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外国人技能実習制度とは?認められる在留資格・職種などの基本をまとめて解説

2023.07.31

外国人技能実習制度は、日本が培ってきた技能を外国人へ伝える国際協力のための制度です。自社でこの制度の利用を検討するうえで、具体的な内容や受け入れ方法を知りたい方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、外国人技能実習制度の概要や、認められる在留資格・職種、受け入れの流れなどを紹介しますので、企業担当の方はぜひ参考にしてください。

外国人技能実習制度とは

はじめに、外国人技能実習制度の概要や受け入れ方法を紹介します。

 

外国人技能実習制度の概要

外国人技能実習制度は1993年に創設された制度です。技能実習生を受け入れられるのは最大5年で、技能実習計画に基づいて技能を修得してもらいます。法務省・厚生労働省の「外国人技能実習制度について(令和5年5月12日改訂版)」によると、2022年末時点での技能実習生数は、32万4,940人です。

外国人技能実習制度の目的は、開発途上地域等へ日本の技能や技術、知識の移転を図り、当該の経済発展を担う人材育成に貢献することです。あくまで国際協力のための制度であり、日本国内の労働力の確保を目的とした制度ではありません。しかし、実際はその目的と運用実態はかけ離れており、国内の人手不足を技能実習生が補っているという現状が問題になっています。

2023年4月に開かれた政府の有識者会議では、外国人技能実習制度の廃止が盛り込まれた中間報告書がまとめられました。2019年に新設された、外国人労働力確保を目的とした「特定技能制度」への移行を円滑に進められるような制度設計を目指す方針です。

具体的な制度設計は、2023年秋に最終報告がまとめられ、代替制度へ本格的に移行するのは2024年以降の予定です。

外国人技能実習制度とは?認められる在留資格・職種などの基本をまとめて解説

技能実習生の受け入れ方法

技能実習制度の受け入れ方法は2つあります。以下では、それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

・企業単独型

日本国内の企業など(実習実施者)が、外国の現地法人などの職員を技能実習生として受け入れるための方法です。実習実施者とは、技能実習を実施する個人、もしくは法人を指し、技能実習生を保護する責任を負います。

企業単独型で受け入れる際は、受入れ企業と海外の企業が密接な関係でなければなりません。例えば、海外の支店にいる社員を、国内の本店へ異動させる場合などは、企業単独型での受け入れが可能です。

そのほか、受入れ企業に対して、海外の企業が子会社であったり、関連会社であったりする場合も、この方法で受け入れられる見込みがあります。

 

・団体監理型

非営利の事業協同組合、商工会などの「監理団体」を仲介して技能実習生を受け入れ、傘下の企業が技能実習を行う方法です。監理団体は、技能実習生の送出国にある「送出機関」と契約を結んでいるため、技能実習生の受け入れを希望している企業は、監理団体に対して申し込みを行います。

また、監理団体は、技能実習生が適切な実習を受けられるように、受入れ企業に対する指導・支援の役割を担っていることも特徴です。具体的には、3ヵ月に1回の定期監査や、実習状況を確認する訪問指導などを実施します。加えて、監理団体には相談員の設置が義務付けられており、技能実習生が安心して暮らすためのサポート役として環境整備も行います。

なお、法務省・厚生労働省の「外国人技能実習制度について(令和5年5月12日改訂版)」によると、団体監理型で受け入れている技能実習生の総数は、2022年末時点で31万9,546人です。企業単独型も含めた全体で見ると、98.3%もの割合を占めています。

 

外国人技能実習制度で認められる在留資格・職種

次に、技能実習制度で認められる在留資格と、職種について紹介します。

 

在留資格

技能実習制度で認められる在留資格は、入国年数や受け入れ方法で以下のように異なります。

入国年数

目的

在留資格

企業単独型

団体監理型

1年目

技能等の修得

技能実習1号イ

技能実習1号ロ

2・3年目

技能等の習熟

技能実習2号イ

技能実習2号ロ

4・5年目

技能等の熟達

技能実習3号イ

技能実習3号ロ

 

上表のとおり、入国年数によって1号から3号までの区分が変わり、受け入れ方法によって「イ」「ロ」のどちらの呼称が付くかが変化します。

職種

技能実習制度として認められているのは、2023年3月31日時点で87職種159作業です。

区分

職種

農業関係(2職種6作業)

耕種農業、畜産農業

漁業関係(2職種10作業)

漁船漁業、養殖業

建設関係(22職種33作業)

建築大工、左官、配管など

食品製造関係(11職種18作業)

加熱性水産加工食品製造業、パン製造など

繊維・衣服関係(13職種22作業)

織布運転、ニット製品製造、寝具製作など

機械・金属関係(15職種29作業)

工場板金、金属プレス加工、プリント配線板製造など

その他(20職種37作業)

介護、印刷、溶接など

社内検定型の職種・作業(2職種4作業)

空港グランドハンドリング、ボイラーメンテナンス

参考:法務省・厚生労働省「外国人技能実習制度について」(令和5年5月12日改訂版)

 

農業関係や建設関係など大きく8つの区分に分かれ、それぞれの職種・作業が細かく規定されています。

 

外国人技能実習制度で技能実習生を受け入れる流れ

続いて、企業が外国人技能実習生を受け入れ、技能実習を行う全体の流れを解説します。

 

【入国約5ヵ月前】事前準備

実習実施者となる企業は、監理団体の指導を受けながら「技能実習計画」を作成して、認定申請する必要があります。その後、外国人技能実習機構によって、計画内容などを審査され、問題なければ技能実習計画が認定されます。

