特定技能の基本情報
特定技能外国人を受け入れるにあたり、知っておきたいのが「転職」についてです。特定技能外国人の転職自体は可能ですが、さまざまな理由からハードルが高いのが現状です。
今回は、特定技能外国人が転職する際の要件・手続きや、転職するうえで生じるリスクを紹介するとともに、受入れ企業が特定技能外国人の転職を防ぐための対策を解説します。
外国人材の転職について疑問のある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
特定技能外国人は転職が可能
特定技能外国人は、制度上転職が可能です。
そもそも特定技能制度の目的は、介護・外食・宿泊など、人手不足が深刻な「12の特定産業分野」において、戦力となる人材を確保することにあります。特定技能外国人が転職しても、日本の貴重な労働力として活躍してもらうという点に変わりはないことから、問題ないといえるでしょう。
ただし、特定技能外国人の転職が可能となるのは、要件を満たした場合のみです。クリアすべき要件については、後述します。
また、12の特定産業分野に関して、詳しくは以下の記事をご覧ください。
2023年最新|特定技能の12分野・業種の職種一覧と現状を解説!
特定技能外国人の転職パターン
特定技能外国人が転職するケースには、大きく分けて以下の3つのパターンがあると考えられます。
- ・自己都合で転職する
- ・企業都合で転職する
- ・技能実習から特定技能への移行時に転職する
一般的にイメージしやすいのは自己都合での転職ですが、受入れ企業が倒産した場合など、企業側の事情によっても転職が起こり得るでしょう。企業都合で転職するケースでは、特定技能外国人が転職先を見つけられるよう、企業がサポートしなければなりません。
また、技能実習生が特定技能へと移行する際に、技能実習時と異なる企業に転職することも可能です。ただし、この場合は技能実習と特定技能の職種・業務内容が一致している必要があります。
特定技能外国人が転職するためにクリアすべき要件・手続き
前述したように特定技能外国人は転職可能ですが、実際のところ、転職のハードルは高いといえます。その理由の一つが、転職するためにクリアすべき要件・手続きが多いことです。ここでは、特定技能外国人が転職するための要件・手続きについて、「外国人材側」「旧受入れ企業側」「新受入れ企業側」の3つに分けて紹介します。
外国人材側の要件・手続き
外国人材側の転職要件は、大きく分けて次の2つです。
・在留資格変更許可申請をする
別の企業で働く場合には、新たな在留カードと「指定書」を発行する必要があります。指定書とは、受入れ企業名や該当する産業分野、従事する業務などを記載したものです。
在留カードと指定書を発行するために、出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請をします。在留資格変更許可申請には、おおむね以下のような書類が必要となるでしょう。
健康診断個人票
住民税の課税・納税証明書
源泉徴収票 など
このほかに、該当する産業分野によって、個別に求められる書類もあります。
・異なる産業分野へ転職する場合は試験に合格する
現在と異なる産業分野へ転職したい場合には、新たな産業分野の特定技能評価試験に合格しなければなりません。
一部の産業分野には、さらに細分化された「業務区分」もあるため注意が必要です。産業分野は同じでも、転職により業務区分が変わる場合には、特定技能評価試験にあらためて合格することが求められます。
ただし、産業分野によっては、特定技能評価試験が実施されない年もあります。いつでも試験を受けられるわけではないため、スムーズに転職できるとは限らないでしょう。
旧受入れ企業側の要件・手続き
特定技能外国人から転職の申し出があった場合、受入れ企業は出入国管理局へ以下の届出をしなければなりません。
- ・特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出
特定技能外国人の受け入れが困難になった旨について、受け入れが困難になった事由が生じた日から14日以内に届出をします。その際、受け入れが困難になった経緯の説明も求められます。
- ・特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出
特定技能雇用契約を変更・終了した日(=特定技能外国人の退職日)から、14日以内に届出をします。
- ・特定技能所属機関による支援委託契約に係る届出
特定技能外国人の退職にともない、登録支援機関との契約が終了した場合は、契約が終了した日から14日以内に届出をします。
登録支援機関とは、特定技能外国人の受け入れを全面的にサポートする機関のことです。詳しくは以下の記事で解説しているので、参考にしてください。
