制度・雇用契約
外国人材の受け入れを検討している場合、外国人材の給与への課税や年末調整について、あらかじめ理解しておきたいと考える方もいるでしょう。
特定技能外国人や技能実習生も、基本的には所得税などの税金を支払わなければなりませんが、一部例外や注意点があります。
今回は、特定技能外国人などの外国人労働者に課される税金や税金が免除されるケース、年末調整の流れ、扶養控除の要件・変更点について解説します。外国人材の受け入れを検討している採用担当の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
特定技能外国人・技能実習生も税金を支払う必要がある
特定技能外国人や技能実習生も、日本人労働者と同様に正しい額の税金を支払う義務があります。
ただし、年末調整の必要性については、特定技能外国人・技能実習生が「居住者」と「非居住者」のどちらに該当するかによって異なるため注意しましょう。
この場合の居住者とは「日本に住所がある人」または「1年以上日本に住んでいる人」を指し、非居住者はこの条件に該当しない人を指します。年末調整の対象となるのは、居住者に該当する人です。
なお、居住者に該当する人でも、下記の条件に当てはまる場合には年末調整の対象外となります。
- ・年間の主たる給与額が2,000万円を超える場合
- ・災害減免法により、所得税や復興特別所得税に関して徴収猶予や還付を受けた場合
特定技能外国人・技能実習生に課される税金
特定技能外国人や技能実習生に課される税金には、「所得税」と「住民税」があります。
ここでは、前述した「居住者」の場合と「非居住者」の場合に分けて、税金が徴収される仕組みを紹介します。
所得税(国税)
所得税とは、給与所得や不動産所得など、個人の所得に対して課される税金のことです。特定技能外国人や技能実習生には、給与所得に対する所得税が発生します。
・居住者の場合
居住者に該当する場合は、以下の流れで所得税が徴収されます。
- 1.給与を支払うたびに、「給与所得の源泉徴収税額表」に基づき源泉徴収を行う
- 2.年末調整にて過不足額を精算する
なお、特定技能外国人や技能実習生が途中で帰国する場合には、出国までに年末調整を行わなければなりません。
・非居住者の場合
非居住者の場合は所得額に関係なく、一律20.42%の税率で給与を支払うたびに源泉徴収されます。
住民税(地方税)
所得税が国税であるのに対し、住民税は都道府県や市区町村に納める税金です。地域の行政サービスをまかなうため、その都道府県・市区町村に住所がある個人や法人が負担します。
・居住者の場合
居住者に該当する場合は、前年の所得に応じた金額の住民税を支払います。ケースによって異なりますが、税率の目安は10%です。
住民税は前年の所得に応じて算出される後払いの税金であるため、技能実習生や特定技能外国人が帰国する場合は注意が必要です。トラブルにならないよう、精算方法や精算時期については、あらかじめ技能実習生・特定技能外国人と共有しておきましょう。
・非居住者の場合
日本に住んでいる期間が1年未満の非居住者には前年の所得がないため、住民税は課税されません。
租税条約により税金が免除されるケースもある
技能実習生に関しては、所得税や住民税を免除されるケースがあります。それは、技能実習生の出身国と日本との間で「租税条約」が結ばれている場合です。
租税条約は、二重課税の除去や脱税の回避などにより、二国間で健全な経済交流を促進させるために締結されています。租税条約を理由に税金の免除を受ける場合は、所得税・住民税でそれぞれ事前に手続きをする必要があるため、忘れずに行いましょう。
所得税の免除を受ける際は、最初の給与を支払う前日までに、受入れ企業の所在地を管轄する税務署に「租税条約に関する届出書」を提出します。
一方、住民税の免除を受ける際は、以下の書類を管轄の役所に提出します。
- ・租税条約に関する届出書の写し
- ・雇用契約書の写し
- ・本人確認書類の写し
ただし、役所によって必要書類が異なることがあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
参考:国税庁|No.2888 租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)
特定技能外国人・技能実習生の年末調整の流れ
ここまで解説した内容を踏まえ、あらためて年末調整の流れを紹介します。大まかな流れは、以下のとおりです。
- 1.特定技能外国人や技能実習生が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの書類を提出する
- 2.給与所得の源泉徴収税額表に基づき源泉徴収を行う
- 3.必要書類を作成・提出し、税金を精算する
この流れは、日本人労働者の年末調整と変わりません。
特定技能外国人・技能実習生の年末調整は扶養控除に注意
特定技能外国人や技能実習生が母国で暮らす家族を扶養している場合は、年末調整で扶養控除を受けられます。
ここでは、扶養親族の要件と扶養控除の必要書類を見ていきましょう。
扶養親族の要件
扶養親族となるには、その年の12月31日時点または納税者(特定技能外国人等)の出国時に、以下の要件にすべて該当する必要があります。
- 1.配偶者以外の6親等内の血族や3親等内の姻族、都道府県知事から養育を委託された子供、市町村長からの養護を委託された老人のいずれかであること
- 2.納税者(特定技能外国人等)と生計を一にしていること
- 3.(1)に該当する人の年間合計所得金額が48万円以下(給与所得のみの場合は給与収入が103万円以下)であること
- 4.青色申告者の事業専従者として、その年に一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
- 「納税者(特定技能外国人等)と生計を一にしている」という要件については、一緒に住んでいる必要はありません。技能実習生や特定技能外国人が母国の親族に生活費相当額を送金していれば、この要件を満たすとされています。
参考:国税庁|専門用語集
- ・2023(令和5)年1月からの変更点
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国外居住親族に対する扶養控除の適用については近年変更が入ったため、注意が必要です。
これまでは、前章の要件を満たした「16歳以上」の非居者が扶養控除の対象でしたが、2023年1月からは適用要件が厳格化されています。具体的な内容は、以下のとおりです。
【16歳から29歳まで、または70歳以上の国外居住親族の場合】
親族関係書類の提出をもって扶養親族とみなされます。
【30歳から69歳までの国外居住親族の場合】
以下のいずれかの条件に該当する場合のみ、扶養親族とみなされます。- ・留学
- ・障害者
- ・納税者(特定技能外国人等技能実習生等)から、その年に38万円以上の生活費または教育費の送金を受けている
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扶養控除の必要書類
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特定技能外国人や技能実習生が国外居住親族について扶養控除を受けるためには、以下の書類が必要になります。
- ・16歳から29歳まで、または70歳以上の国外居住親族の場合:親族関係書類および送金関係書類
- ・30歳から69歳までの国外居住親族の場合:親族関係書類および送金関係書類(38万円送金書類)
親族関係書類には、特定技能外国人や技能実習生の親族であることを証明できる、戸籍謄本や婚姻証明書、出生証明書、パスポートの写しなどが該当します。外国語で作成された書類の場合は、併せて翻訳文も用意してください。
送金関係書類に該当するのは、クレジットカードの利用明細書や外国送金依頼書の控えなどです。国外の家族へ合計38万円以上送金していることを証明できれば、「38万円送金書類」として扱えます。
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まとめ
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特定技能外国人や技能実習生に課される税金について、下表にまとめました。
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居住者
非居住者
所得税
給与から源泉徴収をしたうえで年末調整をする
一律20.42%の税率で給与から源泉徴収される
住民税
前年の所得に応じた金額の住民税を支払う
前年の所得がないため住民税は課税されない
- ただし、租税条約が外国人労働者等の出身国と日本との間で締結されている場合には、所得税や住民税が免除されます。
また、特定技能外国人や技能実習生が母国で暮らす家族を扶養している場合には、親族の年齢に応じて必要な書類を提出することで扶養控除を受けられます。
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