特定技能の基本情報
介護分野の人手不足により、特定技能「介護」の在留資格を持つ外国人材を受け入れようと検討している採用担当の方も少なくないでしょう。
しかし、「介護」の特定技能を外国人が取得するには一定の要件を満たす必要があるほか、受け入れる事業所側にもいくつか注意すべきポイントがあります。
この記事では、特定技能「介護」の概要や外国人材に任せられる業務、「介護」を取得するために満たすべき要件や外国人材を雇用する側の注意点について解説します。
目次
特定技能「介護」とは
「特定技能」とは、国内においてさまざまな業界で深刻化する人手不足問題の解消を目的に作られた、在留資格制度の一つです。制度の活用により、国内人材の確保が難しい分野において一定の専門性や技能を持つ外国人材の受け入れが可能となります。そして、特定技能「介護」は、おもに介護職への就職を前提に在留資格を与えるものです。
出入国在留管理庁の報告によると、介護の特定技能資格を持つ外国人は2023年6月末時点で21,915人となり、特定技能第1号を持つ在留外国人全体のうち、12.7%を占めています(※1)。
特定技能「介護」を持つ外国人は、後述する試験に合格することで、最長5年間は介護事業所者での勤務が可能になります。5年を経過すると帰国しなければなりませんが、国家資格である介護福祉士を取得できれば在留資格「介護」に移行できるため、永続的に勤務できるようになります。
※1 参照:出入国管理庁「特定技能在留外国人数(令和5年6月末現在) 概要版」
雇用形態
介護に限らず、特定技能の在留資格を持つ外国人材の雇用形態は、原則としてフルタイムでの直接雇用に限られます。派遣やアルバイトといった雇用形態は認められていないため、注意しましょう。
雇用形態に加え、労働時間や報酬額などの労働条件についても、日本人の従業員と同等以上でなくてはなりません。
受け入れ人数の上限
外国人材の受け入れは日本人の雇用にも影響をおよぼすことから、受け入れ規模には産業分野ごとに上限が定められています。
介護の場合は、厚生労働省が介護分野全体で2023年度末までの受け入れ見込み数を5万900人とし、これを上限として運用するよう定めています。事業所単位の場合は「介護」が特定技能1号に該当することから、日本人などの常勤介護職員の総数を上限としています。
参照:厚生労働省「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
特定技能「介護」を持つ外国人材が対応できる業務・できない業務は?
続いて、特定技能「介護」の在留資格を持つ外国人材が対応可能な業務と、不可能な業務について解説します。
対応できる業務
特定技能「介護」を持つ外国人材が従事可能なのは、おもに身体介護に関連する業務です。例えば、利用者の入浴や排せつ、食事、衣服の着脱における補助、移動時の介助などが挙げられます。
加えて、機能訓練の補助やレクリエーションの企画、施設内の提示物の管理などにも携わることが可能です。
また、特定技能「介護」の在留資格を保持している場合には、以下の施設で勤務できます。
・特別養護老人ホーム
・地域福祉センター
・労災特別介護施設
・病院や診療所
・障碍者支援施設
・児童福祉法関係の施設や事業 など
特定技能外国人は、受け入れ直後から人員配置基準に算定でき、ほかの資格(技能実習)では禁じられている1人での夜勤も従事可能です。
対応できない業務
特定技能「介護」を持つ外国人は、訪問介護などの訪問系サービスに分類される業務には従事できません。そのため、訪問介護を中心とした事業所での受け入れも不可能といえるでしょう。
外国人材が特定技能「介護」を取得するために満たすべき要件
外国人が特定技能「介護」を取得するには、2つの試験を受けて合格しなければなりません。ただし、技能実習2号や介護福祉士の養成課程を修了しているなど、一部試験が免除になるケースもあります。
ここでは、資格を取得するために必要な2つの試験について、概要や目的などを詳しく解説します。
日本語能力に関する試験に合格する
日本語のスキルは、日本で働くうえで欠かせない能力の一つです。介護業務では、円滑にコミュニケーションを取りながら利用者にサービスを提供することが求められるため、より実践的な日本語力が必要となるでしょう。
介護に必要な日本語スキルを持っていると証明するためには、以下の試験に合格する必要があります。
・日本語能力試験(N4以上)
・国際交流基金日本語基礎テスト