外国人労働者の在留資格「特定技能」とは?1号と2号の対象分野などをわかりやすく解説
また、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」も行います。手続き期限は、特定技能外国人の退職した翌日から起算し、10日以内です。
新受入れ企業側の要件・手続き
特定技能外国人を受け入れるためには、「労働や社会保険等に関する法令を遵守している」など、受入れ企業自体の適正性が求められます。加えて、特定技能外国人の支援体制が整っている、といった基準も満たさなければなりません。
ただし、前述した登録支援機関へ委託すれば、特定技能外国人への支援体制に関する条件は問われなくなります。
また、新受入れ企業が必要な手続きとして、特定技能外国人が在留資格変更許可申請をする際に、以下のような必要書類を準備することが挙げられます。
- 雇用条件書
- 支援計画書
- 納税証明書 など
旧受入れ企業と同様に、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」もしましょう。手続き期限は、特定技能外国人を受け入れた翌月の10日までです。
特定技能外国人の転職リスク
転職の要件や手続き以外にも、「特定技能外国人の転職はハードルは高い」と言える理由があります。
ここでは、特定技能外国人の転職リスクを紹介します。
在留資格変更許可申請中は収入が得られない
転職するために仕事を辞めた場合、特定技能外国人は「在留資格変更の許可が下りるまではアルバイトをして収入を確保しよう」と考えることがあるかもしれません。しかし、指定書に記載されている企業や分野でしか働けないため、特定技能外国人が在留資格変更許可申請中にアルバイトをするのは不可能です。
したがって、退職をする場合には、在留資格変更許可申請中の生活資金を事前に確保することになるでしょう。在留資格変更許可が下りるまでには数ヵ月かかると想定されるため、まとまった生活資金が必要になると考えられます。
一方で、在留資格変更の許可が下りるタイミングを考えて、退職日を調整することも可能です。しかしこの方法も、働きながら転職活動をしなければならないため負担が大きいでしょう。
勤務時間によっては、そもそも転職希望先の面接などに参加できないといったケースも考えられます。
在留資格変更許可申請が認められない場合は帰国する必要がある
万が一、在留資格変更許可申請が通らなかった場合は、在留資格を失うことになります。在留資格を失えば、特定技能外国人は母国に帰らなければなりません。
その後、日本に戻るためには再度入国手続きをしなければならないことを考えると、特定技能外国人の転職リスクは大きいでしょう。
これらのことから、現状、特定技能外国人が転職するのはハードルが高いといえます。
受入れ企業が特定技能外国人の転職を防止するには?
最後に、特定技能外国人の転職を防ぐため、受入れ企業ができることを解説します。
適切な待遇・評価をする
特定技能外国人が、日本人の従業員と比較して不当に扱われていると感じると意欲が低下し、より良い条件で働こうと転職を考えるきっかけになるでしょう。
そのため、特定技能外国人に対して正当な待遇・評価をすることはもちろん、働きぶりに応じて昇給・昇格を実施することが大切です。評価基準が不透明にならないよう、あらかじめ共有しておくとよいでしょう。
教育体制を整える
特定技能外国人は、母国と文化の異なる国で働くため、いざというときに頼れるよう教育係をつけることもポイントです。教育係には、その外国人材と同じ国の出身者など、外国人材の母国語が話せる従業員や、母国の文化を理解している従業員がふさわしいでしょう。
頼れる存在がいることで、仕事や日本での生活に関するサポートを受けやすくなり、安心して働けるようになります。
仕事のメリットを理解してもらう
特定技能外国人を受け入れたら、事前ガイダンスなどを通じて、自社の仕事のメリットややりがいを正しく理解してもらいましょう。
単なる業務内容だけでなく、将来的に外国人材本人にとってどのようなメリットがあるのかを理解してもらえれば、モチベーションの向上が期待できます。結果として、転職予防に繋がるでしょう。
まとめ
特定技能外国人は、制度上転職ができます。ただし、クリアすべき要件・手続きを踏まえると、転職のハードルは高いといえます。
また、在留資格変更許可申請中は収入が途絶えてしまうことや、在留資格変更許可申請が通らなかった場合は帰国しなければならないことなど、転職にはリスクもともないます。
したがって、受入れ企業だけでなく特定技能外国人本人のためにも、長く働き続けたいと思える環境を整えることが大切です。適切な待遇・評価のほか、教育体制の構築、仕事のメリットの理解促進などを中心に対策しましょう。
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