては労働者不足が深刻化しています。人手が足りなければ、企業は事業を継続できなくなるかもしれません。

なかには、業務のオートメーション化やAIの導入といった方法で、労働者不足をカバーできるケースもあります。

しかし、介護業界や外食業界、宿泊業界など、人同士のコミュニケーションで成り立つ業界は、そうした技術を活かしにくいのが現状です。そこで、足りない人手を外国人材で補うことが、有効な対策となるでしょう。

実際に、厚生労働省の「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」によると、2023(令和5)年10月末時点で、日本における外国人労働者数は200万人を超えています。このことからも、多くの企業が外国人材の受け入れを積極的に進めていることがわかります。

参考:厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」

 

なお、以下の記事では日本の労働者不足や、外国人労働者の受け入れ状況などについて詳しく解説しています。こちらも併せてご覧ください。

日本で労働者不足が進行している背景とは?企業への影響や解消方法も詳しく解説

外国人労働者受け入れの現状は?雇用のメリット・デメリットや問題点、流れなどを徹底解説

日本を訪れる外国人の増加

多文化共生と聞くと、日本在住の外国人を対象とするイメージがあるかもしれません。しかし、例えば日本で災害が発生した際や、外国人が医療サービスを必要とする際などの支援については、訪日外国人の存在も含めて考える必要があります。

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2024(令和6)年7月の訪日外国人数は329万2,500人で、2ヵ月連続で単月として過去最高を記録しました。

参考:日本政府観光局「訪日外客数(2024年7月推計値)」

 

「人手不足の深刻化」および「訪日外国人の増加」により、職場や地域社会で外国人との接点が増えると想定されます。そのため、異なる文化的背景を持つ外国人を受け入れて、協力し合える関係を築くことが求められているのです。

多文化共生に向けた取り組みの具体例

ここでは、多文化共生に向けた取り組みについて、各自治体の事例を交えながら紹介します。

多言語での情報提供

母国語が異なる外国人と意思疎通をするためには、多言語での情報提供が欠かせません。

多文化共生の観点では、日本語のほか、英語・中国語・韓国語などの複数の言語で、同じ情報を提供する必要があります。公共交通機関における、多言語の案内表示や車内アナウンスも取り組みの一例です。

 

・ごみ出しルールの多言語化(福岡県福岡市)

福岡県福岡市では、市内在住の外国人向けに、ごみ出しのルールを以下の10種類の言語で案内する取り組みを実施しています。

【対応言語】

日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語・ベトナム語・タイ語・ミャンマー語(ビルマ語)・タガログ語(フィリピン語)・インドネシア語・ネパール語

ごみ置き場や公共施設などにある2次元バーコードをスマートフォンで読み取ると、ユーザーに適した翻訳ページが表示されます。これにより、ごみの分別方法やごみ出しの曜日・時間・場所などを容易に確認できます。

参考:福岡市役所 環境局「外国語でごみの出し方を知りたい、伝えたい」

外国人児童の教育機会の確保

子どもを持つ外国人に、教育に関する情報を十分に提供できていないと、外国人児童は就学の機会を逃してしまう可能性があります。多言語による就学情報の提供のほか、不就学児への対応も求められるでしょう。

 

・適応指導教室の設置(岐阜県可児市)

岐阜県可児市では、外国人児童の「不就学ゼロ」を目指した教室「ばら教室KANI」を開設しました。ばら教室KANIでは、3ヵ月から6ヵ月程度の期間をかけて、基礎的な日本語や算数、学校生活のルールなどを指導しています。

また、箸の使い方といった、日本の文化・習慣を理解する機会を提供し、小学校や中学校での生活にスムーズに適応できるようサポートする取り組みも実施しています。これにより、学校生活への不適応から問題行動に発展し、不就学・退学に繋がってしまうリスクも減らせるでしょう。

参考:可児市「ばら教室KANIについて」

参考:総務省「多文化共生事例集(令和3年度版)」

災害時の支援体制の整備

災害時に備え、外国人住民や訪日外国人を危険から守る体制づくりが必要です。ただし、「外国人=災害時に支援を必要とする者」と一概にとらえるのではなく、ケースに応じて外国人も支援する側にまわり、活動できるような教育もポイントになります。

 

・外国人による機能別消防団の結成(滋賀県草津市)

滋賀県草津市には、数多くの外国人住民がいます。災害時の避難誘導や避難所生活における混乱を避けるため、母国語・英語・日本語に堪能な外国人留学生に注目し、外国人住民のみで構成される機能別消防団を結成しました。