・介護日本語評価試験
日本語能力試験(N4以上)は、日常生活に支障がない程度の日本語能力の有無を問う試験で、日本語能力試験と同様の目的で実施されるのが国際交流基金日本語基礎テストです。
介護日本語評価試験では、おもに介護の現場でよく使用される日本語がきちんと身に付いているかどうかが評価されます。
技能試験に合格する
技能試験(介護技能評価試験)は、介護職に従事するうえで欠かせない介護のスキルがきちんと身に付いているか、確認するために実施される試験です。求められるスキルの水準としては、業務の基盤となる能力・考え方などに沿って、利用者の心身の状況に応じた介護を自身で一定以上実践できるレベルとされています。
試験は実施される国の言語で行われ、学科試験40問・実技試験5問で構成されています。この技能試験に合格できれば、業務に必要な正しい介護技術を習得できているとみなされ、介護業務への従事が認められます。
「介護」に従事できる特定技能以外の在留資格
外国人材を介護職員として採用するにあたり、特定技能以外にも活用できる制度が3つあります。3つの資格について、特徴などをそれぞれ解説します。
在留資格「技能実習」
在留資格「技能実習」は、他国への技能移転による国際貢献を目的とした在留資格です。特定技能「介護」と同じく訪問系のサービスには対応できない、という特徴があります。技能実習1号から2号・3号へと移行することで、最長5年間の滞在が可能です。
ただし、配属されるまでに時間がかかるケースがあるほか、受け入れ後には日誌の作成などが必要になる点に留意しましょう。
また、現在は技能実習制度を廃止する方向で検討されています。そのため、実習生の受け入れを検討する場合は、制度の動向を注視する必要があるでしょう。
技能実習制度の詳細については、以下の記事で詳しく紹介しています。
外国人技能実習制度とは?認められる在留資格・職種などの基本をまとめて解説
在留資格「特定活動(EPA:経済連携協定)」
在留資格「特定活動(EPA:経済連携協定)」は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3ヵ国の外国人材のみに限定されている制度で、人材のマッチングや入国手続きなどは公益社団法人国際厚生事業団が担うのが特徴です。これら3ヵ国の外国人材が介護福祉士の国家試験に合格したあとは、介護分野の事業所での就労が可能となります。
4年以内に国家試験に合格できないと帰国しなければなりませんが、合格して資格を取得できれば、永続的に働けます。
ただし、受け入れの上限数がきまっているため、マッチングが難しい可能性があります。
在留資格「介護」
在留資格「介護」は、介護分野の専門学校や大学などの介護福祉士養成施設を卒業し、介護福祉士の国家試験に合格することで取得できる資格です。養成施設に入学するためには、前述の日本語能力試験において、N2相当以上の日本語力を求められます。
在留資格「介護」では訪問系サービスに従事することも可能なため、特定技能「介護」と比べて、より幅広い業務に対応可能な点がメリットです。
ただし、上記のとおり資格を取得するための条件が厳しいことから、在留資格「介護」を持つ人材の母数が少なく、採用が難しい傾向にあります。また、受入れ企業側が養成施設卒業までに必要な費用を負担するケースも少なくありません。
特定技能「介護」を持つ外国人材を受け入れるメリット・デメリット
前述したとおり、在留資格「介護」は制限が少ない一方で、採用自体は難しい傾向にあります。また、技能実習は就労に関する制約が多いことから、事業所によっては受け入れが難しい場合も少なくありません。
したがって、訪問介護がメインでない事業所において、特定技能は上記に比べても利用しやすい制度といえるでしょう。
ここからは、特定技能「介護」を持つ外国人材を受け入れるメリット・デメリットについてより具体的に解説します。
メリット
特定技能「介護」のメリットの一つとして、新しく開設した事業所でも受け入れが可能な点が挙げられます。特定技能は、技能実習制度やEPAと異なり、外国人雇用に必要な新設要件がありません。そのため、新設の事業所でもすぐに外国人材の採用が可能です。
また、入国後もしくは在留資格を取得・変更後すぐに、就労が開始できるのもメリットといえます。技能実習制度のように入国後の講習受講などの義務が定められてないため、入社当日からすぐに業務に従事できます。また、技能実習制度などの在留資格では禁止されている1人での夜勤にも従事可能です。