技能実習計画の審査には、1~2ヵ月程度の期間を要するため、認定申請は遅くとも技能実習生が入国する4ヵ月前には実行しておくとよいでしょう。

在留資格認定証明書の交付申請は、監理団体によって代理申請が行われます。なお、技能実習生が新規入国する場合は、現地の日本大使館などでの査証(ビザ)の申請も必要です。

 

【入国1年目】技能実習1号で在留

技能実習1号の取得者に対しては、まず原則2ヵ月の講習を受けてもらったうえで、実習をスタートさせる必要があります。講習は、団体監理型で受け入れている場合は監理団体が行いますが、企業単独型で受け入れている場合は実習実施者が実行可能です。

その後、実習実施者のもとで雇用関係が成立した実習に入ります。1年目の実習を終えたあとも在留期間を延ばしたい場合、技能実習生は所定の試験(技能検定試験 基礎級)に合格しなければなりません。企業側は、第2号技能実習計画の認定申請を行います。

 

【入国2・3年目】技能実習2号で在留

技能実習2号へ在留資格を変更できると、2・3年目の在留が可能です。4年目以降の実習を望む場合は、在留資格の変更申請前に、技能実習生は実技試験に合格しておく必要があります。

なお、技能実習3号へ移行するには、実習実施者と監理団体のどちらも優良と認められていることが不可欠です。実習実施者の企業が優良と判断される基準は、認定要件において150満点のうち90点以上を獲得していることです。具体例を挙げると、技能実習生の技能修得の実績や賃金の昇給率、技能実習の体制などが条件に合っていると加点対象となります。

 

【入国4・5年目】技能実習3号で在留

技能実習3号を取得した外国人は、実習開始前もしくは開始後1年以内に、1ヵ月以上の一時帰国を行います。また、5年の技能実習を終えたら外国人は帰国し、修得した技能を活かして母国で働くことになるでしょう。

ただし、技能実習2号を良好に修了し、技能実習で修得した内容と特定技能1号での業務内容が関連したものである場合は、特定技能1号へ在留資格を切り替えられるケースもあります。

特定技能とは「特定技能制度」に則り、人手不足の中・小規模事業者へ即戦力として外国人を受け入れるしくみです。特定技能へ移行するための企業の受け入れ準備や申請には3~4ヵ月程度の期間がかかる傾向なので、入社日に間に合うように余裕を持って取り組むことが必要となります。

 

外国人技能実習制度で知っておきたい2つのポイント

ここからは、外国人技能実習制度の2つのポイントを確認しましょう。

 

技能実習生の人数枠

技能実習生の受け入れ人数は、常勤職員や1号~3号の区分などで変わります。団体監理型と企業単独型の受け入れ人数を、それぞれ見ていきましょう。

 

【団体監理型】

1号

2号

優良基準適合者

1号

2号

3号

実習実施者の常勤職員の総数

技能実習生の人数

基本人数枠の
2倍

基本人数枠の2倍

基本人数枠の4倍

基本人数枠の6倍

301人以上

常勤職員総数の20分の1

201人~300人

15人

101人~200人

10人

51人~100人

6人

41人~50人

5人

31人~40人

4人

30人以下

3人

 

【企業単独型】

1号

2号

優良基準適合者

1号

2号

3号

常勤職員総数の20分の1

常勤職員総数の10分の1

常勤職員総数の10分の1

常勤職員総数の5分の1

常勤職員総数の10分の3

なお、常勤職員の総数に技能実習生は含まれません。

参考:公益財団法人 国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」

 

養成講習受講の義務

技能実習法により、以下の対象者は3年ごとの養成講習の受講が義務付けられています。

所属

対象者

選任・設置方法

監理団体

監理責任者

監理事業を行う事業所ごとに選任

指定外部役員、または外部監査人

監理事業の適切な運営に向けて、監理団体が設置

実習実施者

技能実習責任者

技能実習を行わせる事業所ごとに選任

監理団体所属の対象者は「監理責任者等講習」を受け、技能実習責任者は「技能実習責任者講習」を受けます。なお、それぞれの講習の時間は6時間程度とされています。 

 

外国人技能実習制度は廃止の方向へ

先述のとおり、外国人技能実習制度は廃止され、新制度へ移行する見通しです。そもそもこの制度は、技能実習を通じて発展途上国等の外国人材に日本の技能を修得してもらい、母国での経済発展につなげてもらうための国際貢献が目的です。

しかし、日本の労働力人口が減少傾向にあるなか、多くの企業は労働力の確保にこの制度を活用していた実態があり、当初の目的とは離れていました。また、技能実習生が転籍制限によって所属機関を変更できないことを利用し、企業によっては悪質な労働環境で仕事に従事させていたなどの問題も山積しています。

これらの問題を活かし、代替制度は「人材確保」に重点を置き、転籍制限を緩和する方向性で、特定技能へのスムーズな移行が可能となる制度設計を行う予定です。

また、現行制度では特定技能の場合、1号は在留期間が通算5年、2号へステップアップできれば無期限での在留も可能になりますが、その対象は「造船関連」と「建設」に限られています。今後は無期限で在留可能な業種を増やすものと見られ、優秀な外国人材を長期的に雇用できる可能性を高め、自社事業に必要な人材をより効率的に確保しやすくなることを目指す方針です。

 

まとめ

技能実習生を受け入れるには、外国人が入国する約5ヵ月前から準備を始める必要があります。ただし、現行の技能実習制度は廃止され、2024年には新制度へ移行する見込みとなっています。

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