機能別消防団は、災害時には外国人への通訳・翻訳や避難誘導業務などを行う想定で、平時には、防災訓練や外国人への災害に対する啓発活動などを実施しています。外国人住民も支援する側にまわることで、外国人住民同士、あるいは外国人住民と日本人住民の共助の意識を高めるきっかけとなるでしょう。

参考:総務省「多文化共生事例集(令和3年度版)」

多文化共生の意識啓発

地域住民の多文化共生に対する意識が低い状態だと、どのような取り組みをしても、本質的に多文化共生を実現することはできません。

互いの文化の違いを受け入れられないと、不当な差別や偏見に繋がる恐れもあります。そのため、地域住民に対して多文化共生の意識啓発をすることも大切な取り組みです。

 

・外国人人権啓発コンテンツの配信(東京都)

さまざまな国の人が集まる東京都では、外国人への差別や偏見をなくすため、文化の多様性を理解・尊重することの大切さを伝える動画などをインターネットで公開しています。

紹介されている具体的な内容は、都の現状・課題、外国人への街頭インタビュー、多文化共生に向けた取り組みなどです。

インターネット上でコンテンツを配信することで、若い世代を含めた、幅広い世代の人々への啓発に貢献しているといえます。

参考:総務省「多文化共生事例集(令和3年度版)」

多文化共生に向けて外国人労働者の受入れ企業ができること

外国人材を受け入れるにあたっては、各職場での取り組みも重要となります。ここでは、受入れ企業ができる、多文化共生の取り組みを見てみましょう。

コミュニケーションの支援

言語の壁を取り払う取り組み例として、以下の2点が挙げられます。

 

・「やさしい日本語」での情報提供

「やさしい日本語」とは、日本語が不慣れな外国人にもわかりやすく表現した日本語のことです。出入国在留管理庁と文化庁は、「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を公表しています。

 

具体的には、以下のような日本語が「やさしい日本語」といえます。

【やさしい日本語のおもな例】

・簡単な言葉を使っている

・漢字にふりがなを振っている

・シンプルな文法で表現されている

・一文が必要最低限の長さである

・長い文章を箇条書きに変換している

参考:出入国在留管理庁・文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」

 

受入れ企業においても、「やさしい日本語」を取り入れて、外国人材との意思疎通を図ることを心がけましょう。なお、職場でのコミュニケーションの基本的なポイントについては、以下の記事で解説しています。

職場で外国人と上手くコミュニケーションをとるには?ポイントを解説!

 

・日本語の学習支援

前章「多文化共生に向けた取り組みの具体例」にて、外国人児童の教育機会の確保について紹介しましたが、大人の外国人への日本語教育も必要です。

やさしい日本語や多言語での情報提供をするといっても、対応可能な範囲には限度があります。受入れ企業として、日本語に関する研修を実施したり、外国人材が日本語教育を受けられるように支援したりしましょう。

 

外国人材への日本語教育について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

外国人労働者の日本語教育方法!必要な日本語レベルや現状・課題とともに解説

生活環境の支援

生活面でのサポート例として、以下の2点が挙げられます。

 

・住居の準備

特定技能外国人などを受け入れる際、安心して暮らせる住居を準備することは受入れ企業の義務です。また、企業側に義務が課せられないケースでも、外国人にとって部屋探しや入居・転居手続きなどはハードルが高いため、できる限りサポートする必要があります。

 

なお、特定技能外国人を受け入れる際の住居確保支援については、以下の記事を参考にしてください。

特定技能外国人の住居に関する条件とは?住宅確保の背景や注意点も解説

 

・地域コミュニティ活動への参加促進

地域のイベントやボランティア活動など、コミュニティ活動への参加を外国人材に促すことは、生活拠点である地域社会に馴染むきっかけとなります。受入れ企業が主体となって、地域住民をもてなすようなイベントを開催する方法もおすすめです。

ただし、外国人のなかには、地域と積極的にかかわることを望まない方もいるかもしれません。外国人本人の意思も確認しながらサポートするようにしましょう。

まとめ

人手不足の深刻化や訪日外国人の増加などを背景に、地域社会では多文化共生を実現するための取り組みが広がっています。多文化共生は、日本人と外国人が互いの文化の違いを理解・尊重し、同じ地域社会の一員として協力し合って生きていこうという考え方です。

外国人材の受入れ企業においても、コミュニケーションの支援や生活環境の支援を中心に、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、自社の無償教育拠点で育成した特定技能外国人の紹介をしています。特定技能試験に合格するための語学と基礎教育だけでなく、外国人材が日本の生活に慣れるための多角的な教育支援も行っています。

外国人材の受け入れを検討している方や、幅広いサポートをご希望の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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