特定技能関連
慢性的な人手不足に悩まされている介護業界において、これまでは特定技能の「訪問介護」は認められていませんでした。しかし、厚生労働省は特定技能でも訪問介護に従事できるようにする方針であることを示しました。
この記事では、特定技能の現状や今後の動向、特定技能外国人の雇用などについて解説します。外国人材の雇用を検討している採用担当の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
訪問介護に従事する外国人材の現状
現状、外国人が従事できる介護関連の在留資格は、以下の4つです。
- ・在留資格「介護」
- ・EPA介護福祉士
- ・特定技能
- ・技能実習
ただし、上記のうち、現状で訪問介護が認められているのは、在留資格「介護」とEPA介護福祉士のみとなっています。特定技能および技能実習においては、施設での介護のみが認められている状況です。
介護職に就ける在留資格については、以下の記事でも解説しています。併せてご覧ください。
特定技能の訪問介護が解禁へ!背景や要件は?
2024年6月19日、厚生労働省は、これまで認められていなかった特定技能で働く外国人材の訪問介護において、解禁する方針を示しました。その背景には、どのような事情があるのでしょうか。
特定技能「介護」とは
そもそも特定技能とは、2019年4月に創設された在留資格です。人手不足が深刻化する特定産業分野(12分野14業種)において、即戦力となる外国人材の就労を認め、人手不足を緩和する目的で創設されました。なお、特定産業分野は新たに4分野の追加が決定されています。
特定技能には1号と2号があり、1号の特徴としては、在留期間は通算で上限5年まで、受入れ機関による一連のサポートが義務付けられていることなどが挙げられます。
また、2号の特徴としては、在留期間の更新回数に上限がないことや、要件を満たしている場合のみ家族(配偶者および子)の帯同が認められていることなどが挙げられます。
特定技能「介護」は、この在留資格のうちの一つです。
<特定技能「介護」の受け入れが可能な施設例>
- 老人福祉法・介護保険法関係の施設および事業
- 児童福祉法関係の施設および事業
- 障害者総合支援法関係の施設および事業
- 診療所や病院
- その他の社会福祉施設 など
なお、特定技能以外にも、外国人が日本で就労可能な在留資格は複数あります。ただし、在留資格の種類によって、求められる要件や認められている活動内容、在留期間などに違いがあることを覚えておくとよいでしょう。
さらに詳しい情報は、以下の記事でも解説しています。併せてご覧ください。
特定技能「介護」とは?対応できる業務や取得方法、受け入れ側の注意点を解説
特定技能の訪問介護が解禁されるに至った背景
近年、介護業界では人手不足が深刻化している状況です。厚生労働省「訪問系サービスなどへの従事について」によれば、2022年度の施設介護職員の有効求人倍率が3.79倍なのに対し、訪問介護員の有効求人倍率は15.53倍となっています。
以上のことから、人手不足は介護業界全体にいえる問題ではあるものの、特に訪問介護での人手不足が深刻な状況に陥っているということが読み取れるでしょう。
また、同資料によると、2040年には282,914人の訪問介護員の必要性が見込まれています。しかし、2021年時点の訪問介護員数は250,728人であることから、2040年までに約3万2000人の訪問介護員を確保しなければならないのです。
訪問介護を解禁する動きは、現状だけでなく、今後も見据えた深刻な人手不足を解消するためといえるでしょう。
特定技能で訪問介護をするための条件
先述のように、現時点では、特定技能「介護」による訪問介護は認められていない状況です。
特定技能での訪問介護を認めるにあたり、日本人と同様「介護職員初任者研修を修了した有資格者」など、一定の条件を満たすことを前提とする意見が出されています。
さらに、上記だけでなく、受入れ企業側においても以下のようないくつかの条件が設けられる予定です。
- ・訪問介護の基本事項、生活支援技術、日本の生活様式などの研修を実施すること
- ・一定期間、同行することなどによりOJTを行うこと
- ・キャリアアップ計画を作成すること
- ・ハラスメントを防止するための対応マニュアルを作成・共有すること
- ・負担軽減や不測の事態に備えた、ICTの活用なども含めた環境の整備を行うこと など
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特定技能の訪問介護はいつから解禁される?
