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外国人を雇用するにあたり、在留資格の一つである「特定活動」の就労制限について気になる方も多いのではないでしょうか。特定活動の種類によって、就労の可否などが異なるため、事前に把握しておくことが大切です。
今回は、特定活動の概要について紹介したうえで、おもな種類や就労制限について解説します。併せて、必要書類、外国人雇用時の注意点なども解説するので、参考にしてみてください。
目次
そもそも在留資格「特定活動」とは
「特定活動」とは、外国人が日本に滞在して活動するために必要な在留資格の一つです。外国人が日本で行う活動に対し、法務大臣が個別に許可を与えています。
もともとは、「外交」「留学」「介護」「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格に該当しない活動を行う際の受け皿として設立されており、2023年には約7万人の外国人が取得しています。
ここからは、特定活動の区分について、確認していきましょう。
在留資格「特定活動」の区分
「特定活動」は、「告示特定活動」と「告示外特定活動」の大きく2つに分けられます。
1.告示特定活動
告示特定活動とは、法務大臣の告示に基づいて指定された活動のことです。2023年1月時点で、以下の47種類の活動・外国人が該当します。
出典:法務省|在留資格「特定活動」告示一覧(2023年1月時点)
上記のとおり、家事使用人に関するものやワーキングホリデーに関するものなど、さまざまな種類があります。一般的な在留資格に当てはまるものがない場合は、基本的にこれらのなかから、外国人が在留する理由に沿ったものを選ぶ必要があります。
2.告示外特定活動
前述の告示特定活動に該当しないものは、「告示外特定活動」として分類されています。具体的には、以下のような活動・外国人が該当します。
- ・出国準備のための活動
- ・継続就職活動
- ・特定技能移行準備
- ・帰国が困難な元中長期在留者 など
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在留資格「特定活動」には就労制限がある
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特定活動の種類によって、就労の可否が異なることに注意が必要です。
例えば、ワーキングホリデーや、特定技能の移行準備に関する特定活動を取得した外国人は、就労が可能です。ただし、就労できる仕事は、その在留資格で認められたものに制限されます。一方で、医療滞在ビザを取得した外国人(本人および同伴者)などは、就労することができません。
なお、就労が認められていない外国人でも、「資格外活動許可」を取得することで働ける可能性があります。資格外活動許可とは、すでに取得している在留資格に属さない、報酬をともなう活動を行う際に必要な許可のことです。
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【資格外活動許可】時間に関する就労制限
- 資格外活動許可には、以下のとおり、大きく分けて「包括許可」と「個別許可」の2つがあります。
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包括許可
週28時間以内の就労を行う際に取得する
個別許可
週28時間を超える就労や、稼働時間の確認が困難な活動などを行う際に取得する
- なお、外国人に対しても、労働時間の限度(1日8時間および週40時間労働)など、労働基準法が適用されることに留意しておきましょう。
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在留資格「特定活動」のおもな種類と就労制限
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ここからは、企業が外国人を雇用するうえで知っておきたい特定活動のおもな種類を、それぞれの就労制限についても触れつつ紹介します。
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「告示特定活動」の例
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まずは、「告示特定活動」の例と、それぞれの就労制限について見ていきましょう。
1.ワーキングホリデー
ワーキングホリデーとは、取り決めなどを結んだ国・地域の青少年の、休暇目的の入国および旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度のことです。2025年1月1日時点で、日本は30ヵ国の間でこの制度を導入しています。
国・地域によって、ワーキングホリデービザの発給要件が異なる点に注意しましょう。
2.インターンシップ
外国人の学生が学業の一環で、日本の企業で実習活動に参加する場合などに、「特定活動」として認められます。報酬をともなわないインターンシップでは、資格外活動許可は不要ですが、報酬が発生する場合は資格外活動許可を受けなくてはなりません。
学位の授与される教育課程であれば、短期大学・大学院の学生も対象となりますが、入国時に18歳以上である人材に限られます。また、インターンシップの期間は、1年を超えない期間かつ、修業年限の2分の1を超えない期間と定められています。
3.看護師・介護福祉士関係
EPA(経済連携協定)または交換公文に基づいて、日本の看護師国家資格・介護福祉士国家資格を取得した者、あるいは取得を目指す者を指します。インドネシア人、フィリピン人、ベトナム人が該当します。
候補者の場合も、受け入れ施設における就労・研修が認められていますが、規定の国家資格に不合格となった際は、帰国しなければなりません。とはいえ、再受験目的の来日は可能です。
なお、介護施設における人手不足の解決策や、外国人材を採用するメリットなどについて、以下の記事で詳しく解説しています。
介護施設における人手不足の原因・解決策を紹介!外国人材を採用するメリット・方法も
4.高度専門職外国人の就労する配偶者
在留資格「高度専門職」を取得した外国人の配偶者が、所定の要件を満たす際に取得可能で、在留資格「研究」「教育」などに該当する就労活動が認められます。例えば、教育における就労活動として、中学校・高等学校などの語学教師などが挙げられます。
なお、高度専門職外国人が在留資格を取得するには、高度人材ポイント制により一定のポイントを獲得する必要があります。高度人材ポイント制について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
高度人材ポイント制とは?ポイント計算表や雇用するメリット、申請の流れも紹介
5.特定研究等活動
一定の要件を満たす日本の機関との契約に基づいて、専門的な研究や、研究の指導・教育、それらの関連事業の経営などに取り組む外国人が取得可能です。これらの研究や指導・教育に関する活動での就労が許可されます。
なお、当該外国人の家族も、一定の要件を満たすことで在留資格を取得できます。
6.本邦大学等卒業者とその配偶者