そのほか、民間の人材紹介会社を通して採用活動ができ、採用や受け入れにかかるコストの削減や、希望条件に合う外国人材をより効率的に見つけられる点もメリットです。
デメリット
特定技能「介護」は、取得している外国人本人が職場を選択できる制度です。実際のハードルは高いとされているものの、ほかの事業所に転職してしまう可能性がある点に留意しましょう。
また、特定技能「介護」の資格で働けるのは最長5年となっています。したがって、労働期間に限りがある点にも注意が必要です。
ただし、受け入れ中に介護福祉士の国家試験に合格して在留資格「介護」に移行した場合には、労働期間に関するデメリットが解消されます。
「介護」の特定技能を持つ外国人材を受け入れる際の注意点
特定技能「介護」を持つ外国人材を受け入れる際の注意点について、解説します。
出入国在留管理庁への届け出をしなければならない
特定技能1号および特定技能「介護」を取得している外国人材を受け入れるには、出入国在留管理庁への各種届出が必要です。届出書類は、契約締結や変更時などで随時必要なものと、四半期に1度提出しなければならない定期のものに分けられます。
各書類の提出を怠った場合、出入国在留管理庁からの指導や改善命令が出されることがあるほか、受け入れ停止などの罰則の対象となるおそれもあるため注意が必要です。
特定技能協議会に参加しなければならない
特定技能協議会とは、特定技能の分野ごとに設置されるもので、特定技能人材の受け入れにおける成功事例の共有や各地域の人材不足の把握、分析を行う機関です。特定技能外国人を受け入れるには、この特定技能協議会の構成員になる必要があります。
入会には所定の手続きを行わなければならず、入会までの期間は初めて特定技能外国人を受け入れてから4ヵ月以内と定められています。そのため、初めて特定技能を持つ人材を受け入れる際は、入会および入会手続きも忘れないようにしましょう。
「支援計画書」 を作成する必要がある
特定技能外国人を受け入れるためには、「支援計画書」を作成するとともに、就労支援や生活支援などのサポートをしなければなりません。
支援計画書には10項目が定められており、入国前から出国までの就労や生活におけるサポートに関する具体的な内容や実施方法などを記入する必要があります。
なお、支援計画書の作成および支援について事業所での対応が難しい場合は、「登録支援機関」と呼ばれる外部の機関への委託も可能です。
「介護」の特定技能を持つ外国人材への支援は外部委託が可能!
前述のとおり、各種届出や支援計画書の作成について事業所での対応が難しい、不安があるという場合には、外部の登録支援機関への委託が可能です。例えば、登録支援機関に登録されている人材会社であれば、採用活動と併せて申請や支援サポートも任せられるため、これらの会社の利用も選択肢の一つといえるでしょう。
ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、外国人材の教育から各企業・事業所での定着支援までのサービスを提供しています。優秀な外国人材の紹介はもちろん、ビザの申請や受け入れ準備に必要な各種書類申請のサポートなどを行います。
加えて、内定後から入社まで、人材がいち早く日本の生活や仕事に慣れるために必要な、日本事情教育やホスピタリティ研修、金銭管理研修など幅広い教育を行っています。
気になる方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
特定技能「介護」を持つ外国人材は、訪問サービス以外の介護に関する幅広い業務に配置できるため、人材不足に悩む事業所にとっては心強い即戦力となり得るでしょう。
受け入れる際は必ず正社員として雇用契約を結ぶとともに、出入国在留管理庁への届け出や特定技能協会への参加、支援計画書の作成が必要になります。これらの手続きや外国人材のサポートを事業所で行うことに不安がある場合は、登録支援機関への外部委託がおすすめです。
ONODERA USER RUN(オノデラユーザーラン)では、登録支援機関として特定技能外国人の育成から紹介、定着支援、各種手続きのサポートを行っています。「特定技能を持つ優秀な人材を見つけたい」「手続きやサポートの外部委託を考えている」という採用担当の方は、ぜひご相談ください。
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