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訪問介護を認めるためには、解禁に際しての要件などを固めてトラブル防止の仕組みを整える必要があります。そのため、解禁時期は早くても2025年度中になるのではないかと見込まれています。
なお、今回ご紹介した条件などは、現段階で確定しているものではありません。そのため、外国人材の雇用を検討中の場合は、今後の動向に注意しましょう。
特定技能の訪問介護が認められることで考えられるメリット
特定技能人材による訪問介護が解禁となった場合、前述した人材確保のほかにはどのようなメリットが見込めるのでしょうか。
若手人材の活躍が期待できる
介護の仕事では、排泄介助や入浴介助など、サービス利用者が安全な姿勢を保てるように支えながら行う業務があります。
厚生労働省「介護労働の現状と介護雇用管理改善等計画について」によれば、20~29歳の訪問介護員の割合は3.9%と、若い世代の人材はそれほど多くない状況です。
一方で、出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末現在)」によれば、介護分野で活躍する特定技能外国人は36,719人、そのうちの約70%に当たる25,796人が18~29歳の若手であることがわかっています。
以上のことを踏まえると、特定技能の訪問介護が認められることで、若い世代の訪問介護員の割合が高くなることが期待できるでしょう。
参考:厚生労働省「介護労働の現状と介護雇用管理改善等計画について」
参考:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和6年6月末現在)」
介護サービス品質の向上が期待できる
労働力を安定的に確保できるようになれば、サービスの質を上げることもできます。
異なる文化や習慣を持つ外国人が介護サービスに従事することは、新たな視点による介護サービスの提供にもなり得ます。これにより、個別ニーズに応じた対応やサービス品質の向上も期待できるでしょう。
さらに、外国人材が介護サービスを行うことで異文化交流が生まれ、これまでになかった新たな介護手法の促進などにも繋がるかもしれません。
特定技能の訪問介護が可能になることで想定される課題とは
特定技能の訪問介護を可能にするためには、現状で残されている課題を解決する必要があります。ここでは、どのような課題が想定されるのかを確認しておきましょう。
雇用側の外国人材へのサポート体制や労働環境の整備
外国人材の雇用を検討している企業は、従業員が長期的に働けるような労働環境を整える必要があります。例えば、業務に必要なスキルの研修やトレーニングなど、支援体制を強化することも環境整備の一つといえるでしょう。
また、給与面や労働時間への配慮、福利厚生などは、日本人労働者と同等以上の待遇が受けられるようにする必要があります。さらに、メンタルヘルスケアが可能な環境を用意しておくことも大切です。
特に、小規模の事業所では、効率的な経営が難しいケースもあります。また、資金力のある企業は、ほかの事業所よりも高い給与設定も可能でしょう。そのため、条件の良い求人に人材が流れてしまうことも考えられます。こういった問題を防げるような対策を講じることも重要です。
利用者への対応スキルが高い人材の確保
訪問介護は、介護者が利用者の自宅に単独で訪れ、身体介護や日常生活の支援を行います。このような状況において、言語スキルや文化などへの理解が不足していると、業務遂行が困難になるかもしれません。
このようなリスクを回避するためには、利用者と円滑にコミュニケーションを取れるスキルが必要です。
また、緊急時の対応や、個別ニーズに応じた対応などが求められることも想定されます。あらゆる状況で適切な対応を実現するためには、人材を育成することや対応スキルの高い人材を確保する必要があるでしょう。
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まとめ
現状、訪問介護が認められているのは在留資格「介護」とEPA介護福祉士のみですが、特定技能の訪問介護も認める方針が示されました。その背景には、介護業界の人手不足が大きく関係しています。
特定技能の訪問介護が解禁されることで、若手人材の活躍や介護サービスの品質向上などが期待できます。一方で、雇用側のサポート体制や労働環境の整備、対応スキルの高い人材の確保など、訪問介護を実現するうえでの課題があることも理解しておくことが大切です。
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