日本の大学や大学院などを卒業した外国人、およびその配偶者が該当します。幅広いシーンで使われるやや複雑な日本語が理解できることを、試験などによって証明する必要があります。
一般に、「翻訳・通訳」の要素のある業務や、日本語での円滑な意思疎通が求められる「商品企画」「管理業務」「教育」といった業務がメインとなりますが、それに付随する業務にも従事することが可能です。
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「告示外特定活動」の例
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次に、「告示外特定活動」の例とそれぞれの就労制限について紹介します。
・特定活動(継続就職活動)
外国人留学生などが、在留資格で認められた期間を終えてから、就職活動などを行う際に取得可能です。
例えば、大学を卒業した外国人留学生が、在留資格「留学」で認められた在留期間を終えたのち、就職活動を希望する場合に6ヵ月の在留が許可されます(在留状況に問題がなく、卒業した教育機関の推薦がある場合など)。在留期間を更新することで、最長1年間の滞在できます。
また、一定の要件を満たせば、資格外活動許可を受けてアルバイトをすることも可能です。
・特定活動(特定技能移行準備)
即戦力としての働きが期待できる「特定技能1号」の在留資格へ変更する際、必要書類の準備が間に合わない場合などに、6ヵ月の滞在が認められる在留資格です。その間、特定技能での就労を予定する受入れ機関で働くことが認められています。
また、特定技能1号で従事予定の業務と同様の業務に就くことが要件となっています。特定技能や特定活動(特定技能移行準備)の詳細については、以下の記事をご参照ください。
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在留資格「特定活動」を申請するときの必要書類
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在留資格「特定活動」の申請で準備しなければならない必要書類は、種類ごとに異なります。具体例として、インターンシップに関する活動を申請する際の必要書類は、以下のとおりです。
- 1. 在留資格認定証明書交付申請書
- 2. 写真
- 3. 返信封筒
- 4. 申請人の在学証明書
- 5. 申請人が在籍する外国の大学と日本の受入れ機関との間で交わしたインターンシップにかかわる契約書の写し
- 6. 申請人が在籍する外国の大学からのインターンシップ実施にかかわる承認書、推薦状
- 7. 単位取得など教育課程の一部として実施されることを証明する資料(インターンシップ実施計画)
- 8. 申請人の日本での活動内容、期間、報酬などの待遇を記載した資料
- 9. 申請人のインターンシップでの過去の在留歴を明らかにする資料
- 10. 申請人の在籍する大学の修業年限を明らかにする資料
- 11. その他、ガイドラインに規定する項目にかかわる説明書
参考:
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就労制限も要チェック!在留資格「特定活動」の外国人を雇用する際の注意点
- ここからは、在留資格「特定活動」の外国人を雇用する際の注意点について解説します。
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在留カードを確認する
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在留カードとは、日本に中長期間在留する外国人に交付されるカードです。氏名や生年月日、国籍・地域、在留資格などのほかに、就労の可否についても記載されています。
外国人を雇用する際は、在留カード裏面の「就労制限の有無」欄を確認しましょう。一部就労制限がある場合は、以下のいずれかが記載されています。
- 1. 在留資格に基づく就労活動のみ可
- 2. 指定書により指定された就労活動のみ可
上記の指定書とは、在留資格「特定活動」を取得した外国人に交付される書類で、許可されている活動内容について記載があります。就労制限がない場合は、「就労制限なし」という記載があるので、よく確認しましょう。
なお、「就労不可」の場合でも、「資格外活動許可欄」に以下の記載があれば、就労することができます。
- 1. 許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)
- 2. 許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)
以下の記事では、不法滞在している外国人の見分け方や、偽造在留カードの確認方法などを紹介しています。偽造在留カードも存在するため、注意しましょう。
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指定書を確認する
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前述のように、在留カードに「指定書により指定された就労活動のみ可」と記載されている場合は、指定書を別途確認する必要があります。基本的に、指定書は旅券(パスポート)に添付されているので内容を確認しておきましょう。
また、許可されている活動内容のほか、基本情報が在留カードと一致しているかなども確認することが大切です。 -
余裕を持って雇用の準備を進める
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外国人の在留資格「特定活動」の申請に向けて、企業側の必要書類を準備する際は、期間に余裕を持って進めることがポイントです。出入国在留管理庁の資料によると、在留資格「特定活動」の審査にかかる期間の平均は以下のとおりです。
- 在留資格認定証明書交付:43.2日
- 在留期間更新:35.8日
- 在留資格変更:41.9日
参考:出入国在留管理庁|在留審査処理期間(日数)(令和6年7月~9月許可分)
書類に不備があったり、繁忙期に重なってしまったりすると、さらに時間がかかる場合もあるので、なるべく早めに申請を行うようにしましょう。
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まとめ
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在留資格「特定活動」は、種類に応じて就労制限の内容が異なります。そもそも就労が許可されていない在留資格でも、資格外活動許可を受けることができれば、自社で働いてもらえる可能性もあります。
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即戦力としての働きが期待できる「特定技能1号」の在留資格へ変更する際、必要書類の準備が間に合わない場合などに、在留資格「特定活動」を取得することで、6ヵ月の滞在が認められ、その間、特定技能での就労を予定する受入れ機関で働くことが認められています。
外国人を雇用する際は、在留カードや指定書を確認したうえで、余裕を持って準備を進めるとよいでしょう。
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